6 / 39
6話 死因*
しおりを挟む
「……は?」
オレがようやく反応できたのは、相神が部屋を出て行ってからだった。
────八剱斗環が、死んだ?
でも、今、オレはここで生きているぞ?
呆然としながら自分の姿を見て、そういえば、この姿は自分のものではなかったと気付く。
オレは死んで、琴宮睦和になってしまったということだろうか。じゃあ、琴宮はどうなったんだ?
そこでようやく、ローテーブルの上に置いてあった大量の薬の残骸と半分飲まれたワインの存在を思い出す。
────あれを飲んだのは、琴宮か?
何故だか知らないけれど、死んでしまったオレが、死のうとした琴宮の身体を乗っ取ってしまったのではないだろうか。
琴宮が何で死のうとしたかだなんて、そんなことはどうでもいい。弱いやつは潰される、ただそれだけのことだ。
じゃあ、オレはなんで死んだんだ?
オレの名前を出しただけで、相神が何の説明もなく、ただ「死んだ」とだけ伝えたということは、オレが死ぬような状況になったとき、琴宮もその場に居たということか?
この3人が同じ場に居合わせたのは、オレが琴宮を相神に売った時だけだ。
確かあの時は、繁華街にある相神の店の裏口でオレは琴宮を相神に引き渡した。オレは報酬として相神から金を受け取って……
そこまで思い出した時、ずくりと腹が痛んだような気がした。
ああ、そうだ。そして、用事が終わって帰ろうとしたら、奇声を上げながら走ってきた男に腹を刺されたんだ。それが誰だったかなんて、わからねぇ。
金を貸している客かもしんねぇし、オレが売ったオメガの恋人かもしんねぇ。他の組の構成員かもしんねぇ。恨みなんてあちこちで買いまくって生きてきたから、心当たりはありすぎる。
刺された腹は、痛いというより焼けるような熱さだった。道路に崩れ落ちた後も、男はオレに馬乗りになって何度も包丁を振り上げていた。すぐに我に返った相神が、体当たりでオレの上からその男を押しのけて、ドスの効いた声を上げながら報復をしていたと思う。相神に聞けばそれが誰だったのかは、きっとすぐにわかるだろう。
そして、オレの最期の記憶は、相神がオレの名前を呼ぶ悲痛な声と、驚いた表情でオレを見ている琴宮の顔だった。
……そうか、あれでオレは死んだのか。先程、相神は「この後、通夜だ」と言っていた。そして、葬式は明日だと。つまり、明日になればオレの身体は焼かれてしまう。
こんな状況で、オレは元の身体に戻ることができるのか。いや、元の身体に戻ったところで、死んでしまっているなら意味がねぇ。
オレは、元の姿に戻る方法もわからなければ、死んだ自分を生き返らせる方法もわからない。それに、これから執り行われる通夜と葬儀を止める術もない。
それなら、オレはこの先、一生このオメガとして生きていくしかないのか……?
もし、それしか生きる術がないというなら、腹をくくるしかない。
できないことを考え抜くより、できることを突き詰めていくほうがよっぽど性に合っている。
なんでかはわからねぇが、一度死んで拾った命だ。この姿だって最大限有効に使って、オレはなんとしても生き延びてやる。
そうと決まれば、オレは自分が望む生き方をするのに邪魔となる障害物を片っ端から潰していくだけだ。借金のカタに売り飛ばされたオメガだなんてなかなかのドン底人生スタートだけど、絶対に這い上がってやる。
まず、ここにいる限り衣食住が保証されているのはいいとしよう。その代わり、これからオレが客を取らされるだろうということが一番の問題だ。
オレは自分の姿を改めて見てため息をついた。
ショーツのフロント部分はオレの先走りか何かの体液でベショベショだし、勃起したチンコが布面積の小さいショーツからはみ出していたのか、ベビードールに精液がベッタリとついている。ケツの穴からは、相神の精液がたらりと漏れ出していた。
「あー、まじサイテーだな」
オメガとしての処女を相神で散らすことになってしまったことも、あんな雑なセックスに感じまくってしまったことも、さらには善がり狂ってイってしまったことも、その相神にヤリ捨てられたことも。何もかもが最低だ。
つーか、相神のやつ。商品に手ぇ出して、そのまま放置して帰ってんじゃねーよ。
この状態で客がこの部屋に入って来たらどーすんだよ。クレームものだぞ? ……いや、そんなのオレの知ったこっちゃないが。ただ、クレームの矛先がこっちに来るのは困る。
オレはため息を吐くと、自分の身体に残る情事の痕跡を消すために風呂場に向かった。
オレがようやく反応できたのは、相神が部屋を出て行ってからだった。
────八剱斗環が、死んだ?
