いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

文字の大きさ
40 / 49
後日談2 トラウマ

【5】金曜日の夜

しおりを挟む
『待ち合わせには15分ほど遅れる』

 メッセージアプリから久我に連絡を入れる。

『わかりました。気をつけて来てくださいね』

 返信はすぐに来た。




 金曜日の午後7時20分。
 近くに繁華街があるターミナル駅は、ほどほどに混んでいた。

「おまたせしました……って、遅刻するってメッセージ来てましたけど、唯織さん早かったですね?」

 今日の久我との待ち合わせは7時30分。オレがここに到着したのは、メッセージを送信した7時15分だった。

「……まだ来てない」
「え?」

 話しかけてきた久我に視線を向けることなくオレは言う。

「今日は遅刻する予定だから、来てないことにしとけ」
「なんですか、それ」

 素っ頓狂なことを言い出したオレに久我が軽く噴き出す。

「どうせ近くに居るのがバレてるなら、こそこそ隠れてるのが性に合わないだけだ」
「唯織さん、潔すぎでしょ」
 
 久我が肩を震わせて笑っている気配を感じる。
 オレはそれ以上は何も言わず、ただ前を見ていた。
 久我もそれに倣ってオレの隣に立つ。間抜けな感じに二人並んで立つことになった。
 
 週末ということもあり、心なしか行き交う人達にも浮ついた空気がある気がする。……いや自分の気持ちが浮ついているので、そう感じるだけかもしれない。





「……待たせたな」

 時計の長針が45分を指したときにようやくオレは口を開いた。

「待たされましたよ。今日は、ご飯の後はホテル行きましょうか」

 意外な単語が久我の口から出てきて、思わず顔を見てしまう。そういえば、今まで久我とホテルに行ったことはない。

「遅刻したお仕置きしますから……いいですよね?」

 その言葉に身体が疼く。オレは頷いた。






 軽く食事をしてから、二人でホテルに入る。
 普段とは違った非日常感に、心がフワフワしている。
 食事中もどこか上の空だったオレのことを咎めることなく、久我はホテルまでオレをエスコートしてくれた。


「さて……それじゃあ、まずは遅刻のお仕置きからですよね。唯織さん、Strip脱いで

 GlareとともにCommandが与えられた。
 ベッドに深く腰掛けた久我の前で、オレはゆるゆると服を脱ぎ去った。
 久我のGlareにすぐに反応して発情してしまう。まるでパブロフの犬だ。
 今からするのはセックスじゃなくて、お仕置きなのに。

 オレは昂ぶる気持ちをなんとか押さえながら久我のCommand命令に従った。

Good Boyいいこです。じゃあ、次はこっちにCome来て

 示されたのは、久我の膝の上だった。
 緩慢な動作で向かい合わせに久我の膝の上に座る。
 苦笑した久我にチュッと頬にキスを落とされた。

「うーん、素直な唯織さんはこのまま食べちゃいたいくらい可愛いんですけれど……残念ながら、今からするのはお仕置きなので……姿勢はこうですよ」

 久我に体勢を変えられて、オレは久我の膝の上に下半身を乗せた格好でうつ伏せにされる。

 今から与えられるお仕置きを想像して、身体が震える。
 久我が手を振り上げた後、ペチンと柔らかい音がした。

「唯織さん、大丈夫そうですか?」
「……手加減されるのヤだ……」
「……でも、唯織さん震えて……」
「ちゃんとお仕置きしろよ」

 怖くて震えてるんじゃない、期待で震えてるんだ。
 顔を上げたら久我と視線が合った。久我もオレの物欲しげな様子に気付いたみたいだ。

「すみません、それじゃあやり直しさせてください」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

不器用な僕とご主人様の約束

いち
BL
敬語のクラブオーナー×年下のやんちゃっ子。遊んでばかりいるSubの雪はある日ナイトクラブでDomの華藍を知ります。ちょっと暑くなってくる前に出会った二人の短編です。 🍸カンパリオレンジのカクテル言葉は初恋だそうです。素敵ですね。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

処理中です...