『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

第41話「雨上がりの団地」

翌日の午後、朋広は団地の廊下をゆっくり歩いた。
まだ湿ったアスファルトの匂いが微かに漂う。
昨日の雨は上がり、空は明るい灰色に変わっていた。

十階の廊下では、久世桔梗が郵便受けを整理している。
すれ違うだけで、朋広は自然に会釈する。
「昨日は大変やったな」と桔梗が軽くつぶやき、朋広は「ほんまやな」と返す。

隣の部屋から伏見美琴が和服姿で荷物を持って出てくる。
軽く微笑みながら挨拶をする美琴に、朋広も軽く頷く。

階段踊り場では香椎天音が偶然、降りてくる。
「こんばんは」と小声で挨拶し、朋広は軽く会釈して通り過ぎた。

窓の外では青空が少しずつ広がり、街灯の反射を受けた水たまりが輝く。
雨上がりの団地には、いつも通りの静かな日常が戻っていた。