でも、今、オレはここで生きているぞ?
呆然としながら自分の姿を見て、そういえば、この姿は自分のものではなかったと気付く。
オレは死んで、琴宮睦和になってしまったということだろうか。じゃあ、琴宮はどうなったんだ?
そこでようやく、ローテーブルの上に置いてあった大量の薬の残骸と半分飲まれたワインの存在を思い出す。
────あれを飲んだのは、琴宮か?
何故だか知らないけれど、死んでしまったオレが、死のうとした琴宮の身体を乗っ取ってしまったのではないだろうか。
琴宮が何で死のうとしたかだなんて、そんなことはどうでもいい。弱いやつは潰される、ただそれだけのことだ。
じゃあ、オレはなんで死んだんだ?
オレの名前を出しただけで、相神が何の説明もなく、ただ「死んだ」とだけ伝えたということは、オレが死ぬような状況になったとき、琴宮もその場に居たということか?
この3人が同じ場に居合わせたのは、オレが琴宮を相神に売った時だけだ。
確かあの時は、繁華街にある相神の店の裏口でオレは琴宮を相神に引き渡した。オレは報酬として相神から金を受け取って……
そこまで思い出した時、ずくりと腹が痛んだような気がした。
ああ、そうだ。そして、用事が終わって帰ろうとしたら、奇声を上げながら走ってきた男に腹を刺されたんだ。それが誰だったかなんて、わからねぇ。
金を貸している客かもしんねぇし、オレが売ったオメガの恋人かもしんねぇ。他の組の構成員かもしんねぇ。恨みなんてあちこちで買いまくって生きてきたから、心当たりはありすぎる。
刺された腹は、痛いというより焼けるような熱さだった。道路に崩れ落ちた後も、男はオレに馬乗りになって何度も包丁を振り上げていた。すぐに我に返った相神が、体当たりでオレの上からその男を押しのけて、ドスの効いた声を上げながら報復をしていたと思う。相神に聞けばそれが誰だったのかは、きっとすぐにわかるだろう。
そして、オレの最期の記憶は、相神がオレの名前を呼ぶ悲痛な声と、驚いた表情でオレを見ている琴宮の顔だった。
……そうか、あれでオレは死んだのか。先程、相神は「この後、通夜だ」と言っていた。そして、葬式は明日だと。つまり、明日になればオレの身体は焼かれてしまう。
こんな状況で、オレは元の身体に戻ることができるのか。いや、元の身体に戻ったところで、死んでしまっているなら意味がねぇ。
オレは、元の姿に戻る方法もわからなければ、死んだ自分を生き返らせる方法もわからない。それに、これから執り行われる通夜と葬儀を止める術もない。
それなら、オレはこの先、一生このオメガとして生きていくしかないのか……?
もし、それしか生きる術がないというなら、腹をくくるしかない。
できないことを考え抜くより、できることを突き詰めていくほうがよっぽど性に合っている。
なんでかはわからねぇが、一度死んで拾った命だ。この姿だって最大限有効に使って、オレはなんとしても生き延びてやる。
そうと決まれば、オレは自分が望む生き方をするのに邪魔となる障害物を片っ端から潰していくだけだ。借金のカタに売り飛ばされたオメガだなんてなかなかのドン底人生スタートだけど、絶対に這い上がってやる。
まず、ここにいる限り衣食住が保証されているのはいいとしよう。その代わり、これからオレが客を取らされるだろうということが一番の問題だ。
オレは自分の姿を改めて見てため息をついた。
ショーツのフロント部分はオレの先走りか何かの体液でベショベショだし、勃起したチンコが布面積の小さいショーツからはみ出していたのか、ベビードールに精液がベッタリとついている。ケツの穴からは、相神の精液がたらりと漏れ出していた。
「あー、まじサイテーだな」
オメガとしての処女を相神で散らすことになってしまったことも、あんな雑なセックスに感じまくってしまったことも、さらには善がり狂ってイってしまったことも、その相神にヤリ捨てられたことも。何もかもが最低だ。
つーか、相神のやつ。商品に手ぇ出して、そのまま放置して帰ってんじゃねーよ。
この状態で客がこの部屋に入って来たらどーすんだよ。クレームものだぞ? ……いや、そんなのオレの知ったこっちゃないが。ただ、クレームの矛先がこっちに来るのは困る。
オレはため息を吐くと、自分の身体に残る情事の痕跡を消すために風呂場に向かった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる