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第230死 レッドカーペット
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舞台役者のトレーニングを積んだその健脚で靴狩りのチーターのナゾの執着を振り切り、進んで行った道の先────。
小気味の良い音を鳴らし躍動する黄色いスポーティーは、相変わらずのアスファルトの舞台の上に。
ゾンビ、ミイラ、アヌビス、ガーゴイル、ビッグフッドに河童に透明人間。
なんとも総結集なメンツが敵となり立ちはだかり、河童は皿から真っ二つに、ばっちぃミイラはその包帯を伝うエメラルドの色に染め上げられ、ビッグフッドのパワーをも凌駕し、近づく透明の予感は意味を成さずブラックな包丁に刻まれていく。
この薄暮、グレーの天が濃く染まりゆく下で、黒と黄の役者の一人舞台ではなく、漆色のカラフルかつ渋い何処で売っているのか分からないバケットハットを被る──
彼女の隣で戦う長身の男。カーペットを丸めて円柱の丈夫な武器と化し、襲い掛かって来た白い毛むくじゃらのビッグフッドの腕ごと粉砕。その体格その膂力で並いるモンスターを弾き飛ばしていく。
彼女よりおおきい、それはひじょうに珍しい出逢い。
一波去った、そんな間に彼女なりのやわらかい雰囲気の雑談タイムが始まった。
「今日はいろんな方々に出逢います。大量の傘に給仕ロボットにヒョウ柄に……大阪のサカイとは芸能の街なのでしょうか、あなたもどこかの劇団に所属を」
「昔、泣かない電柱と呼ばれていた」
「ナカナイ電柱……やはりそうでしたか、ふふ、厄介なスカウトの目からは逃れられないようで」
「お前はまだちいさくてかわいい」
「ふふふ、ありがとうございます」
「傘女に行かされたのならば手助けは無用、いけっ小さき人」
投げ放ち転がっていく円柱は不思議とみるみるその太さを増し、雑談の間に寄って来ていたモンスターをその赤くワイドなタイヤで蹂躙していく。
そのおおきな人のスキルはモンスターの海を割るほどに強力。故に小さき人の手助けは無用。天高い帽子の影から覗いた大男のみせた微かな笑みに、向き合うクールで可憐な微笑みを残して意図を汲み取りノリに乗り迷いはない。
道を開ける────赤いカーペットがどこまでも伸びていき、
「レッドカーペットはまだ早いようですが、ええっ、チンキス!」
絨毯の上を並び走る3体のアヌビスは死電子を浴び動けない、シールドを発生する間もなく吹き抜けた黒風に斬り刻まれ、滅。
──右手を突き上げた、それは爽やかな別れ。新たなおおきな出逢い、連鎖する探索者たちとの出逢いに黒い塔を目指して新たに敷かれたレールの上、思いで紡いだ煌びやかなレッドカーペットの上をクールに走っていくのは死のダンジョンの吐い信者、丘梨栄枯。
▼▼▼
▽▽▽
皆の勝利の雄叫びが上がったのは数分前、青龍はオーバー未惇と心機人類2号器のニコを中心として討ち取る事に成功した。その後報告も無く2人は消えていってしまったが……。
冷めやらぬ熱気も少しは落ち着き、
噴水前を中継基地とし、不思議な折り鶴でDODO本部と堺市各地に散らばった諜報部隊と連絡を取っていた。
「そうですか掃除屋が何故か死のダンジョンから戻って来た、それに侍もコロッセウムで交戦中ですか。コロッセウム……? とにかくっそれは朗報です。防災用のシェルターも機能しているようですが……被害状況は不明……東京支部に外部やエスト電機との連絡も取れず、推測ですがこの堺市だけが狙われたあるいは────」
長机に手を叩き置き、狗雨雷はまた熟考していく。これからすべき……既に探索者と職員に命令を下し送り出している人命救助とモンスターの殲滅。探索者ランクとスキルの相性と人間関係を加味して、細かい指示は下さずある程度は探索者たちの自主性に任せ、6人1組のパーティーを次々に作り上げさせてとりあえずの出撃許可を出していた。
