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017 フレイン王国の第七王女
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ライアック王国の第三騎士団の隊長が活動資金を盗んでいた事が発覚した事件は大騒ぎになった。
犯人であるグレル・アレイシスはかつての同僚で罪人のルイスの幽霊がやったのだという意味の分からない証言を繰り返しており精神的にも不安定な状態であった。
しかし証拠がしっかりと揃っていた為、実刑は免れないとしてアレイシス伯爵家とその息の掛かった店も連座の処分と言う事になったのだ。
だが、依然としてルイスがやったのだと繰り返すグレルの証言にごく一部の者たちはその意味を正確に捉えていた。
国王であるリュオン・ライアック・シェルザールと王妃であるシルビア、かつて王妃の近衛であったナイルズだ。
彼らはその犯行も証拠を揃えたのも黒狼盗賊団ひいてはリュシュランと今回の件でかつての事件は冤罪であったことが発覚したルイス・シュバリエ。
彼らの仕業であろう事を理解していた。
あの子が王都にいる。
それが分かった事でいよいよ捜査の手を強める事を希望した国王。
それがある悲劇をもたらす事など考えも及ばずにただ、子供を取り戻したい一心でそれを命じた。
曰く、黒髪金目の15歳くらいの少年に関する情報および当人と思われる身柄を押さえたものに懸賞金を出すというもの。
これはすぐに国内に発布されることになった。
――――…
フレイン王国には女王となる竜の血を引く王女が居る。
だが、第一王女と第五王女は生まれてすぐに亡くなって、第四王女は争いに敗れ命を散らした。第三王女と第六王女は毒を盛られ、亡くなった。
今、フレイン王国に女王としての血を持つものはただ2人、一人は1年前にライアック王国の第四王子を打ち破った第二王女と第七王女のみ。
だが、第七王女はとある理由でその候補から外されていた。
その理由は持つべき色を持たなかったからだ。
フレイン王国の女王は代々黒髪で赤い目を持って生まれてくる。
だが、第七王女はあろう事かライアック王国の色である白銀を纏って生まれてきたのだ。
生まれた子の名はシルフィール・フレイン・ウェスリー。
白銀の髪と赤い瞳を持って生まれた彼女はすぐに隔離されて存在自体居ないものとして扱われた。
そのシルフィールは15歳の歳を向かえその存在を疎ましく思う第二王女が女王に進言してフレイン王国から追放する形でライアック王国へと人質代わりに送られる事になった。
先の第四王子の命を奪った代償として体の良い厄介払いをしたのだ。
国を捨ててシルフィールは大人しくライアック王国へと送られる事になった。
彼女に従うものなど誰一人としていない。
白銀は疎まれている色だからだ。
だが、一人の侍女だけはシルフィールを幼い頃から友のように付き添ってくれていた。
シルフィールにとって彼女だけが唯一信頼できる友だった。
エマと言う名の侍女はシルフィールと共にライアック王国へと旅立った。フレイン王国と違ってライアック王国は白銀を尊い者として扱っている。
待遇は人質ではあるがきっと悪くは無いだろう。
そう考えていたからこそ受け入れて貰える嬉しさ半面、大いに不安も有りという複雑な気持ちだった。
「シルフィール様、どうやら王都に入る際にはパレードを行って下さるようです。」
「パレード?」
「えぇ、準備はライアック王国がして下さるとの事で、先ほど使者の方が来られました。」
「馬車を止めてまで話をしていたから何かと思ったらそんな事を?」
「良かったですねシルフィール様。いやな雰囲気では有りませんでしたし、きっとこちらの国ならシルフィール様の髪色も受け入れて下さいます。」
「そうだといいけど。」
「それにシルフィール様は美人でいらっしゃいます。きっと殿方も放っては置かないでしょう。」
