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第162死 夜の忍者ショー

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【3日目】

 夜の忍者ショー野外ステージにて──

 火花、点々と、転々と煌めく。



「丘梨栄枯すこしは腕を上げたか」

「私より弱いのでは!」

「ハ、こわいぞ俺より強いってのはよォォ」

「イチバン強くて最悪なヤツがこうして殺しに来るんだからよォォ」

 舞台役者と忍者は円盤ステージから客席へ、盆地沿いに設置された客席をステージにブラック包丁と忍者ブレードはかち合い、離れ、繰り返し一瞬の火花を咲かせ続けている。



「甲賀流とはみな喧嘩っ早いという意味なのですね!」

「喧嘩する価値があるならなッ丘梨栄枯お前が怪物となり強くなったせいだ馬鹿な女特有の被害者感覚は捨てろ」

「一般人が安く死にに行った結果運良くここまで風船が膨らんだだけなのでは、ええ! わざわざ何度もストーカーし私を破裂させに来るんですね!」

「それがその感覚が甘いんだよはははははお前が強くアツく存在する限り俺というバトルマニアに殺されつづけんだよ! お前は現にこうして刃を振るわされつづけている、それとこんな敵地真っ只中で暴れ回っておいて笑わせるなよ栄枯ォォはははは」

「暴れてるのはあやかさん以外のべらぼぅに忍べてないあなたのような忍者なのですけど、ええ! 私が教育するハメになりましたが、ちゃんと教育できていないようですね、ふふ」

「はは強さには責任は伴わねぇ……伴うのは上澄みのおかしな連中ばっかだろ丘梨栄枯おお! はははは刃を交えた強育しか取り扱っていねぇよ、俺の甲賀流はよおお」

 跳躍し振り下ろされた闇に溶ける黒い忍者ブレードを、チンキスを纏わせた包丁は更に出力を上げ迎え撃つ──ブラック包丁とかち合わずぬめりすべる刀身は栄子の右側のシートをぶった斬り──彼女の長い手は隙ありと黒装束の右腕を捕らえて──

「チンキス!」

 手から腕へと流し込んだスキル、チンキス。素早い相手の動きを封じる栄子必殺のスキル。

「その予感はよぉ! 波綿岩死はめんがんし

 完全に動きを封じた──はずが蹴られている。

 土手っ腹に右脚がめり込み、硬い足袋は栄子を突き飛ばし、ぶつかり盆地の客席を転がり落ちていく。

「────やはり、歳上のイケメンには効かないようですね」

「それはお前が怠けているだけだ、心を鍛えればお前の中途半端なスキルなんて効かねぇ」

「何故本気を出さない」

「出していますが」

「ふ、死にたくないなら躊躇うな。俺は気付いているぞお前は強くても死にたくないとは思っていない、だから弱い」

「ナニを言っているのですか思っていますよ? 死ぬのは転がり落ちるより痛いしもう何度も悔しいですから」

「嘘をつけ、ならもっと前にお前を脅かす殺気を放つ最大の敵である俺を殺せたはずだ。お前の剣は生ぬるい、お前は化け物モンスターを殺せても人を殺せないつまり人類で1番弱い分類の弱者だ! どうだ敵に見透かされた気分は」

「ふふ、ええ、いまさらに人殺しの趣味を持てとでも!」

「力があるのならな! 中途半端なチカラなら捨てろと教えてやっただろう。強さに縋り甘えるガキなお前はいつまでも忍者にも一般人にもなれない! まさにお前の言う運良くチカラを手にしただけの馬鹿な女で弱者そのものだ」

「ふっ、あなたのようなアツい人間はそのような考え方で生きておられるのですね……。では、あなたは──」


「私のべらぼぅにクールな強さに付き合ってくれるのですね! もちろん死ぬ気で」

「ハハハハハハ、ナメてんじゃねぇぞ素人が、俺を殺してみろ丘梨栄枯ォォ」


 転がり落ち、ステージはまた円盤上、くろい皿の上へ。

 幻闘シミュレーターを発動、展開。秘められたチカラをもってして──

 栄子の妖しい微笑みとゆっくりと向けられたブラックな切先。

 白い歯を剥き出しにする忍者は波綿岩死の心で受け入れ、しのぶ。

 スポットライトは無いが、欠けて満ちた月明かり。

 今宵の役は吐い信者丘梨栄枯。若い彼女の稽古に付き添うイケてるおじ様。


 丘梨栄枯の放つ一段増した死の予感に甲賀流忍者トシは刃を構えて向かい合う。
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