「とにかくこうもジャミングだらけではどの道足で稼ぐしかありません……唯一役に立つヤクトドローンⅡも充電ユニットが無ければ……」
強敵を倒したはずがまだまだ終わらないこの状況に狗雨雷の顔に余裕のある表情は一時も見えない。
噴水の打ち付ける音とピリつく空気に、────、バタバタと足音。
そして顔を少し上げると、金髪に金眼にパーカーとジーンズ。
良く見慣れた人物、そして良くない人物。口を開こうとしたソレに、
渇いた口元に人差しと中指を当て──風の刃が吹き抜ける。
「のわっ!? ──なにやってんの姉さん!?!?」
掠めていった風の刃はどこかへ消え去り、しゃがんでいる必死の形相のソレを見下した。
「あなたは…………本物の雷亜ですか、何故ここに」
「そりゃ本物だろ……! 今の避けなきゃ当たってたぞ!!! 馬鹿なのかええッ!!!」
唾がかかるほど長机に両手を勢いよく置き身を乗り出し、白いパーカーをだらっと着た雷亜は対岸の雨宙に詰め寄った。
「…………気のせいです。で、何故っ、あなたはッ、ここに!」
「何故って招待されたこのお楽しみチケットがダメになったからだ、まぁ今はその残念よりもさぁ。姉さんなんだいこのエンターテイんメントはッッッ、はははははは。面白過ぎるじゃないか! これも姉さんの仕業か!」
叩き見せつけた一枚のチケットと、イヤな笑い方をするいつもの弟に舌打ちをしそうになったところで。
「おーい事務局長くん。間に合ったかな?」
「大遅刻です、明智マリアッ!!! 何故市街地Bから連絡をッ──────」
白いカーゴ、まりじが密かに作り上げていたその宙を浮く中型の乗り物カード。ソレに乗り込み白衣を靡かせながら後部に機器を積み颯爽とこの中継基地を嗅ぎつけてやって来た。
間に合ってはいない、だが不思議なことに集まった。DODOのトップである事務局長狗雨雷叢雲の下に。目的不明のパーカーは白い色違い本物の弟である雷亜と、DODO電境開発部の明智マリア。開口一番のフラストレーションを発散──怒声後の、迅速な情報の擦り合わせを行いながら巡り合わせた3つのブレインを働かせて、堺市のカオスな状況をクリーンアップする作戦を立てていく。
小気味の良い音を鳴らし躍動する黄色いスポーティーは、相変わらずのアスファルトの舞台の上に。
ゾンビ、ミイラ、アヌビス、ガーゴイル、ビッグフッドに河童に透明人間。
なんとも総結集なメンツが敵となり立ちはだかり、河童は皿から真っ二つに、ばっちぃミイラはその包帯を伝うエメラルドの色に染め上げられ、ビッグフッドのパワーをも凌駕し、近づく透明の予感は意味を成さずブラックな包丁に刻まれていく。
この薄暮、グレーの天が濃く染まりゆく下で、黒と黄の役者の一人舞台ではなく、漆色のカラフルかつ渋い何処で売っているのか分からないバケットハットを被る──
彼女の隣で戦う長身の男。カーペットを丸めて円柱の丈夫な武器と化し、襲い掛かって来た白い毛むくじゃらのビッグフッドの腕ごと粉砕。その体格その膂力で並いるモンスターを弾き飛ばしていく。
彼女よりおおきい、それはひじょうに珍しい出逢い。
一波去った、そんな間に彼女なりのやわらかい雰囲気の雑談タイムが始まった。
「今日はいろんな方々に出逢います。大量の傘に給仕ロボットにヒョウ柄に……大阪のサカイとは芸能の街なのでしょうか、あなたもどこかの劇団に所属を」
「昔、泣かない電柱と呼ばれていた」
「ナカナイ電柱……やはりそうでしたか、ふふ、厄介なスカウトの目からは逃れられないようで」
「お前はまだちいさくてかわいい」
「ふふふ、ありがとうございます」
「傘女に行かされたのならば手助けは無用、いけっ小さき人」
投げ放ち転がっていく円柱は不思議とみるみるその太さを増し、雑談の間に寄って来ていたモンスターをその赤くワイドなタイヤで蹂躙していく。
そのおおきな人のスキルはモンスターの海を割るほどに強力。故に小さき人の手助けは無用。天高い帽子の影から覗いた大男のみせた微かな笑みに、向き合うクールで可憐な微笑みを残して意図を汲み取りノリに乗り迷いはない。
道を開ける────赤いカーペットがどこまでも伸びていき、