「そんな事は無いと思うけど。だって私は…。」
シルフィールの手をぎゅっと握ってエマは真剣な表情でシルフィールを見上げた。
「シルフィール様はご自身を卑下しすぎです。自信を持って下さい。」
「エマ……。」
15年もの間シルフィールは城でずっと蔑まれて過ごしてきた。
その為自分に自信が無く王族であるにも関わらずどこか庶民的な考えをもつ少女に育っていた。だが、そんな少女でも王家の血を引く娘。
内から溢れる気品と美しさは姉妹の中でも群を抜いていた。
――――…
王都のとある宿屋で宿泊していたシュラ達一行は浮き足立った王都の様子をどこか他人事のように眺めていた。
「まるでお祭り騒ぎだな。」
シュラの言葉にイワンが外の様子に辟易した表情で応える。
「えぇ。なんでもフレイン王国の王女が来るらしいと大騒ぎですぜ。パレードもやるなんて敵国相手にお優しい事で。」
「イワンはフレイン王国にあんまり良い思いがないですからね。」
「ま、そうは言っても以前は稼ぎになっていたからな。だが、片目を奪われた恨みは消えてねぇ。」
ルイの言葉にイワンは治ったはずの目が疼くのかしきりに目を気にしている。
「でもよく人質なんて出したっすね。」
「そこなんだがよ、どうにもフレイン王国にとっては厄介払いが出来たって感じの扱いらしい。」
「どういうこと?」
オルグが仕入れてきた情報はなんとも詰まらない話だった。
髪の色ひとつでこうも対応が変わるとは…。
シュラはフレイン王国の王女に少しだけ興味を持った。
自分と正反対の髪色で同じ様に冷遇されてきた人物だと知ったからだ。
――――…
とある場所では黒を纏った集団が集会を開いていた。
王都にフレイン王国の王女が来るらしい情報はすでに入手している。
その王女が白銀をもつ女性であることも。
白銀に恨みを持つ漆黒の使徒。
彼らはライアック王国とは関係は無いが白銀を持つ王族であると言う理由だけで襲撃を計画していた。
リーダー格の男が壇上に上がり各々の視線を集める。
「我ら漆黒の同士諸君、よくぞ集まってくれた。聞いての通り、王都でフレイン王国の王女を向かえるパレードが行われる事となった。王女はフレイン王国の女王の血を引きながらも白銀を纏いし者だ。よってその者を我ら漆黒の使徒の手で鉄槌を下す事とした。」
「白銀を持つものに鉄槌を。」
多くの声が上がる中、複数の疑問も飛びかう。
「だが馬車で通るだけの王女に襲撃などできるのか?」
「パレードを行うのだ。窓を開いて顔を見せるに違いない。」
「では、弓か。」
「そうだ。毒矢を使えば良い。」
それぞれの疑問は解決に導かれ、襲撃方法も決まる。
決まった所で再びリーダー格の男が話しを纏めるために声をあげる。
「白銀を持つ王女を討てば我らの同士も少しは溜飲が下がるだろう。」
纏めようとした時にふとした疑問を持つ使徒が声をあげる。
それはこの国に住んでいるからこそ重要な意味を持つ。
「だが、良いのか?フレイン王国と戦争になりかねないぞ。」
「我らにとっては好都合ではないか。フレイン王国は黒を神聖なものとして扱う。我らはこれまでとは違い虐げられることが無くなるのだ。では、準備を行うとしよう。」
「おぉ!!」
集まる者たちの声はひとつに纏まり、想いを後押しする。
計画遂行に必要なもの。
まず漆黒の使徒を名乗る者たちの中で弓に長けたものを選ぶ。
そして数人を王都に潜り込ませて準備を進めるのだ。
彼らは相手が女性であろうと容赦はしない。
虐げられてきた者達にとってそのような理屈は通じないのだ。
彼らは自分たちと同じ境遇である王女であることに気が付かないまま計画を進めている。
パレードが行われる日は目前に迫っていた。
様々な思惑が重なってその日を向かえる彼らは王女を狙うことは正義だと考えて居るのだ。
黒への冒涜だと。
だが、こうして彼らが愚行を犯すのには理由があった。
それは王都から広がった黒への人々の扱いだ。
