11 / 39
11話 つまり、ペットだな
しおりを挟む
なんか、盛大な空振りをしてしまったみたいで、妙にバツが悪い。
再び、二人の間に沈黙が落ちる。
「あー……ところでさ。あんたはいったい、オレに何をさせたいわけ?」
沈黙が居心地悪くて、オレはそう切り出した。
「何、とは……?」
話しかけても相神はオレの方を向こうともしなかった。心ここにあらずといった感じだ。いやマジあんた、ここに何しに来たの?
「いや……なんか、ずっと放置されてるし。何もすることねーし。あ、いや、別に寂しいって言ってんじゃねーぞ? ええと、だから……」
オレは墓穴を掘らないように、慎重に言葉を選びながら言った。
「おまえはオレが飼うことにした」
「は、はぁ?」
「つまり……ペットだな」
「ぺっとぉ……!?」
いつもに比べると随分覇気のない相神は、盛大にトチ狂ってやがった。
「いやいやいやいや。あんな金額で買い取ったのに、遊ばせといたら上納金に響くんじゃねぇの!?」
いや、別に、そんなのオレが心配することじゃねーけどさ!?
今まで見てきた相神の姿と、今目の前に居る相神の姿が随分違い過ぎて、妙に心配になってくる。
「組に収める金は使っちゃいねーよ」
「は? じゃ、あんな大金、どっから出したんだよ」
「オレのポケットマネーだ」
「へ? あんな額、どーやって稼いだんだ?」
「んなもの、株とか投資とかがあるだろ」
このインテリヤクザめ。普通は仕事の片手間でそんなに儲からねーよ。
話を聞けば、今までも、オレが売ったオメガの一部は一度個人的に買い取って、不要になったら自分が経営する店に売り払っていたそうだ。なんじゃそれ。
ちなみに、個人的に買い取るかの判断基準は、オレのお手付きかどうかだそうだ。
あああ、確かにそう言われてみれば、味見した奴は何故か高値で買われていた気がする。そんなのどんな嗅覚で見分けてたんだよ、って思ったけれど、そういえば売りつけるときに穴の使い具合とかをこいつにドヤ顔で自慢した記憶があるわ。お手付きかどうかなんて、オレが自分から暴露してたわ。
オレの使用済みオメガにどんな執着があって、どんな使い方をしたのかは、触れちゃいけない気がしてとてもじゃないけど聞き出す気にはならなかった。
「えぇと……じゃあ、オレも飽きたら店に売られるってことか……?」
「おまえは、あの人の形見になっちまったからな……」
いやいや。琴宮をオレの形見にするんじゃねぇ。つーか、むしろオレが本人だ。あ、自分で何言ってんのかよくわかんなくなってきた。
とりあえずなんかよくわかんねぇけど、相神がオレのこと超大好きで、オレに滅茶苦茶執着していて、オレが死んで可愛そうになるくらい落ち込んでいるってことだけはとりあえず伝わった。つーかそれしかわからなかったけど、まぁいい。こいつにそこまで想われるのは、正直そんなに嫌じゃなかった。だから、オレは相神にちょっとだけ優しくしてやることにした。
「なぁ、こっち来いよ」
立ち上がって、相神の手をひいた。相神は大人しくオレの後をついてきた。
「添い寝くらいはしてやるから、とりあえず寝ろ」
ベッドまで連れていくと、オレは相神の背中を押した。オレの力じゃ相神を押し倒すなんてことはできなかったけれど、相神はのろのろとではあるけれど自らベッドに入った。オレもそれに続いて同じ布団に潜り込む。
オレは背中を向けた相神を、背後から抱きしめた。喪服は、タバコと線香の混じったような匂いがした。相神は、昨日は一睡もしてないんじゃないだろうか。なんだかそんな気がした。
この匂いは八剱斗環を弔った匂いなのか。そう考えたら、なんとも言えない気持ちになる。
そのまましばらくじっとしていると、オレの腕の中で規則正しい寝息が聞こえてきたのだった。
再び、二人の間に沈黙が落ちる。
「あー……ところでさ。あんたはいったい、オレに何をさせたいわけ?」
沈黙が居心地悪くて、オレはそう切り出した。
「何、とは……?」
話しかけても相神はオレの方を向こうともしなかった。心ここにあらずといった感じだ。いやマジあんた、ここに何しに来たの?
