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第187死 またやられました。 またおデコおおおお

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 ────またしても、敗北。

「がァァァ痛っぁぁああぁまたヘッドショットやられたああああちっきしょおおおお」

 またしても尻餅のおばみんは、わめきながら撃ち抜かれたアタマの熱を左手に抑えながら。

 シミュレーションした死の間際の光景を思い出し、ひらめき、垂れた緑の触覚の賢者タイムを発動してしまう。

「って栄枯このおばみんちゃん盾にしたよね」

「ええ、コンビニ行きましょうコウタくん」

「ええ、じゃないのよおいチキンリーダー丘梨」

「その頭キチンと冷やすにはきっと家庭用の冷蔵庫のサイズでは氷が足りません」

「なるほクールリーダー丘梨栄枯、っておばみん(死体)盾にしたよね……ねぇ? ドタマぶち抜かれながら見あッ痛たたたたぁ……ズキる……ズキィィィィィィコウタきゅんそこの氷ィィィィ」

 孝太がびちゃびちゃの布団とカーペットを古めのバスタオルで拭き掃除をしていたらヤツらが戻って来ていた。

 中でも毎度意味不明に寝転がりながらわめき氷を要求するうるさい変態がいる。

「……冷凍庫に顔突っ込んで死んだサーモンでも抱いて寝てろよマグロ野郎」

「…………君、それあたためてた?」

「死んどけ! ……チッ、行こうぜ!」

『いやぁ? 良かったよ? もうちょいぼりゅーむハッキリ言えたらねェェにゃははは』

「ふふ」

 そそくさと孝太は栄子と共にコンビニまで氷の買い出しへと向かった。



▼▼▼
▽▽▽



 近場のコンビニでの買い出しから帰ってきて待っていた──冷凍サーモンをおデコへと直にぴたり。

「本当にやりやがった……」

「大人気吐い信者おばみんちゃんなら余裕のよっちゃんは生臭い! ってね!」

「コウタ! 次のお題。カモン、サーモン?」

「……」



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▽▽▽



 サーモンは予想以上にキンキンに冷えており使用者本人いわく、すこしぬめり見た目にもユーモラスで良い塩梅らしい。サーモンはおデコ担当、氷パックで股と脇の4箇所同時クールダウン。色々と重要な血管が通っている部分を集中的に治療。

「てか例の失われた1時間ルールは栄枯」

「まだ1時間経ってませんよ?」

 時刻は午後5時18分。得意げに見せつけた栄子専用黄色いスパホの画面にはそう表示されてある。

「にゃはは言うねぇ言われたねぇトンチ・丘梨栄枯・ンカン!」

「てか、栄枯さん腹減らね? てか栄枯ワールドめっちゃ腹減らね? こんな減ったっけ後付け描写じゃね? これ」

「えぇ、しかしこの家の食糧はあらかたアッチに置いてきましたからねぇ」

 パシャリとなんとなく、栄子はサーモンでおデコを冷やす少女を上からスパホに撮り納めていく。

「可愛く撮ってね♡ っていや、買ってこいよ丘梨コウタおいとんでもねぇ無能ムーブだぞおい丘梨コウタ」

「つらそうでしたので、まさかサーモンで間に合わせてるとは」

「さぁ問題です。コンビニ行って氷パックだけって客田舎の釣り人とバーベキューバカと酒飲みホスト野郎でしか見たことねぇよポンコツクールすぎない丘梨ぃ! せめてわたすにはキンキンに冷えた定番のアイスガリガリボックス買ってきてよおお……」

「そんなに食いたいならそこの机に手羽先が大量にあるだろ……なんでソレだけ残してんだよ気持ち悪い……消えたりぶっ倒れてたり叫んだり黒魔術でもやってんのかお前ら……」

「これは私の隠れ好物で昨日コウタママが魚焼きグリルで焼いて用意してくれたおたのしみのお夜食用なので、ダメです。あと黒魔術ではありませんよ、現在ちょっと手に負えなくなってしまいましたが」

「はぁ? ……はぁ……」

「よぉし、無能ムーブなガチモブキャラのコウタきゅんはこの先のたたかいについてこれない。私のおやつと肉まんとアイスガリガリボックスとべらビタを買い出しだ! 連携プレイの人海戦術と無限成金補給物資であのクールな反則改造人間ボスを倒すぞおおお、おーーーーっ」

