『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

著:蒼月トウカ/文八代目/記:謎の桜風

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6話「冥の影とガラス色の桜 」

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退院後、春の午後。
団地の通路は穏やかな陽射しで照らされ、朋広は原付の鍵を握りながら軽く伸びをする。

しかし、遠くの階段踊り場に、普段見かけない影が揺れていた。
黒羽のような髪に、沈んだ表情――冥(Mei)が立っている。

周囲の空気が少し冷たく、微かに重い。
その心境は嫉妬、裏切り、失恋――誰もが持ち得る闇の感情を桜波長に投影し、団地内の小さな桜の花びらは黒ずみ、しおれ始める。

コンビニの窓越しの光景も、ほんのり影がかかり、普段なら微笑む住民たちの顔も少し曇る。
誰も異変の正体を理解できない。ただ、心が重くなるような微かな違和感だけが漂っていた。

朋広は、団地の廊下で偶然、冥の存在に気づく。
しかし天然鈍感ゆえ、「あれ、誰か倒れてるんか?」と首をかしげるだけ。
その仕草の純粋さに、冥の心境の桜波長は微かに揺れる。

朋広が手を差し伸べ、無意識のまま「大丈夫やで」と声をかけると、
しおれて黒ずんでいた桜は、ガラス色の初期状態に戻り、冥の暗い心境もゆっくり浄化されていく。

周囲の住民の表情も、少しずつ柔らかさを取り戻す。
冥は一歩下がり、まだ微かな悲しみを残しつつも、桜が元の透明な光を取り戻すのを感じた。

――こうして、朋広の天然鈍感で無垢な“人助け”は、日常のささやかな奇跡として作用する。
まだ本人には核や装具の存在、20才姿の真相は視認できないが、桜を通じて世界の異変に微かに関わっていることだけは確かだった。

小さな団地の角、コンビニの窓際、階段の踊り場――そこに見え隠れするシルエットは、読者だけが認識できる世界の繋がりを示す。
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