『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

第17話「午後の光」

退院から数日、福田朋広は団地のベランダで春の日差しに目を細めていた。雨上がりのアスファルトに映る光が、ぼんやりと揺れている。

隣室の伏見美琴が和服姿で洗濯物を干しているのが見えた。軽く手を振ると、彼女はにこりと微笑み、また洗濯に戻る。

廊下を通ると、久世桔梗が郵便受けを確認しながら、短く挨拶を交わす。朋広はそのまま軽く頷き、部屋へ戻る。

胸ポケットのスマホに触れると、画面の桜の光が揺れる。朋広には何の意味か分からない。だが、不思議と落ち着く感覚があった。

窓の外、遠くの建物の影に誰かがいる気配がするような気もする。だが、視線を向けるとそこには誰もいない。

「……今日もええ天気やな……」

静かな午後の光に包まれ、朋広はただ穏やかに日常を過ごす。何かが動いている気配はあっても、彼の生活にはまだ何も影響していない。