「いや……なんか、ずっと放置されてるし。何もすることねーし。あ、いや、別に寂しいって言ってんじゃねーぞ? ええと、だから……」
オレは墓穴を掘らないように、慎重に言葉を選びながら言った。
「おまえはオレが飼うことにした」
「は、はぁ?」
「つまり……ペットだな」
「ぺっとぉ……!?」
いつもに比べると随分覇気のない相神は、盛大にトチ狂ってやがった。
「いやいやいやいや。あんな金額で買い取ったのに、遊ばせといたら上納金に響くんじゃねぇの!?」
いや、別に、そんなのオレが心配することじゃねーけどさ!?
今まで見てきた相神の姿と、今目の前に居る相神の姿が随分違い過ぎて、妙に心配になってくる。
「組に収める金は使っちゃいねーよ」
「は? じゃ、あんな大金、どっから出したんだよ」
「オレのポケットマネーだ」
「へ? あんな額、どーやって稼いだんだ?」
「んなもの、株とか投資とかがあるだろ」
このインテリヤクザめ。普通は仕事の片手間でそんなに儲からねーよ。
話を聞けば、今までも、オレが売ったオメガの一部は一度個人的に買い取って、不要になったら自分が経営する店に売り払っていたそうだ。なんじゃそれ。
ちなみに、個人的に買い取るかの判断基準は、オレのお手付きかどうかだそうだ。
あああ、確かにそう言われてみれば、味見した奴は何故か高値で買われていた気がする。そんなのどんな嗅覚で見分けてたんだよ、って思ったけれど、そういえば売りつけるときに穴の使い具合とかをこいつにドヤ顔で自慢した記憶があるわ。お手付きかどうかなんて、オレが自分から暴露してたわ。
オレの使用済みオメガにどんな執着があって、どんな使い方をしたのかは、触れちゃいけない気がしてとてもじゃないけど聞き出す気にはならなかった。
「えぇと……じゃあ、オレも飽きたら店に売られるってことか……?」
「おまえは、あの人の形見になっちまったからな……」
いやいや。琴宮をオレの形見にするんじゃねぇ。つーか、むしろオレが本人だ。あ、自分で何言ってんのかよくわかんなくなってきた。
とりあえずなんかよくわかんねぇけど、相神がオレのこと超大好きで、オレに滅茶苦茶執着していて、オレが死んで可愛そうになるくらい落ち込んでいるってことだけはとりあえず伝わった。つーかそれしかわからなかったけど、まぁいい。こいつにそこまで想われるのは、正直そんなに嫌じゃなかった。だから、オレは相神にちょっとだけ優しくしてやることにした。
「なぁ、こっち来いよ」
立ち上がって、相神の手をひいた。相神は大人しくオレの後をついてきた。
「添い寝くらいはしてやるから、とりあえず寝ろ」
ベッドまで連れていくと、オレは相神の背中を押した。オレの力じゃ相神を押し倒すなんてことはできなかったけれど、相神はのろのろとではあるけれど自らベッドに入った。オレもそれに続いて同じ布団に潜り込む。
オレは背中を向けた相神を、背後から抱きしめた。喪服は、タバコと線香の混じったような匂いがした。相神は、昨日は一睡もしてないんじゃないだろうか。なんだかそんな気がした。
この匂いは八剱斗環を弔った匂いなのか。そう考えたら、なんとも言えない気持ちになる。
そのまましばらくじっとしていると、オレの腕の中で規則正しい寝息が聞こえてきたのだった。
7
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
宵の月
古紫汐桜
BL
Ωとして生を受けた鵜森月夜は、村で代々伝わるしきたりにより、幼いうちに相楽家へ召し取られ、相楽家の次期当主であり、αの相楽恭弥と番になる事を決められていた。
愛の無い関係に絶望していた頃、兄弟校から交換学生の日浦太陽に出会う。
日浦太陽は、月夜に「自分が運命の番だ」と猛アタックして来て……。
2人の間で揺れる月夜が出す答えは一体……
振り向いてよ、僕のきら星
街田あんぐる
BL
大学4年間拗らせたイケメン攻め×恋愛に自信がない素朴受け
「そんな男やめときなよ」
「……ねえ、僕にしなよ」
そんな言葉を飲み込んで過ごした、大学4年間。
理系で文学好きな早暉(さき)くんは、大学の書評サークルに入会した。そこで、小動物を思わせる笑顔のかわいい衣真(いま)くんと出会う。
距離を縮めていく二人。でも衣真くんはころころ彼氏が変わって、そのたびに恋愛のトラウマを深めていく。
早暉くんはそれでも諦めきれなくて……。
星のように綺麗な男の子に恋をしてからふたりで一緒に生きていくまでの、優しいお話です。
表紙イラストは梅干弁当さん(https://x.com/umeboshibento)に依頼しました。
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる