島流し聖女はモフモフと生きていく

こまちゃも

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第七話

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第七話


「シロさん、ピヨさん、ノルさん、ノアさん。一大事です」

ノルさんとノアさんが来てから数日が経ちました。食料調達を兼ねた島の調査も順調に進んでいます。
だがしかし、私はとても重大な事に気が付いてしまったのです。

「ニャ『どうした』?」
「ピヨ、ピ~『何、そんなに大事な事なの』?」
「「キュキュ『なに、なに~』?」
「貴方方‥‥一度もお風呂に入っていませんよね?」
「「「「‥‥」」」」

そう。これは由々しき事態です。
皆さんがお散歩から帰ってくる度に魔法で綺麗にはしていますが、身体を拭いたり洗ったり等しているのは見ていません。
元々野生で生きていたのですから、当然と言えば当然ですが。

「魔法で綺麗になってはいますが、小さな虫は取り除けません」

野生の動物の毛の中に小さな虫が住むと、痒みや病気になると聞いた事があります。
それは人も同じで、路地裏に住んでいた子供を保護した時にもあった。

『風呂‥‥』
『お風呂って、貴族とかが大きな桶にお湯を入れて入るやつよね。まぁ、水浴びみたいな物よ』
『『おふろ~?』』
『水‥‥』

ニャーニャーピヨピヨキュ―キューと話し合いの後、どうやら決まったようです。
お風呂場に向かい、洗濯用の洗い桶をポーチから出します。これなら底も浅く、皆さんが溺れてしまう心配もありません。

「先ずは、シロさんから」

荒めの櫛でシロさんの毛をとかし、少し温めのお湯で全身を濡らします。

「では、まいります」

ポーチから取り出したのは、某貴族令嬢にお願いされて作った動物用石鹸。
研究に三日も掛かってしまいましたが、とても喜ばれた代物です。
きめ細かい泡がシロさんの全身を包み、ほんの僅かな汚れも落としていきます。もちろん虫にも有効で、試験をお願いした犬を洗った後の水は‥‥思い出すとゾワッとします。

「痒い所はございませんか?」
「ニャ『くすぐったいが、問題無い』」

泡が残らないようにしゃわーで洗い流し、洗い桶の中へシロさんを入れます。

「ニャ~『これ、気持ちいいな』」

シロさんは気持ちよさそうに桶の縁に顎を乗せ、目を閉じました。気に入っていただけたようで、安心です。

「ピヨ『次は私よ』!」

鳥を洗うのは初めてですね。準備万端と言わんばかりに羽を広げるピヨさん。石鹸を泡立て、そっと撫でる様に洗っていきます。
洗い終わると、そっと洗い桶の中へ。

「ピヨ~ピ~『気持ちいわぁ‥‥もう、水浴びに戻れないかも』」

大変満足していただいたみたいです。
次は、ノルさんです。櫛を当てると、どこまでも毛に埋もれていきます。少し怖い。

「‥‥濡らしますね」
「キュ~『は~い』」

何と言う事でしょう。モフモフだったノルさんが、ほっそ細になってしまいました!
驚いた‥‥溶けてしまったのかと思った。

「だ、大丈夫、ですか?」

心配になって聞いてみると、可愛らしく首を傾げるノルさん。問題無いらしいです。
無事に洗い終わり、ノルさんも桶の中へ。すると、ノルさんの毛がフワ~っとお湯に広がり、ゆらゆらと揺れています。少しホッとしました。
そしてノアさんも同じように洗い、桶の中へ。

「皆さん、お湯加減はいかがですか?」
「ニャ~」
「ピヨ~」
「「キュ~」」
「ふふふ」

気の抜けたような返事に、思わず笑ってしまいました。
皆さんがお風呂から出た後、タオルと魔法でしっかりと乾かし、広間へと移動。

「少し、手狭ですね」

いや、部屋は十分すぎる程に広いのですが、家具が多い。ソファーや椅子、テーブル等。王城にあってもおかしくない程に豪華なのですが、私一人では持てあましてしまいます。
皆さんが快適に過ごせるように、全て取っ払ってしまいましょうか。

「‥‥これで、よし」

食卓と椅子を残し、他はポーチの中へ収納。そしてフカフカの絨毯を敷き、ここの倉庫に置いてあった大きいクッションを幾つか置いてみました。
貴族の中には「地に座るなど!」と言う方が殆どですが、私はこちらの方が落ち着く気がします。シロさん達も同じなのか、各々寛ぎ始めました。
暫くすると、気持ちよさそうな寝息が聞こえてきました。

「ふぁ‥‥」

何だか私も、眠くなってきました。お昼寝なんて、何年ぶりでしょうか。
空いているクッションに身体を沈めると、あっという間に微睡の中へ。
偶にはこんな日も、良いですね。





朝、シロさん達を起こさないようにそっと身支度を整えて寝室を出る。
今日はいつもより少し早く目が冷めたのか、広間から見える空は紺色を残していた。
コンロに魔力を流し、湯を沸かす。
ポーチから茶葉の入った瓶を取り出すと、残りあと半分と言ったところ。
この島での生活に不便さなど感じた事は無い。いや、今までの生活から考えればここの方が余程快適である。だが、商店に行かなければ買えない物もあるにはある。
差し当たっては、この茶葉か。
この島にある物は皆大きく、初めて見る物の方が多い。
とは言え、気軽に島を出るわけにはいかない。海の上を歩いて行くか‥‥。
お茶を入れ、砂糖とミクの実を一粒カップへ入れて混ぜると、赤茶色に白が混ざる。
そう言えば、ミクの樹も見ていない。筒状の木の実が生り、その実を割ると無数の白い粒が詰まっている。初めて見ると、何とも言えない気持ちになる実だ。

「‥‥寒っ」

カップを持ってテラスに出てみた。
広間の前にはかなり広いテラスが設けられており、手すりは人が座っても軋まない程に頑丈に出来ている。と言うか、最初から人が座る様に作ってあるように見える。
始めてここへ来た時には気付かなかったが、世界樹の向こう側は崖の様になっており、一段下がっている。そのお陰でかなり見晴らしが良く、島の半分が見渡せる。
お茶を一口飲むと、温かさが広がって行く。
空がゆっくりと白み始めたこの時間が好きだ。

「ん?」

黒い何かがこちらに向かって飛んで来ているのが見えた。
鳥にしては大きいが、この島の鳥ならば‥‥いや、鳥じゃない。竜か!
防御壁を張った方が良いか? それとも、部屋の中に戻るか。迷っていたら、竜の上に人影が見えた。

「あれは‥」

竜を飼い慣らす。そんな事ができる国など、一つしか知らない。

「‥‥リットランド王国」

騎竜が許されているのは、王族と騎士団の騎竜隊のみのはず。
見える範囲には一頭だけ。
いつでも動けるように身構えていると、竜は慣れた動きでテラスに降り立った。

「ふ~‥‥やっぱ竜で飛ぶと寒いな‥‥」

乗っていたのは、男だった。風よけのゴーグルと呼ばれる物を着けているから顔はよく分からないが、声の感じからして年は中年から上。隊長か? それならば、一騎でいるはずがない。

「こんな所に子供?」

男は竜から飛び降りると、羽織っていた外套を外して右肩に担いだ。
ガッチリとした体格から、鍛えているのが分かる。だが、騎士特有の身体の傾きが見られない。騎士は常に帯刀しているため、その重さで重心が僅かに左に傾く。
その時、登り始めた日の光を何かが反射して光った。
まさか‥‥何故こんな所に!

「失礼いたしました。リットランド王国国王陛下」

慌てて淑女の礼を取り、頭を下げた。
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