棘バラの口付け

おかだ。

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Past4(ローランド)

episode51

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「お二人ともとても素敵ね!お妃様はとても幸運な方だわ」

「ローランド様もお姿を見せないうちに立派になられたな。男ながら母君に似て美しい」

ローランドの婚約パーティーに招待された諸侯達は、中央の玉座に座るローランドとその妃に選ばれた幸運な貴族の娘を興味津々に見つめていた。

「陛下、大丈夫ですか?」

「・・・ああ、」

肘掛に置いたローランドの腕に花嫁の手が添えられ、俯いていた青年の赤い瞳がちらりと横を向く。

ため息を着くローランドの視線は、ホールに集められた諸侯貴族達の中を探すように彷徨っていた。

「・・・何方か探しておられるのですか?」

「いや、いいんだ」

父王の視線に気づき、逃れるように見慣れない若い娘に苦い愛想笑いを浮かべる。

この披露宴の後には時期新王に気に入られようと媚びへつらう貴族達の相手をしなければならない。



「まあ!今殿下と目が合いましたわ!」

「いいえ!私に微笑んで下さったのよ!」

「お妃様に微笑まれたのよ!仲が良いのね、お似合いだわ」

「ローランド様もまだ政治は初心者。不安だろう、今のうちから御近くでお支え出来たら我が一族も出世できるかも・・・」

「新国王妃の座はあの一族に取られてしまったが、ここで繋がりを持てば二人の弟君のどちらかとならうちの娘も・・・」



このパーティーには実に様々な思惑が交錯する。

耳をそばだてなくとも聞こえる声。
下を向いていても突き刺さる視線。

「きっとお二人のお世継ぎも立派な男の子よ!女の子にしたって百合のように美しいに違いないわ」

同意する賑やかな笑い声がホールに響くと、妃の頬が赤く染る。

隣に座る男がどんなに酷く醜い男だとも知らず。
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