4 / 13
pin.03「赤色の巣」
しおりを挟む
マスコミ。
野次の声。
恐怖に怯えるそれらの声はいつも以上。
上空は喧しく空を裂く蜂の羽音が喧しく反響している。
一般人の声はどれもが自分の身を案じて白服を詰るか。もしくは、まだ救出されていない子どもの身を案じて宥める白服を問い詰めるか。
当然だが彼らに余裕は全くない。
罵声の中をかい潜り、警備車で待つ白衣の男に駆け寄った。
「シバタ!」
「おっはよーシロハくーん!」
ああ。打って変わって緊張感は欠片も無い。
のんびりと手を振る男に駆け寄った。
「中の様子はどうなってる?」
「先行した部隊班は全滅。後続の班員との連絡もロスト。状況は最悪だね。辛うじてになるけど、君のチームの子達は皆優秀だから、彼らとは問題なく情報共有が出来る筈だよ」
「そうか」
ああ。
この男はこんな顔をするのか。
「本当に地獄だ」
眉根を寄せて頬を引き攣らせ、痛みに耐えている。そんな顔だ。
普段の軽率さも歪んだ性癖も形を潜めた人間味のある苦い表情。
「…ああ」
車に乗り込んでいくシバタを追い掛け、ふと、思い立って足を止めた。
蜂に占拠された学校を見つめる。
曇天に浮かぶ影はその殆どがワーカー。働き蜂だろう。
これだけの数がいるんだ。ならば、校舎内は想像を絶する惨状になっているだろう。
否。そんなことより。
「シロハ君?」
「………」
「ああ‥この学校の生徒さんだっけ‥心配だよね?」
「ああ‥」
あゝ。
今、中で戦う班員は。みんなは無事だろうか。
小学校を痛ましい目で見つめるシロハの視界の片隅で、ふと、横切った影を見つけてギョッと目を剥いた。
「タチバナ!」
「ごめーーん!!」
何故。あの少年が。此処に。
躊躇なく校舎内に飛び込んでいったリッカを追うシロハを引き止めたのはシバタだ。
腕を捕まれて振り向けば、シバタは驚いた顔で首を振る。
「ちょっと何処行くの!?」
「……わかってる‥!」
強い口調で諭され頷く。
眉を寄せて力づくで腕を振り解き、車両に乗り込むとインカムを装着した。
わかりやすく不機嫌にチームメイトを呼び出す。
『なぁに?シロハ?』
ああ。ふんわりと甘い声がインカム越しに耳を撫でる。
その声は焦るシロハのしかし、その声が普段より硬く緊張しているのは気の所為じゃない筈だ。
「‥悪いな‥」
シロハは数回深呼吸し、隊員から送られてくる、もしくは監視カメラ等数々の映像から侵入した高校生を探して切り抜き、共有した。
「一般人の子どもが校内に侵入した。探して、保護してやってくれ」
『うん。わかった』
「……すまん」
『だぁいじょうぶ。ね?』
宥める声はいつもよりか細く弱い。
それでも懸命に平静を装う声に何も言えず、通信を切って頭を抱えた。
「なんやねん‥これ‥」
頭が痛い。
悲鳴、絶叫が更に脳を揺らして酷くなる。
隣を見ればモニターを真剣な目で見つめているシバタと、その助手のセーラー服の横顔があった。
---
アプリが通知するメッセージはまだ止まず妹の無事を知らせてくれているが、校舎内は現実味がまるでない。
まるで悪夢の中。もしくは質の悪い低俗なホラー映画の中にでも迷い込んだようだ。
「ひでぇ‥」
廊下や壁は所々赤く染まりきり、想像も考えたくもない体の一部と思われる肉片がそこら中に転がっている。
それは学校関係者や武装した白服の人間達など、まるで見境がない。
子どもの亡骸が見当たらない事が唯一の救いだろうか。
「…くそ‥」
十数分前に保健室で全部吐いたばかりだ。
だと言うのに、体っぽの胃がぎゅうと痛んで体液がせり上がり、耐え切れずに吐き出した。
喉と胃が焼けて熱い。
無意識に流れた涙を拭って顔を上げた。
「まつり‥」
この中に妹がいる。
学校中、蜂の羽音が止まないこの空間の何処かで隠れている。
一歩。踏み出せばねちゃりと靴裏で血が糸を引くが、血生臭い空気を敢えて吸い込んだ。
「今、兄ちゃんが助けるからな…!」
頬を力任せに叩く。
じんじんと熱を持った頬に若干の涙と後悔をにじませながら制服の白いジャケットを頭から被り、羽の擦れる音に耳を澄まして足早に進んでいく。
この規模で意味があるのかは不明だが黒髪は、攻撃色は隠した方が賢明だろう。
白服が殺されている以上気休め程度もないだろうが。
「実験準備室‥別棟の三階だったか‥?」
呟いて階段を目指して進み、バトンスタンガンを見下ろした。
