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魔法講座
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帝国は王国と敵対する大国である。2国間で昔盛んだった交易も、今は完全に途絶えている。戦争は近いだろう。
そのためアルト達は国王から、スパイとして帝国へ潜入するという命を受けていたらしい。
しかし帝国周辺には監視の目がある。
それに引っかからないための登山とのことだった。
登山といってもただの登山ではない。ドラゴンの住む山を登るのだ。だからこそ監視ができない。
ドラゴンは基本夜行性で、昼間は数が少ない。だが、ドラゴンは1体でも中堅冒険者のパーティーを全滅させられるくらいには強力である。死の登山といえた。
その死の登山に選ばれたのは、単純にアルト達のパーティーが、中堅冒険者よりも強いからである。もっといえば、国内の最高戦力である近衛師団とも肩を並べるほどだった。ちなみに師団には15人の団員が所属している。
僕たちは今、定期的に出ている依頼の、街の塀の点検の最中で、街の外周を歩いている。誰の耳も気にせずゆっくりと話せるというのが、この依頼を受けた理由だった。文字通りお荷物のリーダーは宿においてきている。
「まぁ、そうは言ってもリーダーがバカ強ぇってだけだけどな」
バルカスは腕を組みながら言う。
「僕たちは多分師団の団員たちと同じくらいの強さじゃないかな。まぁ戦ってみないとわからないし、相性もあるだろうけどね」
低くそう言ったダッシュの顔はどこか青ざめているようにも見える。きっとカナだ。
「ふぅん。まぁ、バルカスは強そうだから分かるよ。でもさ、俺らはとても戦えるようには見えないんだけど?」
俺は疑問に思ったことを口にする。
「ん?君は魔法のことも覚えてないのかい?じゃあ僕が、1から教えてあげよう!」
ダッシュは勢いよく説明をはじめた。青ざていた顔は元に戻っていた。
「魔法とは自然の理から外れた、特殊な能力のことで、使えるのは僕たち人間と年のいったドラゴン、それに、イノシシやクマが使ったという資料もあったね。でも生まれた時から魔法を使えるのは人間だけなんだ。これはとても興味深いね。その理由については、神の祝福というのが一般的だが、僕は信じていない。証拠がないからね。まぁそれはさておき、生まれつきの魔法というのは持っている人と持っていない人がいる。持っている人は、時間をかけてイメージを練ることで新しい魔法を習得することができるが、持っていない人は一生魔法はつかえないんだ。これもなぜかは解明されてない。魔法という分野は謎が多くて非常に魅力的だ」
言い切ったダッシュはうっとりした顔をしている。
「でもさ、魔法が使える人たちはどうやって自分が魔法が使えるってわかるの?」
僕は首を傾げて尋ねる。
「当然の疑問だね。魔法は感情が高ぶると勝手に発動することがあるんだ。大抵の場合はそれで気づく」
「ふぅん。それで僕たちは魔法が使えるってことでいいんだよね?」
「そうだぜ。アルト、お前の手に火傷の跡があるだろ?」
僕は自分の手に目を落とす。たしかに火傷の跡はくっきりと残っている。
「そりゃー、お前が初めて魔法を使った時にできたもんらしい。お前の生まれつきの魔法は『手で触った物の温度を上げる』ってやつだ」
「へぇ」
俺はちょっと使ってみたくなって近くの木に手を伸ばす。その瞬間、
「おいっ!待てっ!」
ダッシュが慌てて俺を制止する。いきなりの大声に、俺はビクッとして手を止めた。
「ふぅ。危なかった。」
「なにが?なんで止めるの?」
使ってまずいことでもあったのだろうか。この木が大切な神木だったとか?
「わからないのかい?君の魔法は少々厄介でね。人間なんか軽く溶かしてしまう程温度をあげるんだよ。だからもし今君が魔法を使っていたら、きっと今頃君の手はドロドロさ」
なんてゴミ魔法なんだ。
「じゃあ結局僕は、戦えないじゃないか」
「いや、そうでもないぜ。だってアルトは5年かけて『自分に熱に対する完全な耐性を付与する』魔法を身につけたからな。ゴミ魔法が一転、最強の一撃必殺になったってわけだ」
それを先に言って欲しい。
俺はもう一度木に手を伸ばし、目を閉じて集中する。
わかる。魔法の使い方が頭に流れ込んでくる。なんか体験したことの無い、気持ち悪い感覚だ。しかし懐かしくもある。
僕は魔法を発動させた。
僕の手が触れていたあたりが赤く輝く。しかし本当に熱に対する完全な耐性があるようだ。全く熱く感じない。気がつくと木は炎をあげていた。
「あっ、やばっ」
このままではこの一帯の木が焼き尽くされてしまう。
「全く。何をしてるんだい?ちょっとそこどいてくれ」
「お、おう」
アルトは数歩離れる。
「見ていろよ!これが僕の『手から水を発射する』魔法だ!」
そう言ってそこそこの威力で放たれた水は正確に火にあたり、すぐに鎮火された。
「ふぅ」
僕は安心して息をつく。今回はダッシュの魔法に助けられた。便利な魔法だな、と思った。しかし、確かに便利そうなのだが、戦闘に向いていなさそうだ。
「この魔法でどうやって戦うんだ?」
「チッチッ」
