異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百十六話 宴は続く?

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第百十六話 宴は続く?


舞踏会の後、馬車に揺られてクレスのお店まで戻って来た。
元の姿に戻ろうとしたらクレスに止められ、そのまま島へと帰って来た。

「ただいまぁ?」

疑問符が付いたのは、目の前の光景のせいだ。
玄関の扉を開けると、ジロー、アヌリ、エストがタキシードを着て立っていた。

「おかえり~!」

キャロルもドレスを着ている。

「「「「俺と一曲踊ってください」」」」

思わず扉を閉めそうになった。

「ほんっとに大変だったのよぉ」

クレスと舞踏会に行く事が決まった時、皆が大騒ぎだったらしい。
特にうるさかったのはジロー。「ズルい」と。
皆そんなに舞踏会に行きたかったのか。
大騒ぎの結果、クレスは皆のタキシードとドレスを二週間で仕立てたのだそうだ。

「じゃあ・・・クレスで」
「うふふふ、ありがとう」

最初から、クレスと踊る為に習ったんだしね。
クレスの手を取り、玄関から食堂へ。
すると、音楽が聞こえ始めた。ツバキとセバスだ。
食堂の中は綺麗に片付けられている。

「では、お姫様」

背中が痒くなりそうだが、乗ってあげよう。
食堂の真ん中まで進み、音に合わせて踊り始める。

「綺麗だ」

クレスの男口調、久しぶりに聞いた気がする。
真っ直ぐ見つめられ、ちょっとドキッとした。

「ダンスも上手くなった」
「先生が良いからね」
「お褒めに与り、光栄です」

クルリとターンを決めると、ジローに引っ張られた。

「今度は俺だな」
「ジロー、ダンス踊れるの?」
「いや?何とかなるだろ」
「・・・足は踏まないでね」

音楽とは少しズレているものの、楽しそうに踊るジロー。

「その・・・」
「ん?」

こういうダンスって、何故こんなにも近いのか!
ジローが何かを言いかけて止めたせいで、無言で見つめ合う形になってしまった。
次の瞬間、相手がアヌリに変わった。ビックリしたぁ!

「ヒナ様・・・」

あれ?意外と上手い!
ジローと違い、ちゃんとリードしてくれる!

「いつでも足を踏んでください」

そこは普通、踏まないでって言うのでは?いや、アヌリだしなぁ。
これは絶対に踏まないようにしないと!
ふわりと持ち上げられ、優しく下ろされる。

「凄いね!」
「当然です。ヒナ様の神官ですから」
「と、当然かなぁ?」
「はい」

ってか、私の神官って何だ!?

「出来る事なら、練習からお手伝いしたかった・・・」

ダンスの練習はずっとクレスとしていたからね。
こんなに上手いなら、先生にもなれそう。

「思う存分、踏んでいただけたのにぃ」

前言撤回。
踏まれるのが目的の練習って何だ!
思わずアヌリの足を踏みそうになった瞬間、相手がエストに変わった。
次から次へと、皆器用だなぁ。

「随分と久しぶりだから、足を踏んでも怒るなよ?」

エストは元騎士だ。舞踏会にも出た事があるんだろうな。

「ふふ、大丈夫だよ」

少々のぎこちなさを感じるが、私に合わせようとしてくれているのが分かる。
ダンスって意外と、性格が出るもんだね。

「その・・・綺麗だ」
「ありがとう。エストも凄くかっこいいよ」

エストの耳が赤い。
私まで照れる・・・と思ったら、背後からゴスッと衝撃が。

「ヒナしゃま~」

コマだった。

「とってもキレイ~!」
「キュ~!」
「キレイ!」

猫達とクロだった。
しかも、皆タキシード着てる!めっちゃ可愛い!

「「「「「おどってください!」」」」」
「キュ!」

これは、ヤバい。ジローじゃないが、鼻血が出そう。
だがここはグッと我慢!

「よろこんで」

猫達はもちろん、エスト達みたいには踊れない。だが、一緒にクルクルと回ったり、ターンを決めたりと、可愛いし楽しいし!
クロはどことなく恰好つけている様に見えるが、ひたすら可愛いぞ!

