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Past4(ローランド)
episode58
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「・・・ゔっ、、うぅ」
眩しい光と激しい頭痛に小さく呻く。
「おはようございます、ローランド様!いやぁ、目出度いですな!」
薄いレースの天蓋の外にはいつもと変わらない、朝の支度の手伝いをする為に部屋の出入りを許されているメイド、それと豪華な服を纏った男が一人。
「?誰だ、」
重たい体を引き摺るように上半身を起こしたローランドが、天蓋の内側に姿を見せニヤリと笑った男を見上げ、フッと自嘲的な笑みを浮かべた。
「・・・マイヤー枢機卿。・・・ああ、そうか、母上の仕業か」
「いやはや、お察しが良くて助かります。ところで、クラリサ様は?」
「・・・眠っている」
昨夜の急な動悸や、朧気だが隣で眠る少女との行為の断片を思い出し、青年が悔しげに短く舌打ちをする。
ローランドの短い返事に対しそれは良かったと微笑むマイヤー枢機卿は美しいオリヴィアの言いなりだったため、目の前の男の嫌らしい笑みも否定すらしない返事を聞かなくとも一瞬で検討がついた。
「っ、くそ」
「まだ頭も視界もぼうっとするでしょう。身体の痺れもある筈。身体を悪くするといけない、今は大人しく身を任せていれば良い」
まるで子供をあやす様に指輪だらけのマイヤーの手のひらがローランドの柔らかな金髪に触れ、いとおしむ様にすくい上げた髪に唇を寄せる。
「一体何時だ?食事には毒味が着くはず・・・」
ぐにゃぐにゃと歪む視界と酷く痛む頭に顔を顰めたローランドが赤い瞳でマイヤーを睨む。
「何故オリヴィア様が私にこの件をお任せになられたのかお分かりでしょう?」
「・・・」
マイヤー枢機卿はこの披露宴の責任者だ。
「毒味をさせず食事を運ぶことなどどうとでも出来る、という事か」
「ふふふ、ローランド様は聡明ですな。・・・ああ、まあしかし、薬が効かぬと聞いた時は焦った。普通の人間であれば誰彼構わず犬のように腰を振るというのに 」
青年の肩がピクリと震える。
「貴様・・・」
「・・・っと、ああ気に触られたかな。お許し下さい」
青年の手を持ち上げた男が指先に頬を寄せる。
「っ気色の悪い真似を」
「ハハハ、・・・息子の方はさすがに喜ばぬか」
耳元で囁いた男の声に、ローランドの顔が怒りで真っ赤に染る。
「これからは私が御二人の子を作るサポートをさせて頂きます。・・・王にも言われたでしょう、身の振り方を考えろ、と。そのお身体は貴方様の為だけでは無い事を自覚しなさい」
反論しようと口を開くが、気だるさに身体をベッドに沈める。
きっと嫌だと声を上げたところで今更だろう。
どんな主張もこの場所ではただの駄々に過ぎない。
「・・・従えばいいんだろ」
「ええ」
満足気に頷いた男の視線が横になった青年の身体を上から下にゆっくりと降りていき、掛け布団で隠れた腰から下を人知れず想像して嫌らしい笑みを浮かべる。
「クラリサにも、薬を盛ったのか」
「ん?いえ、母体に影響が出るやもしれませんから。それに、クラリサ様には必要ないと判断しましたので」
「・・・っもういい、支度をする。お前は出ていけ」
「承知しました」
背を向けたローランドの肩にマイヤーの手が触れ、しばらくすると部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
「───ん・・・」
寝返りを打ったクラリサの顔がローランドの方へ向く。
ローランドよりも柔らかな、少女の乱れたクリーム色の金髪を青年の指がそっと直す。
耳にかけてやった髪束が眠ったままの少女の唇に落ちるのを赤い瞳がじっと見詰めていた。
眩しい光と激しい頭痛に小さく呻く。
「おはようございます、ローランド様!いやぁ、目出度いですな!」
薄いレースの天蓋の外にはいつもと変わらない、朝の支度の手伝いをする為に部屋の出入りを許されているメイド、それと豪華な服を纏った男が一人。
「?誰だ、」
重たい体を引き摺るように上半身を起こしたローランドが、天蓋の内側に姿を見せニヤリと笑った男を見上げ、フッと自嘲的な笑みを浮かべた。
「・・・マイヤー枢機卿。・・・ああ、そうか、母上の仕業か」
「いやはや、お察しが良くて助かります。ところで、クラリサ様は?」
「・・・眠っている」
昨夜の急な動悸や、朧気だが隣で眠る少女との行為の断片を思い出し、青年が悔しげに短く舌打ちをする。
ローランドの短い返事に対しそれは良かったと微笑むマイヤー枢機卿は美しいオリヴィアの言いなりだったため、目の前の男の嫌らしい笑みも否定すらしない返事を聞かなくとも一瞬で検討がついた。
「っ、くそ」
「まだ頭も視界もぼうっとするでしょう。身体の痺れもある筈。身体を悪くするといけない、今は大人しく身を任せていれば良い」
まるで子供をあやす様に指輪だらけのマイヤーの手のひらがローランドの柔らかな金髪に触れ、いとおしむ様にすくい上げた髪に唇を寄せる。
「一体何時だ?食事には毒味が着くはず・・・」
ぐにゃぐにゃと歪む視界と酷く痛む頭に顔を顰めたローランドが赤い瞳でマイヤーを睨む。
「何故オリヴィア様が私にこの件をお任せになられたのかお分かりでしょう?」
「・・・」
マイヤー枢機卿はこの披露宴の責任者だ。
「毒味をさせず食事を運ぶことなどどうとでも出来る、という事か」
「ふふふ、ローランド様は聡明ですな。・・・ああ、まあしかし、薬が効かぬと聞いた時は焦った。普通の人間であれば誰彼構わず犬のように腰を振るというのに 」
青年の肩がピクリと震える。
「貴様・・・」
「・・・っと、ああ気に触られたかな。お許し下さい」
青年の手を持ち上げた男が指先に頬を寄せる。
「っ気色の悪い真似を」
「ハハハ、・・・息子の方はさすがに喜ばぬか」
耳元で囁いた男の声に、ローランドの顔が怒りで真っ赤に染る。
「これからは私が御二人の子を作るサポートをさせて頂きます。・・・王にも言われたでしょう、身の振り方を考えろ、と。そのお身体は貴方様の為だけでは無い事を自覚しなさい」
反論しようと口を開くが、気だるさに身体をベッドに沈める。
きっと嫌だと声を上げたところで今更だろう。
どんな主張もこの場所ではただの駄々に過ぎない。
「・・・従えばいいんだろ」
「ええ」
満足気に頷いた男の視線が横になった青年の身体を上から下にゆっくりと降りていき、掛け布団で隠れた腰から下を人知れず想像して嫌らしい笑みを浮かべる。
「クラリサにも、薬を盛ったのか」
「ん?いえ、母体に影響が出るやもしれませんから。それに、クラリサ様には必要ないと判断しましたので」
「・・・っもういい、支度をする。お前は出ていけ」
「承知しました」
背を向けたローランドの肩にマイヤーの手が触れ、しばらくすると部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
「───ん・・・」
寝返りを打ったクラリサの顔がローランドの方へ向く。
ローランドよりも柔らかな、少女の乱れたクリーム色の金髪を青年の指がそっと直す。
耳にかけてやった髪束が眠ったままの少女の唇に落ちるのを赤い瞳がじっと見詰めていた。
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