人差し指を立てながらそう言ったダッシュは、ニヤッと笑った。
そのためアルト達は国王から、スパイとして帝国へ潜入するという命を受けていたらしい。
しかし帝国周辺には監視の目がある。
それに引っかからないための登山とのことだった。
登山といってもただの登山ではない。ドラゴンの住む山を登るのだ。だからこそ監視ができない。
ドラゴンは基本夜行性で、昼間は数が少ない。だが、ドラゴンは1体でも中堅冒険者のパーティーを全滅させられるくらいには強力である。死の登山といえた。
その死の登山に選ばれたのは、単純にアルト達のパーティーが、中堅冒険者よりも強いからである。もっといえば、国内の最高戦力である近衛師団とも肩を並べるほどだった。ちなみに師団には15人の団員が所属している。
僕たちは今、定期的に出ている依頼の、街の塀の点検の最中で、街の外周を歩いている。誰の耳も気にせずゆっくりと話せるというのが、この依頼を受けた理由だった。文字通りお荷物のリーダーは宿においてきている。
「まぁ、そうは言ってもリーダーがバカ強ぇってだけだけどな」
バルカスは腕を組みながら言う。
「僕たちは多分師団の団員たちと同じくらいの強さじゃないかな。まぁ戦ってみないとわからないし、相性もあるだろうけどね」
低くそう言ったダッシュの顔はどこか青ざめているようにも見える。きっとカナだ。
「ふぅん。まぁ、バルカスは強そうだから分かるよ。でもさ、俺らはとても戦えるようには見えないんだけど?」
俺は疑問に思ったことを口にする。
「ん?君は魔法のことも覚えてないのかい?じゃあ僕が、1から教えてあげよう!」
ダッシュは勢いよく説明をはじめた。青ざていた顔は元に戻っていた。
「魔法とは自然の理から外れた、特殊な能力のことで、使えるのは僕たち人間と年のいったドラゴン、それに、イノシシやクマが使ったという資料もあったね。でも生まれた時から魔法を使えるのは人間だけなんだ。これはとても興味深いね。その理由については、神の祝福というのが一般的だが、僕は信じていない。証拠がないからね。まぁそれはさておき、生まれつきの魔法というのは持っている人と持っていない人がいる。持っている人は、時間をかけてイメージを練ることで新しい魔法を習得することができるが、持っていない人は一生魔法はつかえないんだ。これもなぜかは解明されてない。魔法という分野は謎が多くて非常に魅力的だ」
言い切ったダッシュはうっとりした顔をしている。
「でもさ、魔法が使える人たちはどうやって自分が魔法が使えるってわかるの?」
僕は首を傾げて尋ねる。
「当然の疑問だね。魔法は感情が高ぶると勝手に発動することがあるんだ。大抵の場合はそれで気づく」
「ふぅん。それで僕たちは魔法が使えるってことでいいんだよね?」
「そうだぜ。アルト、お前の手に火傷の跡があるだろ?」
僕は自分の手に目を落とす。たしかに火傷の跡はくっきりと残っている。
「そりゃー、お前が初めて魔法を使った時にできたもんらしい。お前の生まれつきの魔法は『手で触った物の温度を上げる』ってやつだ」
「へぇ」
俺はちょっと使ってみたくなって近くの木に手を伸ばす。その瞬間、
「おいっ!待てっ!」
ダッシュが慌てて俺を制止する。いきなりの大声に、俺はビクッとして手を止めた。
「ふぅ。危なかった。」
「なにが?なんで止めるの?」
使ってまずいことでもあったのだろうか。この木が大切な神木だったとか?
「わからないのかい?君の魔法は少々厄介でね。人間なんか軽く溶かしてしまう程温度をあげるんだよ。だからもし今君が魔法を使っていたら、きっと今頃君の手はドロドロさ」
なんてゴミ魔法なんだ。
「じゃあ結局僕は、戦えないじゃないか」
「いや、そうでもないぜ。だってアルトは5年かけて『自分に熱に対する完全な耐性を付与する』魔法を身につけたからな。ゴミ魔法が一転、最強の一撃必殺になったってわけだ」
それを先に言って欲しい。
俺はもう一度木に手を伸ばし、目を閉じて集中する。
わかる。魔法の使い方が頭に流れ込んでくる。なんか体験したことの無い、気持ち悪い感覚だ。しかし懐かしくもある。
僕は魔法を発動させた。
僕の手が触れていたあたりが赤く輝く。しかし本当に熱に対する完全な耐性があるようだ。全く熱く感じない。気がつくと木は炎をあげていた。
「あっ、やばっ」
このままではこの一帯の木が焼き尽くされてしまう。
「全く。何をしてるんだい?ちょっとそこどいてくれ」
「お、おう」
アルトは数歩離れる。
「見ていろよ!これが僕の『手から水を発射する』魔法だ!」
そう言ってそこそこの威力で放たれた水は正確に火にあたり、すぐに鎮火された。
「ふぅ」
僕は安心して息をつく。今回はダッシュの魔法に助けられた。便利な魔法だな、と思った。しかし、確かに便利そうなのだが、戦闘に向いていなさそうだ。
「この魔法でどうやって戦うんだ?」
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人差し指を立てながらそう言ったダッシュは、ニヤッと笑った。
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