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第33話「初めての“長時間若返り”。本人はただの散歩気分」
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翌朝。
朋広は団地の階段をいつものように上り下りしていた。
「ほいっ、ほいっと……今日は体が軽いなぁ」
たしかに軽かった。
前兆の光はほとんど無く、ふっと気がつけば20才姿になっていた。
本人はまったく気づかない。
むしろ――
「昨日より階段が楽やな。……年取っても鍛えりゃなんとかなるもんやなぁ」
完全に“運動効果”で片づけた。
---
■団地前の小さな公園。
ベンチで休んでいると、散歩中の老夫婦が通りかかる。
「あら……あの人、昨日のおっちゃんにそっくりやけど……息子さん?」
「うーん……でも声まで一緒やな」
朋広「おはようさんです!」
老夫婦「えっ!? 本人!?」
(……若返っとるやん……)
(……どないしたらこうなるん……)
老夫婦は数秒フリーズするが、
朋広が自然体すぎて深く追及できない。
「いや~、毎日歩いとると体が若返るんかねぇ」
(※若返らん)
心の中で老人夫婦が声を揃えてツッコむ。
---
■昼。
20才姿のまま、徒歩で商店街へ。
八百屋のおじさんが目を瞬く。
「おい……福田のおっちゃんやん……」
「どしたん? なんか、えらい若く……」
朋広「最近な、階段ダッシュしとんねん。健康第一や!」
(階段で20代ボディは無理やろ……)
周囲は全員そう思った。
だが、彼の“あまりに自然なノリ”が、
みんなの疑念を 「まあええか」 に上書きしていく。
---
■20才姿の維持時間。
この日は――約30分を突破。
従来よりも明らかに長い。
そして変身解除は、帰り道でふっと。
「おっ、ちょっと膝が重っ……運動しすぎたかな」
本人は、それを“疲れ”と思い込む。
---
■団地の屋上――監視者。
「変身時間:前回比+22分。
前兆:0.8秒 → 実質ほぼ消失。
本人の無自覚特性、依然として強固」
風の中で、監視者の影がわずかに揺れた。
「……この進行速度、やや速い。
新たな波長の接近――予兆あり」
遠く、桜色の気配がひとつ揺れる。
まだ誰も知らないが、
それは次の“感情の波”だった。
朋広は団地の階段をいつものように上り下りしていた。
「ほいっ、ほいっと……今日は体が軽いなぁ」
たしかに軽かった。
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本人はまったく気づかない。
むしろ――
「昨日より階段が楽やな。……年取っても鍛えりゃなんとかなるもんやなぁ」
完全に“運動効果”で片づけた。
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■団地前の小さな公園。
ベンチで休んでいると、散歩中の老夫婦が通りかかる。
「あら……あの人、昨日のおっちゃんにそっくりやけど……息子さん?」
「うーん……でも声まで一緒やな」
朋広「おはようさんです!」
老夫婦「えっ!? 本人!?」
(……若返っとるやん……)
(……どないしたらこうなるん……)
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朋広が自然体すぎて深く追及できない。
「いや~、毎日歩いとると体が若返るんかねぇ」
(※若返らん)
心の中で老人夫婦が声を揃えてツッコむ。
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■昼。
20才姿のまま、徒歩で商店街へ。
八百屋のおじさんが目を瞬く。
「おい……福田のおっちゃんやん……」
「どしたん? なんか、えらい若く……」
朋広「最近な、階段ダッシュしとんねん。健康第一や!」
(階段で20代ボディは無理やろ……)
周囲は全員そう思った。
だが、彼の“あまりに自然なノリ”が、
みんなの疑念を 「まあええか」 に上書きしていく。
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■20才姿の維持時間。
この日は――約30分を突破。
従来よりも明らかに長い。
そして変身解除は、帰り道でふっと。
「おっ、ちょっと膝が重っ……運動しすぎたかな」
本人は、それを“疲れ”と思い込む。
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■団地の屋上――監視者。
「変身時間:前回比+22分。
前兆:0.8秒 → 実質ほぼ消失。
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風の中で、監視者の影がわずかに揺れた。
「……この進行速度、やや速い。
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遠く、桜色の気配がひとつ揺れる。
まだ誰も知らないが、
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