『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

第51話 「静かに揺れる桜の波紋」

午後の光が団地を包む中、福田朋広はスマホを手に、少し戸惑いながら歩いていた。
20歳姿になった感覚には慣れてきたが、先日の桜環の微細な反応は未だに理解できない。

一方、遠くの観測者――人外の冷静な存在は、その動きを静かに見守っていた。
桜環の微かな鼓動が、通常では捉えられない小さな波紋を周囲に広げていることを、彼らはすぐに感知する。

「…異常は微細だが、確かに増幅している」
冷静に呟くその声には感情はなく、ただ事実を観測するだけ。

その頃、団地内では小さな日常の異変が続いた。
御影紫苑が店先の帳簿をめくると、ペンが勝手に軽く動いたように感じ、思わず手を止める。
鴉谷りつがギターの弦を軽く弾くと、風がふわりと舞い、桜の花びらが舞い込んできた。

誰もはっきりとは気づかない。
しかし、微かな“違和感”として、日常の端々に現れている。

朋広は気づかぬまま、香椎天音と一緒に階段を降りる。
その瞬間、スマホがほんの一瞬光り、桜環の反応が一層強くなる。

――日常に忍び込む微かな異変。
――見えない力が、確実に主人公の周囲に波紋を広げていた。
そして、この小さな揺らぎは、後に大きな変化を呼び込む予兆となる。

桜舞う街角で、静かに、しかし着実に――物語の次のページがめくられ始めていた。