__はたして、これは使えるだろうか‥
白服の武装は一般市場で出回っている物とは別格らしい。
学校で護身用に配られるそれが静電気程度の電圧しかない電池式に対して、白服の装備はズッシリと重く、太かった。
白服の隊員であるクラスメイト二人はこれを軽々と振り回しているのだろうか。
こんな状況で改めて二人の顔を思い出しながら感心し、羽音を認識して足を止める。
「嘘だろ‥?」
羽音は目指していた階段の上から。
急いで他の階段を探しに踵を返した。
「来るなあああ!!!!!」
「?!」
聞き覚えのある男の絶叫。
悲痛な悲鳴に銃声が重なって、人が階段を転がり落ちたのはその瞬間だ。
思わず見れば階段の下で横たわるのは、やはり、イツキとミサキの二人だった。
テーザー銃を構えるイツキの隣で、ミサキは意識が無いのかぐったりと倒れたまま動かない。そして、蜂は。
「う‥!」
6、7匹はいるだろうか。
テーザー銃は絡まっているし、イツキ自身立ち上がる事も出来ていない。
ケガをしたのか、混乱しているのか。わからないが、まともな状態とは思えなかった。
「うおおおおおああああああああああああ!!!!!!!!」
「!?」
幼馴染の姿に気付けば体が動いている。
スズメバチがイツキを取り囲んでいるのも構わず、威嚇するように大声上げて駆け寄り、イツキを庇う形で滑り込む。
「な、リッカ?!」
驚くイツキに構わずバトンスタンガンのスイッチを入れるが、どういう事か、スタンガンに電圧は流れず。トリガースイッチは空振りするだけだ。
「へ!?嘘だろ!?」
これでは光らないただの棒だ。
「まじかよ!?こんな時に勘弁してくれよお!!?」
目を剥いて何度も叩くが、やはりうんともすんとも言わず、目の前には大顎開けた蜂の頭が迫っている。
「ヒッ‥!」
「リッカ!!これ使え!!!」
命の危機に無我夢中だった。
指先に触れたバトンを握って振り回して殴った瞬間、蜂は頭を潰して焼き切った。
「……へ?」
リッカの足元に落ちるのは頭部を失って痙攣する蜂の亡骸だ。
針を出したまま、羽は出鱈目に床を打って小刻みに振動音を響かせる。
言葉を失った。想像以上に威力が桁外れだ。こんなもの一般人が扱えるわけがない!
「すげえ‥」
「何してんのセンセー!まだ蜂いるじゃん!!」
「うお!」
唐突に背後から腕を引かれて引き倒される。
リッカの顔があった場所ではイツキのスタンガンに噛み付く蜂の大顎があり、それはガチガチと歯を鳴らしていた。
噛み付かれたままのそれに躊躇なく電圧を流し、瞬間、頭が弾け飛ぶ。
そのまま振り上げた放電シャフトは頭上で針を向けていた蜂の腹を抉り、叩き落として焼いた。
「リッカ!!」
「お、おう!!」
思わず呆然としていたリッカはイツキの強い口調に慌てて立ち上がり、背後で隙を見ていた蜂に向かう。そうして、気付けば助けに入ったリッカは逆に救われ、イツキの足元には数匹の蜂の死骸が落ちていた。
「い、イツキ‥!」
「リッカ!お前、なんで此処に居るんだよ!!」
「わ、わるか‥」
「めっちゃ助かった。命拾いした。本当に。お前ひとりで来たのか?!無事でよかったあああ‥ありがとおおお・・!」
「お、おう?」
肩の緊張を解く。
リッカの目の前でふぅと息を吐いて膝をついたイツキを見つめ、結局スイッチの入らなかったスタンガンを見下ろした。
「これ‥」
「ああ、それ、おれらのスタンガンだよね。何処から拾ったか知らないけど、それはこのタグがないとロック外れないよ」
「そう、なのか?」
言われて、改めて見下ろした。
イツキの首に下がるタグには鷹が嘴で銜えたランプが赤く点灯しているが、それはどうやらスタンガンと連動しているらしい。グリップ部のランプも同様に点灯している。
「じゃあ、さっきは‥」
「タグが無かったからね」
見ればイツキのスタンガンは借りた物とは随分形状が異なっている。
拾ったバトンスタンガンは一般的に目にするものと似ているが、イツキのそれは警棒のようだった。
シャフトは鉄で出来ていて、今でこそ冷めてきているが先ほどまで赤く熱を持っていた。
まじまじと見つめるリッカからバトンを取り、こびり付いた虫の体液を振り払って階段下のスタンガンを拾い上げた。
「ほら、これ」
それはイツキと同タイプの鉄のシャフトのスタンガンだが、長さは随分違う。
まるで木刀だ。鉄だけど。
「これって‥?」
「丸腰なんてあまりに無謀すぎる。これを貸すから使って」