だが今は目的に向かって前に進む事しか考えて居ない彼らは危険があろうと関係なしに王都へ向かって行った。
犯人であるグレル・アレイシスはかつての同僚で罪人のルイスの幽霊がやったのだという意味の分からない証言を繰り返しており精神的にも不安定な状態であった。
しかし証拠がしっかりと揃っていた為、実刑は免れないとしてアレイシス伯爵家とその息の掛かった店も連座の処分と言う事になったのだ。
だが、依然としてルイスがやったのだと繰り返すグレルの証言にごく一部の者たちはその意味を正確に捉えていた。
国王であるリュオン・ライアック・シェルザールと王妃であるシルビア、かつて王妃の近衛であったナイルズだ。
彼らはその犯行も証拠を揃えたのも黒狼盗賊団ひいてはリュシュランと今回の件でかつての事件は冤罪であったことが発覚したルイス・シュバリエ。
彼らの仕業であろう事を理解していた。
あの子が王都にいる。
それが分かった事でいよいよ捜査の手を強める事を希望した国王。
それがある悲劇をもたらす事など考えも及ばずにただ、子供を取り戻したい一心でそれを命じた。
曰く、黒髪金目の15歳くらいの少年に関する情報および当人と思われる身柄を押さえたものに懸賞金を出すというもの。
これはすぐに国内に発布されることになった。
――――…
フレイン王国には女王となる竜の血を引く王女が居る。
だが、第一王女と第五王女は生まれてすぐに亡くなって、第四王女は争いに敗れ命を散らした。第三王女と第六王女は毒を盛られ、亡くなった。
今、フレイン王国に女王としての血を持つものはただ2人、一人は1年前にライアック王国の第四王子を打ち破った第二王女と第七王女のみ。
だが、第七王女はとある理由でその候補から外されていた。
その理由は持つべき色を持たなかったからだ。
フレイン王国の女王は代々黒髪で赤い目を持って生まれてくる。
だが、第七王女はあろう事かライアック王国の色である白銀を纏って生まれてきたのだ。
生まれた子の名はシルフィール・フレイン・ウェスリー。
白銀の髪と赤い瞳を持って生まれた彼女はすぐに隔離されて存在自体居ないものとして扱われた。
そのシルフィールは15歳の歳を向かえその存在を疎ましく思う第二王女が女王に進言してフレイン王国から追放する形でライアック王国へと人質代わりに送られる事になった。
先の第四王子の命を奪った代償として体の良い厄介払いをしたのだ。
国を捨ててシルフィールは大人しくライアック王国へと送られる事になった。
彼女に従うものなど誰一人としていない。
白銀は疎まれている色だからだ。
だが、一人の侍女だけはシルフィールを幼い頃から友のように付き添ってくれていた。
シルフィールにとって彼女だけが唯一信頼できる友だった。
エマと言う名の侍女はシルフィールと共にライアック王国へと旅立った。フレイン王国と違ってライアック王国は白銀を尊い者として扱っている。
待遇は人質ではあるがきっと悪くは無いだろう。
そう考えていたからこそ受け入れて貰える嬉しさ半面、大いに不安も有りという複雑な気持ちだった。
「シルフィール様、どうやら王都に入る際にはパレードを行って下さるようです。」
「パレード?」
「えぇ、準備はライアック王国がして下さるとの事で、先ほど使者の方が来られました。」
「馬車を止めてまで話をしていたから何かと思ったらそんな事を?」
「良かったですねシルフィール様。いやな雰囲気では有りませんでしたし、きっとこちらの国ならシルフィール様の髪色も受け入れて下さいます。」
「そうだといいけど。」
「それにシルフィール様は美人でいらっしゃいます。きっと殿方も放っては置かないでしょう。」
「そんな事は無いと思うけど。だって私は…。」
シルフィールの手をぎゅっと握ってエマは真剣な表情でシルフィールを見上げた。
「シルフィール様はご自身を卑下しすぎです。自信を持って下さい。」
「エマ……。」
