リトルアルト

まぁさとう

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誰にも止められない

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「アールートーくーん」
 殺意を五文字で表す大会があれば間違いなく優勝出来るような、おぞましい声が聞こえる。
 その声にバルカスも振り返る。そこからの彼の対応は速かった。
「おい、アルト!この殺気、こいつは化けもんだ!リーダーはまだ起きねぇ。騎士団とギルドに報告して協力を要請しろ!それはで俺が相手し、、、」
 ドスッという鈍い音がバルカスの言葉を遮る。
「グッ、、、!!!」
 腹パンを食らったバルカスは地面に転がり悶絶している。
「ったく。馬鹿が!うっさいわね」
ーあぁ、これは殺されるわ。遺言でも考えとこ。
「そんでぇー?アルトくんはうちのリィーちゃんほっといてどこに行ってたってー?」
ーあ、なんも思いつかん。そりゃそうか。記憶ないのに遺言なんて思いつきっこないよな。
「わかった。僕が悪かった。土下座するからせめて苦痛なき死を」
 僕は自分が何をしたのかは全くわからない。だがこんなに怒ってるんだ。きっと相当やらかしたんだろう。
「土下座ぁー?勝手にやっときなさいよ」
 カナがゆっくりと僕に近づいてくる。
「お、おい!ちょっと待てって!これを見ろよ!」
「あぁん?」
 カナが横たわりながら何かを掲げるバルカスの方を振り返る。なにかの書類のようだ。
「ちぃっ!!またそれかよ!王め!いつかぶっ殺してやるわ」
 ひとまず殺気は収まって、俺は死の危機から脱したようだった。

「記憶喪失って一体なんでなのよ?なんか原因があるはずでしょ?」
 カナと僕とバルカスは3人で酒場にいた。ちなみにリーダーは酒場の外で眠っている。
「原因って言ってもなぁ。記憶がないんじゃ原因も分かんないよ」
「でもカナがおっかねぇってことは思い出してたな」
 バルカスが笑いながら言う。
「あんたは私のこと覚えてなさそうだったけどね」
 バルカスの顔から笑顔が消える。
「あれは、その、冗談だっての。あれ?カナさーん。拳なんて握ってどうしちゃったのかなー?」
 顔面に一撃。バルカスはテーブルにうつぶせた。気絶しているようだ。
「まぁいいわ。あんたは馬鹿だから仕方ないし」
 仕方ないなんて微塵も思ってないだろ、とアルトは心の中でツッコミを入れる。

「そんで?アルトくんはどうするの?」
「どうするって?」
「これからに決まってるでしょ。お金はあるんだろうから記憶がもどるまでは家にいたっていいんじゃない?記憶がないことを知ったらガラの悪い連中がアルトくんを騙しに来るかもしれないし」
 その通りだ。だから最初、2人に打ち明ける時も、一瞬悩んだのだ。
「でもやっぱり、引きこもってちゃ記憶が戻らないと思う。記憶が戻るまでの間、ダッシュとバルカスに一緒に行動してもらうことになってる。それで少しずつでも思い出していくよ」
「へぇ。あ、そういえばダッシュはどこ行ったのよ?」
 忘れていた。あいつはカナに見つかることを予測して一人で逃げたのだった。
 もし俺が見つからなければカナはダッシュのところへ行って、俺の居場所を吐かせようとするだろう。だから俺達には伝えず、1人で逃げたってわけだ。
 無駄に計算高いところがムカつく。あいつにはちょっと痛い目にあってもらわないとな。
「ああ、ダッシュなら『鬼ババアの匂いがする。ここは危険だ。さらば!』とか言ってどっか行っちゃったよ」
 酒の入った木の容器の取っ手の部分がバキッと音を鳴らした。
ーあ、これはちょっと可哀想かも
 そう思ったがもう手遅れっぽかった。
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