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第201死 それぞれの休日❷

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 空の物流を司るスカイハイ。スカイハイ堺ポールタワーの誇る17の層地、2000m以上上空にある13Sに今日も荷を運ぶドローンの出入りは活発だ。

 ドローンはAI操縦でぶつからないように荷を運んでいくが出荷物の調整と天候の悪化での運送方法の切り替え、予期せぬエラーが出た時の手直しの為に人間の目も光らせる必要がある。

▼13S管制室▼

 若い管制官。彼はここに勤めてまだ日は浅い。だが金払いも良く仕事は主にドローンの航路の確認変更と荷の調整など……気に入っていた。

 ここに来てからのエラーといえば天候の悪化でドローンが2、3機故障したのと2、3機迷子になっていたぐらいである。

 のんびり空を見つめコーヒーをいただきながら、彼らの帰りを待つ。そんな空想現実の日々も悪くない。

 13Sの物流倉庫へと、色とりどりの鳥達が。

 ビリリと轟音。ガッ、と大きい震動音が管制室の強化ガラスを伝う。

「何が起こった!?」「うお、ナニ? 落雷か? なんか鳴ったナァ!」

「ドローンが……堕ちてる」
「堕ちてるって!!」

「あり得ないそんなの大問題!? とにかく警報とドローンの回収エラーの点検に」

 突然の事態に面々が騒ぐ管制室に──ご挨拶するようにさまざまな企業が競争開発したカラフルドローンは浮き上がってきた。

 窓からハッキリと目と鼻の先に見える。

「堕ちてないじゃないか……!」「いやでも確かにって近」

「ワっ」








 ドローンが空から堕ちてきている。そんな状況は想定内の仕事の内であったが。

 毎日が幸せな観光気分であったのかもしれない……警察署から派遣されたポールタワーの警護を任されたPTガードの彼らは真面目に仕事をしなければならない。

 当たれば非常に危険生命の危機、見間違えない……もう既に人ごみに何かがぶち当たったかもしれない。悲鳴と散り散りに────



「こんなの避難っておい!?」

「事故か、うそやろ???」

「マニュアルにはあったぞ、こんときは……とにかく避難誘導!!」

 腰ホルダーにつけていたポケット拡声器を手に取り。

「とにかく屋内に避難を! って使えなくなったぞ!?」

「おちついてください、危険です建物の外に出ないでください!」

「馬鹿、落ち着けるか! ん?」

 騒然と逃げ惑う人々、の中にナニか────

 二足の獣たちと黒い光が泡立つ。リアリティの無いリアルを目の当たりにし、身体は己の意志でうごく……夢幻ではないナニか。

「なんや……」「んだこれぇ!!」








▼ラスト・ファミリーランド▼

 通称ラスファミ。

 休日の稼ぎどきに家族連れで賑わうこの遊園地はどこか懐かしく、だが寂れてはいなく新しい。

 たのしげに手をひき次のアトラクションへと向かう者たち。

 大人女子が1人で来ても遊び相手をしてくれるマスコットキャラクターたちがいる。寂しくは無い。

「着ぐるみだきだき」

「あのぉ、そろそろっはなれてくんない……」

 もふもふな虎の着ぐるみのお姉さんに抱きついてみたり。

 燦々な太陽にうたれながら、歩き疲れて──ちょっと休憩。パパママさんに冷たいものをねだってもいい。

 チョコとバニラとコーンの着ぐるみを着たアイスの精霊マスコットに、似たアイスを手渡されて子供が大喜びで。



「ばぁあ」



 アイスになっちゃッタ♡



 投げ捨てばら撒かれていくコーンにはご注意を。当たるとアイスになってしまいます。何味になるかはだれも分からない。

 アイスを愛するというよりはアイスを愛して欲しい、最終的には……そんな彼女のパレード行進。斜めズレるチョコナッツなベレー帽を溶けゆくバニラ頭に被りくっつけ直して。


「いい陽射しいい日差しぃ、キンキンに冷やしてもっ……いいひざしいいいいいいィィィィィィ」


 みんなとけるまで死のダンス♡








▼コーヒー豆店▼

「とりあえずおススメ入れといたよ、ブレンド割合も書いてるからその味に近付けるように真似るといいよ。さすがに全種売るのは鮮度も落ちるし豆たちに失礼だからね」

「は、はいお願いします!」

「ん?」

「え?」

 振り返ると。真っ茶な爆炎に呑まれていた。

「──────ッ……」

「っテェ……」



「……なんなんだ……?」


 目を開けるとコーヒー色に染まっていた──コーヒー豆専門店。

 これは正気なのか……狩野千晶は、訳が分からなかった。だがチクリと痛む人体への信号で分かった気がした。

 もう一度振り返る。さっきまで接客していたイケてるお兄さん店主がいない。

 壁にもたれ倒れてコーヒー色に塗れている。

「ちょっ!? 大丈夫ですか店長!!」








▼市街地B▼

 カタカタ、つどつどと考え込みスパコンを鳴らしていく。

 バベルBの上階の一部屋でいつも働きっぱなしの金髪白衣。

「バベルBカードの生電子量は少しは戻ってきたようだが……アレこれ使いすぎちゃったか? あっはっは!」

「とにかくこのシミュレーターで親和性があるのはやはり……カード。まりじちゃんの市街地Bは死のダンジョンのフランチャイズチェーン店といったところか……あっは!」

「マイライフNTカードから研究をはじめて、Eカード、バベルBカードとなかなか順調ではあるが生産性が乏しいな」

「私にカードを合成出来るようなスキルがあれば……望みすぎか? さてこの電量で今度は何を造るか? これ以上マップを拡だ」


 聳え立つ緑の円柱に、突き刺さった白い脚────。

 散らかっていた、空気のどんよりとした閉めっぱなしの部屋に風穴をあけて────。








 晴天下の突如の襲来に、毛の生えた豚人間がジャグリングをしながらアスファルトを闊歩していく。

 スライムジャグラーシューターの群れはボックスの色を満たしてどこへやら逃げ惑う連中に攻撃を開始した。



 宙を走るカラフルボックスは溜めた色ビームを近場のターゲットへとロックオンし吐き出す。

 アレを貰うと黒い光の粒にされてしまう。大事な者たちがそうなっていくのを、人々は非現実にも体感している。とにかく必死で逃げる、それとも諦める、座り込む、泣き崩れる────



 パラっと開き、染め上げられていく。

 色とりどりの傘の盾はターゲットへの射撃攻撃を防いだ。

 幾多も展開され宙をふわり彩る傘の列。ビームの雨から人々を守るのは傘の役割。


「っ……まったくなんなのさね? ふふふふふふ、パラってるわね」

 立ち上がった──カフェテラス席からパラっと開いた白い日傘、海月が泳ぐ黒いバンダナに黒青い髪を纏めたらコーディネートはハイセンスに。今日はシックにシンプルに黒いボタン付きワンピースを長身の白いヒールで着こなせば。



「さすがハイサカイ、なかなかハイセンスにいい傘もってるじゃない、カササスっ!」

 訳の分からないどこか見覚えのあるモンスター達に、自分にも考える時間は与えない。

 傘をささない人々の傘となり、敵性モンスターへはそのカラフルに浮遊する傘を突き刺し操作しお見舞いする。
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