15年もの間シルフィールは城でずっと蔑まれて過ごしてきた。
その為自分に自信が無く王族であるにも関わらずどこか庶民的な考えをもつ少女に育っていた。だが、そんな少女でも王家の血を引く娘。
内から溢れる気品と美しさは姉妹の中でも群を抜いていた。
――――…
王都のとある宿屋で宿泊していたシュラ達一行は浮き足立った王都の様子をどこか他人事のように眺めていた。
「まるでお祭り騒ぎだな。」
シュラの言葉にイワンが外の様子に辟易した表情で応える。
「えぇ。なんでもフレイン王国の王女が来るらしいと大騒ぎですぜ。パレードもやるなんて敵国相手にお優しい事で。」
「イワンはフレイン王国にあんまり良い思いがないですからね。」
「ま、そうは言っても以前は稼ぎになっていたからな。だが、片目を奪われた恨みは消えてねぇ。」
ルイの言葉にイワンは治ったはずの目が疼くのかしきりに目を気にしている。
「でもよく人質なんて出したっすね。」
「そこなんだがよ、どうにもフレイン王国にとっては厄介払いが出来たって感じの扱いらしい。」
「どういうこと?」
オルグが仕入れてきた情報はなんとも詰まらない話だった。
髪の色ひとつでこうも対応が変わるとは…。
シュラはフレイン王国の王女に少しだけ興味を持った。
自分と正反対の髪色で同じ様に冷遇されてきた人物だと知ったからだ。
――――…
とある場所では黒を纏った集団が集会を開いていた。
王都にフレイン王国の王女が来るらしい情報はすでに入手している。
その王女が白銀をもつ女性であることも。
白銀に恨みを持つ漆黒の使徒。
彼らはライアック王国とは関係は無いが白銀を持つ王族であると言う理由だけで襲撃を計画していた。
リーダー格の男が壇上に上がり各々の視線を集める。
「我ら漆黒の同士諸君、よくぞ集まってくれた。聞いての通り、王都でフレイン王国の王女を向かえるパレードが行われる事となった。王女はフレイン王国の女王の血を引きながらも白銀を纏いし者だ。よってその者を我ら漆黒の使徒の手で鉄槌を下す事とした。」
「白銀を持つものに鉄槌を。」
多くの声が上がる中、複数の疑問も飛びかう。
「だが馬車で通るだけの王女に襲撃などできるのか?」
「パレードを行うのだ。窓を開いて顔を見せるに違いない。」
「では、弓か。」
「そうだ。毒矢を使えば良い。」
それぞれの疑問は解決に導かれ、襲撃方法も決まる。
決まった所で再びリーダー格の男が話しを纏めるために声をあげる。
「白銀を持つ王女を討てば我らの同士も少しは溜飲が下がるだろう。」
纏めようとした時にふとした疑問を持つ使徒が声をあげる。
それはこの国に住んでいるからこそ重要な意味を持つ。
「だが、良いのか?フレイン王国と戦争になりかねないぞ。」
「我らにとっては好都合ではないか。フレイン王国は黒を神聖なものとして扱う。我らはこれまでとは違い虐げられることが無くなるのだ。では、準備を行うとしよう。」
「おぉ!!」
集まる者たちの声はひとつに纏まり、想いを後押しする。
計画遂行に必要なもの。
まず漆黒の使徒を名乗る者たちの中で弓に長けたものを選ぶ。
そして数人を王都に潜り込ませて準備を進めるのだ。
彼らは相手が女性であろうと容赦はしない。
虐げられてきた者達にとってそのような理屈は通じないのだ。
彼らは自分たちと同じ境遇である王女であることに気が付かないまま計画を進めている。
パレードが行われる日は目前に迫っていた。
様々な思惑が重なってその日を向かえる彼らは王女を狙うことは正義だと考えて居るのだ。
黒への冒涜だと。
だが、こうして彼らが愚行を犯すのには理由があった。
それは王都から広がった黒への人々の扱いだ。
だが今は目的に向かって前に進む事しか考えて居ない彼らは危険があろうと関係なしに王都へ向かって行った。
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