「レッドカーペットはまだ早いようですが、ええっ、チンキス!」
絨毯の上を並び走る3体のアヌビスは死電子を浴び動けない、シールドを発生する間もなく吹き抜けた黒風に斬り刻まれ、滅。
──右手を突き上げた、それは爽やかな別れ。新たなおおきな出逢い、連鎖する探索者たちとの出逢いに黒い塔を目指して新たに敷かれたレールの上、思いで紡いだ煌びやかなレッドカーペットの上をクールに走っていくのは死のダンジョンの吐い信者、丘梨栄枯。
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▽▽▽
皆の勝利の雄叫びが上がったのは数分前、青龍はオーバー未惇と心機人類2号器のニコを中心として討ち取る事に成功した。その後報告も無く2人は消えていってしまったが……。
冷めやらぬ熱気も少しは落ち着き、
噴水前を中継基地とし、不思議な折り鶴でDODO本部と堺市各地に散らばった諜報部隊と連絡を取っていた。
「そうですか掃除屋が何故か死のダンジョンから戻って来た、それに侍もコロッセウムで交戦中ですか。コロッセウム……? とにかくっそれは朗報です。防災用のシェルターも機能しているようですが……被害状況は不明……東京支部に外部やエスト電機との連絡も取れず、推測ですがこの堺市だけが狙われたあるいは────」
長机に手を叩き置き、狗雨雷はまた熟考していく。これからすべき……既に探索者と職員に命令を下し送り出している人命救助とモンスターの殲滅。探索者ランクとスキルの相性と人間関係を加味して、細かい指示は下さずある程度は探索者たちの自主性に任せ、6人1組のパーティーを次々に作り上げさせてとりあえずの出撃許可を出していた。
「とにかくこうもジャミングだらけではどの道足で稼ぐしかありません……唯一役に立つヤクトドローンⅡも充電ユニットが無ければ……」
強敵を倒したはずがまだまだ終わらないこの状況に狗雨雷の顔に余裕のある表情は一時も見えない。
噴水の打ち付ける音とピリつく空気に、────、バタバタと足音。
そして顔を少し上げると、金髪に金眼にパーカーとジーンズ。
良く見慣れた人物、そして良くない人物。口を開こうとしたソレに、
渇いた口元に人差しと中指を当て──風の刃が吹き抜ける。
「のわっ!? ──なにやってんの姉さん!?!?」
掠めていった風の刃はどこかへ消え去り、しゃがんでいる必死の形相のソレを見下した。
「あなたは…………本物の雷亜ですか、何故ここに」
「そりゃ本物だろ……! 今の避けなきゃ当たってたぞ!!! 馬鹿なのかええッ!!!」
唾がかかるほど長机に両手を勢いよく置き身を乗り出し、白いパーカーをだらっと着た雷亜は対岸の雨宙に詰め寄った。
「…………気のせいです。で、何故っ、あなたはッ、ここに!」
「何故って招待されたこのお楽しみチケットがダメになったからだ、まぁ今はその残念よりもさぁ。姉さんなんだいこのエンターテイんメントはッッッ、はははははは。面白過ぎるじゃないか! これも姉さんの仕業か!」
叩き見せつけた一枚のチケットと、イヤな笑い方をするいつもの弟に舌打ちをしそうになったところで。
「おーい事務局長くん。間に合ったかな?」
「大遅刻です、明智マリアッ!!! 何故市街地Bから連絡をッ──────」
白いカーゴ、まりじが密かに作り上げていたその宙を浮く中型の乗り物カード。ソレに乗り込み白衣を靡かせながら後部に機器を積み颯爽とこの中継基地を嗅ぎつけてやって来た。
間に合ってはいない、だが不思議なことに集まった。DODOのトップである事務局長狗雨雷叢雲の下に。目的不明のパーカーは白い色違い本物の弟である雷亜と、DODO電境開発部の明智マリア。開口一番のフラストレーションを発散──怒声後の、迅速な情報の擦り合わせを行いながら巡り合わせた3つのブレインを働かせて、堺市のカオスな状況をクリーンアップする作戦を立てていく。
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