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10.官能動
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断崖絶壁を愛してしまったんだ。
一面の星、薄暗い空、虫の集る街灯、今、踏みしめている地面。あれもこれもこの僕はなびかない。僕の心にあるのは、君の、耳を当てればすぐにでも聞こえてきそうな鼓動を鳴らすその胸。
躍起になって君のその心を打ち鳴らせば、どう表情を変えるのだろう。風に吹かれ髪を気にする君は、少しは頰を赤らめるのだろうか。暑いと言ってシャツで飛び出してきたその姿は、まるでミケランジェロによるサン・ピエトロのピエタにも見てとれるほどに華々しい。
人一人とすれ違わない田舎道を、初々しく手も繋がず二人して歩幅を合わせた。目が合うたび首を傾げる君は、どうにも色気を隠せないらしい。
五つの姓を愛せるほどに器用ではない。それでも、君だけに溺れるには十分だと思う。
「どうしたの?さっきから」
痺れを切らした君の流し目は官能的で、不可抗力だ。
思いを飲み込んで、誤魔化す。そうやって僕は自販機を指差した。疑問符を浮かべながらも、君は飲み物を手渡されひと思いに大きくそれを口にした。真夜中の寝る前ですら完璧な容姿を保っている。きっとそれは努力と才能なんだと思う。
この街灯も少ない田舎だからこそ味わえる状況に、心底感謝した。そして、勇気を振り絞った自分を褒めた。
小さな君を今すぐにでも抱きしめたい。眠そうな君は、無理にでもついてきてくれて随分と可愛かった。
「隣のクラスのあいつら、やっと付き合えたらしいよ」
「そうなの?」
驚いた顔も大変眠そうだ。多分明日にはこんな話をしたことも覚えていないんだろう。
「告白できたんだってさ。一時はどうなることかと思ったよ」
「だね」
星の明かりが横顔を照らした。こんな田舎の学校で、噂になるくらいには顔が整っている。そんな君が、今は横にいるのだ。この状況がなんとも耐え難く嬉しいことだった。
「みんな恋愛に明け暮れてるねー」
眠い目を擦りながらも、ゆったりと口を開いてくれた。まるで自分は蚊帳の外だと言わんばかりの口調だ。
「必死なんだろうな。みんな恋人を作るのに」
一人は寂しくなるんだろう。好きな人が居ればそんなことはならないと思うが、それ以上を望んでしまうのが人として当然の流れだ。
「じゃあなんで別れるところは別れるんだろうね」
飲み終えた後の缶をゴミ箱に投げ込みながら君は疑問符を浮かべた。
「さぁ。なんなんだろうね」
「まぁけど」
再び吹いた風に呆れた君は、髪の毛を耳にかける。
「幼馴染の私たちには、関係ない話だね」
夢のような時間も終わりを迎え、一人帰路に着いた。
官能的な君は僕に振り向かない。
僕はこれからも、寝ぼけた君を夜道に誘うだろう。
一面の星、薄暗い空、虫の集る街灯、今、踏みしめている地面。あれもこれもこの僕はなびかない。僕の心にあるのは、君の、耳を当てればすぐにでも聞こえてきそうな鼓動を鳴らすその胸。
躍起になって君のその心を打ち鳴らせば、どう表情を変えるのだろう。風に吹かれ髪を気にする君は、少しは頰を赤らめるのだろうか。暑いと言ってシャツで飛び出してきたその姿は、まるでミケランジェロによるサン・ピエトロのピエタにも見てとれるほどに華々しい。
人一人とすれ違わない田舎道を、初々しく手も繋がず二人して歩幅を合わせた。目が合うたび首を傾げる君は、どうにも色気を隠せないらしい。
五つの姓を愛せるほどに器用ではない。それでも、君だけに溺れるには十分だと思う。
「どうしたの?さっきから」
痺れを切らした君の流し目は官能的で、不可抗力だ。
思いを飲み込んで、誤魔化す。そうやって僕は自販機を指差した。疑問符を浮かべながらも、君は飲み物を手渡されひと思いに大きくそれを口にした。真夜中の寝る前ですら完璧な容姿を保っている。きっとそれは努力と才能なんだと思う。
この街灯も少ない田舎だからこそ味わえる状況に、心底感謝した。そして、勇気を振り絞った自分を褒めた。
小さな君を今すぐにでも抱きしめたい。眠そうな君は、無理にでもついてきてくれて随分と可愛かった。
「隣のクラスのあいつら、やっと付き合えたらしいよ」
「そうなの?」
驚いた顔も大変眠そうだ。多分明日にはこんな話をしたことも覚えていないんだろう。
「告白できたんだってさ。一時はどうなることかと思ったよ」
「だね」
星の明かりが横顔を照らした。こんな田舎の学校で、噂になるくらいには顔が整っている。そんな君が、今は横にいるのだ。この状況がなんとも耐え難く嬉しいことだった。
「みんな恋愛に明け暮れてるねー」
眠い目を擦りながらも、ゆったりと口を開いてくれた。まるで自分は蚊帳の外だと言わんばかりの口調だ。
「必死なんだろうな。みんな恋人を作るのに」
一人は寂しくなるんだろう。好きな人が居ればそんなことはならないと思うが、それ以上を望んでしまうのが人として当然の流れだ。
「じゃあなんで別れるところは別れるんだろうね」
飲み終えた後の缶をゴミ箱に投げ込みながら君は疑問符を浮かべた。
「さぁ。なんなんだろうね」
「まぁけど」
再び吹いた風に呆れた君は、髪の毛を耳にかける。
「幼馴染の私たちには、関係ない話だね」
夢のような時間も終わりを迎え、一人帰路に着いた。
官能的な君は僕に振り向かない。
僕はこれからも、寝ぼけた君を夜道に誘うだろう。
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