「あ、あの・・・僕と、踊ってください」

ノアもタキシード!
差し出された右手を取ると、パアッと笑顔になるノア。
最近はこうして笑ってくれるようになったんだよね。
島に来た当時の様に、酷くうなされる事も少なくなった。
相変わらずの寝相ではあるが・・・。

「は~い!次は私!」

さっきまでセバスと踊っていたキャロルが名乗りを上げた。

「これ、どっちがどっちを踊るの?」
「気にしなぁい!」
「うわぁ!?」

腕を取られ、クルッとターン。

「えへへ」
「もう・・・ふふふ」

ステップも何も、めちゃくちゃ。でも、楽しいから良いか。
それからツバキやセバスとも踊り、ジローとクレスのコンビに笑ったりと、とても楽しい夜を過ごした。

「お、おぉぉぉ・・・」

次の日の朝、名も知らぬ筋肉が叫ぶ。
全身、筋肉痛でバッキバキ!なんとかポーションを飲んで復活。

「貴族って、大変なんだなぁ」

貴族に転生しなくて良かったと、心の底から思いました。





舞踏会から数日後、レッツヴォーグのお城からクレスのお店に手紙が届いた。

「どうしてもお礼がしたいって」

第二王子の「病死」は、隣国アレストロにも届いていた。
大々的に国葬が行われたらしい。

「お礼って言われてもねぇ」

毒の事は口外不可となり、私達のした事は王族と執事のネッツォさんだけが知っている。
公的に残っていない以上、手紙は強制ではないんだが・・・あの優しそうな老夫婦の悲しみを思うと、どうにも断り切れないんだよなぁ。

「しょうがない、行こうか」

でも、馬車は嫌です!
お城に伺う日を連絡して、アレストロ王国から箒でバビュンっと行く事に。

「本当に、これで行くの?」
「馬車より早いし」

恐る恐る、私の後ろに乗るクレス。

「大丈夫、大丈夫!人を乗せるのは初めてだけどね」
「え?ちょ、今」
「はい、しゅっぱ~つ」
「うわぁぁぁぁあ!」

落としても拾えば大丈夫!

「クレス、苦しい」
「あ、ご、ごめん」

相当怖いのか、私にしがみ付き、肩に顔を伏せていた。
人型なので、すっぽりとクレスに包み込まれているような感じだ。

「クレス、見て。綺麗だよ?」

今日はそこまで高く飛んでいない。
馬車での移動が辛かったとセバスに言ったら、箒に迷彩機能を付けてくれた。
本当に、何でも出来る執事ですこと。
小さいラジオと黒い猫のヌイグルミも一緒に着けられそうになったけど・・・なんとか阻止した。

「うぅ・・・わぁ~!」

馬車で移動した時には気付かなかったけど、大きな川が流れていた。
今は丁度、その上を飛んでいる。
水面が太陽の光を反射して、キラキラと光っている様に見える。

「綺麗」
「ね!綺麗でしょう?見ないともったいないよ!」
「・・・ふふ、本当ね」

やっと笑ってくれた。
怖くなくなったみたいで、良かった。
それから暫く空の旅を楽しみ、町の近くの森に降りた。
町に入ると、少し空気が沈んでいる様に感じる。

「本当に、残念ねぇ」
「でも、アレックスおう、じゃなかった。国王陛下がいらっしゃるから、安心ね」

ああ、あの第二王子を悼んでいたのか。

「前国王陛下はどうなさるのかしら?」
「田舎でゆっくりとお過ごしになるとか」

退位したら、お城にいられないのかな?とクレスに聞いてみた。

「そうねぇ。他の国だと、離れた場所に離宮を建てたりするわねぇ。余計な混乱を招いたり、変な派閥が出来たりするから」
「大変だねぇ」

あの家族なら権力争いとか無縁そうだけど、周りがあると・・・って感じか。
ゆっくり過ごしてもらいたいね。

「島は、権力とか関係ないけどねぇ」
「冒険者に鍛冶師、エルフの婆様達に、賢者。時々古龍やら魔王も来るものねぇ」
「改めて考えると、凄い集団だよね」
「凄いと言うより、恐ろしいわね。それに、その中心が大きな猫さんだものね」
「あはははは」

ふと路地裏の方へ目が行くと、猫の姿が見えた。
この前手伝ってくれた子だろうか?
小さく手を振ると、ふいっとそっぽを向いて奥へと走っていってしまった。
うぅ・・・ちょっと寂しい。

「さぁ、着いたわよ」
「はぁい」

はてさて、どうやってお礼を断ろうかなぁ。
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