極道アルファは極上オメガに転生して、愛に啼く

夏芽玉

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11話 つまり、ペットだな

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 なんか、盛大な空振りをしてしまったみたいで、妙にバツが悪い。
 再び、二人の間に沈黙が落ちる。

「あー……ところでさ。あんたはいったい、オレに何をさせたいわけ?」

 沈黙が居心地悪くて、オレはそう切り出した。

「何、とは……?」

 話しかけても相神はオレの方を向こうともしなかった。心ここにあらずといった感じだ。いやマジあんた、ここに何しに来たの?

「いや……なんか、ずっと放置されてるし。何もすることねーし。あ、いや、別に寂しいって言ってんじゃねーぞ? ええと、だから……」

 オレは墓穴を掘らないように、慎重に言葉を選びながら言った。

「おまえはオレが飼うことにした」
「は、はぁ?」
「つまり……ペットだな」
「ぺっとぉ……!?」

 いつもに比べると随分覇気のない相神は、盛大にトチ狂ってやがった。

「いやいやいやいや。あんな金額で買い取ったのに、遊ばせといたら上納金に響くんじゃねぇの!?」

 いや、別に、そんなのオレが心配することじゃねーけどさ!?
 今まで見てきた相神の姿と、今目の前に居る相神の姿が随分違い過ぎて、妙に心配になってくる。

「組に収める金は使っちゃいねーよ」
「は? じゃ、あんな大金、どっから出したんだよ」
「オレのポケットマネーだ」
「へ? あんな額、どーやって稼いだんだ?」
「んなもの、株とか投資とかがあるだろ」

 このインテリヤクザめ。普通は仕事の片手間でそんなに儲からねーよ。

 話を聞けば、今までも、オレが売ったオメガの一部は一度個人的に買い取って、不要になったら自分が経営する店に売り払っていたそうだ。なんじゃそれ。

 ちなみに、個人的に買い取るかの判断基準は、オレのお手付きかどうかだそうだ。
 あああ、確かにそう言われてみれば、味見した奴は何故か高値で買われていた気がする。そんなのどんな嗅覚で見分けてたんだよ、って思ったけれど、そういえば売りつけるときに穴の使い具合とかをこいつにドヤ顔で自慢した記憶があるわ。お手付きかどうかなんて、オレが自分から暴露してたわ。
 オレの使用済みオメガにどんな執着があって、どんな使い方をしたのかは、触れちゃいけない気がしてとてもじゃないけど聞き出す気にはならなかった。

「えぇと……じゃあ、オレも飽きたら店に売られるってことか……?」
「おまえは、あの人の形見になっちまったからな……」

 いやいや。琴宮オレをオレの形見にするんじゃねぇ。つーか、むしろオレが本人だ。あ、自分で何言ってんのかよくわかんなくなってきた。
 とりあえずなんかよくわかんねぇけど、相神がオレのこと超大好きで、オレに滅茶苦茶執着していて、オレが死んで可愛そうになるくらい落ち込んでいるってことだけはとりあえず伝わった。つーかそれしかわからなかったけど、まぁいい。こいつにそこまで想われるのは、正直そんなに嫌じゃなかった。だから、オレは相神にちょっとだけ優しくしてやることにした。

「なぁ、こっち来いよ」

 立ち上がって、相神の手をひいた。相神は大人しくオレの後をついてきた。

「添い寝くらいはしてやるから、とりあえず寝ろ」

 ベッドまで連れていくと、オレは相神の背中を押した。オレの力じゃ相神を押し倒すなんてことはできなかったけれど、相神はのろのろとではあるけれど自らベッドに入った。オレもそれに続いて同じ布団に潜り込む。
 オレは背中を向けた相神を、背後から抱きしめた。喪服は、タバコと線香の混じったような匂いがした。相神は、昨日は一睡もしてないんじゃないだろうか。なんだかそんな気がした。

 この匂いは八剱斗環オレを弔った匂いなのか。そう考えたら、なんとも言えない気持ちになる。
 そのまましばらくじっとしていると、オレの腕の中で規則正しい寝息が聞こえてきたのだった。

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