「こんな寝ながら指示出すザマのやつが有能には見えねえけどな……」

 しかも急にあほみたいに食い過ぎだろこいつら……何のグルメバトル漫画だよ……。

「って夜食? おいまじでお前ら6時までに帰れ!!」

「ええ? コウタんちでもっとあそびたぁああい」

「ええ、もっとあそびたいです」

「ガキか小学生かァァァ」

「いいえ、サーモンです(丘梨並感)」

「死ねッ」



▼▼▼
▽▽▽



 二度もヘッドショットされ頭のクールダウンが追いつかないオーバー未惇では、このたたかいにはついて来れない。コウタの部屋でじっくりと万全まで治るまでメンテナンスする事になった。

 そして、ひとり幻闘シミュレーターの中へと────



「では、お願いします」

 紙パックの牛乳を開け嘴から直に飲む──空になったものを潰し捨て置いた。

 水分とカルシウムの補給を終えた生成り色のショートヘア、星色の瞳はギロリ。

 体育座りから立ち上がった。

「……何を言っている」

「おそらく今までで、あなたが1番私の上達になる予感がします」

「未熟な戦士、あのチカラは使うな」

「何故です、私のスキルです」

「……」

 沈黙からの──射撃。

 指を真下に向けて、手の平は栄子に向けて。

 左右からワンツー、白い閃光の二連射を初撃回避、二射目を黒く斬り裂いた。

 戦闘は既に始まっている。栄子はシンプルに星色の瞳を見据えて突貫。

 ぐっ、と引っ張られる力に対してはある事に気付いている。

「使うなと、言った」

「使わないと、強く引っ張られますので!」

 栄子のチンキスブレードの出力を上げた状態であれば白マントの引力を和らげる事が可能であるとこれまでの彼女との戦いで得た攻略法だ。

 少しカタイ足取りで長身は走る。

 レーザーは飛んでこなかった。翳した右手はすでに白い刃を払い──微動だにせず待ち受けている。

 鋭い白と黒がギリギリと鍔迫り合いチンキスとスゥキスのチカラはぶつかり相殺し合う。

「ぐっ、強いチカラをあなたも使っています」

「お前とは使い方が違う」

 肉薄相対する──栄子の目に映る生成り色がみるみると髪が伸びていく、黒く染まっていく。

 嫌な予感がする、戦いにおいてここは一旦退くべきであると──栄子は何度かやってみせたようにチンキスを操作し上手い具合の距離を取るプランをパパッと立てた。

 が、しかし。なぜか思った様にチカラを制御出来ずにいる。鍔迫り合い離れられない。

「ホゥキス」

 白マントの逆立つ黒髪から、黒い稲妻のようなものが放たれた。

 荒々しく放射する黒をもろに受けてしまった白ジャージ。防御姿勢も間に合わず。

「だから使うなと言った」

 身体が石のように重い、硬直したままびくともしない──それは栄子が何度も使ってきたモノに似ていたが自身が浴びたのは初めてであった。

 栄子の自力を軽く凌駕する、何か強力なチカラで常時抑え込まれている。

 六歩程の距離に、白マントは居る。長く黒く染まった髪で彼女のイメージはまたがらりと変わってしまう。だが、表情だけは未だに変えない。変えたところを見る事はない。

 止まったターゲットを、おもむろに翳した手のひらが狙うのは頭。

 星色の視線はぶつかり合う──

 見開いていた栄子はもう目を閉じて。

「波綿岩死……じゅっ、パーセント」


 放たれた白い閃光と。

 黒いナイフ。


 左の耳を掠めてパッとふたつの星が開く。

「どうやって、抜けた」

「波綿岩死、忍の心……ふふ、私に才能はないみたいですよ」

 目を閉じて適当に投げたナイフは左の白刃にがらりと弾かれ落ちていた。


「チンキス」

「スゥキス」


 六歩の距離を踏み込んだ──高速の刃は合わさり鍔迫り合い。


「なので使ってもいいですか!」

「使うな、未熟な戦士」


 黒く染まり、白を纏う。チカラで止めてチカラを受け止めて混ざり合う、白熱のたたかいがつづいていく。
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