『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

著:蒼月トウカ/文八代目/記:謎の桜風

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第31話「持続時間わずかに延長――“最近若返った人”として噂になり始める」

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団地の一階ロビー。
夕方の買い物帰りの奥さんたちが立ち話をしている。

「なぁ、最近……十階の福田さん、ちょっと若返ってへん?」

「やっぱり? うちも昨日エレベーターで会うたとき思てん。なんか、肌ツヤ良かったわ」

「鍛えてはるらしいけど……あれは筋トレの域ちゃうで」

(おばちゃんネットワーク、情報早っ……!)

その近くを、主人公・福田朋広が買い物袋を提げて通りかかる。

「あ、皆さんこんばんは」

奥さんたちはニコニコ笑顔で返す。

「福田さん、最近ホンマお元気やねぇ」

「せやせや。なんかこう……若返ったみたいな? うふふっ」

「はははっ! そら歩いとるからな。運動や運動!」

自信満々に言うが、
その瞬間――背中に“ふわっ”と軽くなる感覚。

実はまた、数秒だけ20才姿になっているのだが、
身長が変わらないので本人はまったく気づかない。

(あ、今また……!)
奥さんたちの表情が一瞬驚きに固まる。

(ちょ、今たぶん2秒ぐらい若返っとったで!?)
(なんなんあれ! どうなっとんの!?)
(いや言えへん……怖いもん……!)

しかし誰も口にしない。

朋広は、ただただ「鍛えた成果」だと思い込み、平然と買い物袋を提げて奥へ歩いていった。


---

■その夜、団地の外階段

監視者が静かに記録していた。

「変身持続時間:前回より+2.4秒。
 自然増加、順調。
 対象は依然として、視認不能・自覚ゼロ」

影のような揺らぎが、雨風に溶けながらつぶやく。

「周囲の反応も、本人の性格により誤魔化し成立。
 このまま成長度合いを観察」

団地の灯りがゆらりと揺れ、
普通の人々の生活のすぐ上で、異常だけが静かに進んでいた。
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