「えっ‥でもタグがないと‥」
「これがあれば大丈夫だよ。首に下げてて」
次いで、差し出されたのは二連のドッグタグだった。
慌てて顔を上げるがイツキの首には本人の物だろうタグが残っている。ならば。
「お前‥これ誰の‥」
「絶対に無くさないで。おれの友人の形見だ」
「!」
息を呑む。
そこで漸くミサキに駆け寄り、目を瞠った。
「なっ‥あ‥」
ミサキとはクラスメイトというだけであって、それ以上の付き合いは殆ど無かった。
しかし、彼が白服の中でも優秀な人間である事は同年代の人間なら多くが知っているだろう。
だって、彼は有名人だった。
白服を志す者で彼の事を知らない者など殆ど居ないのだ。
そのミサキが、下半身を全て喰らい尽くされている。
「な、んで?!何があったんだよ、イツキ!!」
驚き。困惑し。狼狽したリッカは焦りのままイツキに掴み掛った。
それをやんわりと押し返して、臆することなくイツキは語る。
「異常事態だ。各教室に数え切れない程の卵と孵化した幼虫。ワーカー‥働き蜂が大量に湧いてる」
「!」
「学校内に乗り込んだ時には殆どの仲間が餌にされたんだ。もう‥何とかして逃げるしかなかったんだよ‥」
「な、んだよ‥それ‥」
「おれが派遣されたのも学校関係者の救出任務と駆除依頼があったからだ。無線も壊れちまって救助がどうなってるかもわからないし‥他の班員も無事かどうか‥」
多勢に無勢。
学校内で生き残っている白服は極僅かだと言う。
頭を殴られた衝撃に視界が明滅するが、ポケットの中で震えたスマホの通知で我に返った。
「で。せんせーは本当に何でこんなところに来たんだよ」
イツキの表情は苦い。
しかし、リッカが開いたアプリのメッセージ履歴に目を開いて食いついた。
「まつりが、まだ学校内に隠れてるんだ」
「う‥っそでしょ‥まつりちゃんまだ避難出来てないの?」
「友達と隠れてるらしい。オレは何とかしてアイツを助けたい」
「………」
イツキとまつりは認識がある。
それこそ、まつりにとってはもう一人の兄のような存在だったんだ。イツキも、そんな思いでいるだろう。
イツキは一度目を閉じ、首を振って向き直った。
「わかった。リッカをここで帰す時間は無いね。おれも一緒に行く。なるべく離れないで」
「すまん。恩に着る」
白服の人間。それも、幼馴染の頼もしさよ。
知らぬ間に緊張していた肩の力を抜いて安堵した。
「こっちだ」
促し、はたと、気付いて足を止める。
「イツキ‥」
「……悪い‥今行くよ」
イツキはミサキの傍に膝を折っていた。
屈み込み、開いたままだった瞼を降ろさせて漸く立ち上がる。
「行こう。まつりちゃんが心配だ」
あゝ。
そうだ。ミサキはイツキのパートナーだったんだ。と。
ミサキのタグを握りしめて、目元を拭うイツキに背中を向けた。
「……借りてくぞ。ミサキ」
殆ど独り言だ。
イツキは一度手を合わせ、それより後は決して振り向く事も無く躊躇なく階段を上がっていく。
踊り場まで登り、リッカを振り向いた。
「今なら行けそうだ。急いで、リッカ」
「お、おう!」
未だ羽音は止まず、校舎の何処かから微かに悲鳴が聞こえてきている。
それは恐らくリッカを先導してくれているイツキの仲間の断末魔なのだろうと察して口を噤んだ。
同時に、自分の行動はイツキを殺すかも知れないのだと漸く理解し、目の前が一度ぐらり。揺れる。
「ごめん、イツキ」
それでも、まつりを助けたい。
メッセージが届く以上妹は生きているんだと自らを奮い立たせて、白いツナギの友人の背中を追い掛けた。
---
「………」
顔を覆う。
長い前髪で隠れたシロハの唇は裂かれてほたりと赤を落とした。
『シロハ』
「すまん。もう、大丈夫や」
予想していた事だった。
いつかは、こんな日が来るんだと理解していた。
しかし、覚悟をしていても余りに痛くて堪らない。
無線の向こうで同じように息を呑み、声を震わせた仲間に掛ける言葉は見つけられなかった。
そんなシロハに声を掛け、背中を叩いたのは只一人、いつもと寸分変わらない甘さを孕んだ声だけだ。
「話した通りや。ミサキの死亡を確認した。イツキはまだ生きてる筈や。誰か探せる人おらん?」
『悪い、リーダー。こっちは手いっぱいだ。今離れたら部隊が全滅するかもしれない』
『私は手が空いたわ。最善を尽くす』
「そうか。お前は?」
『向かった先くらいはわかるかも。今追いかけてるよ』
「わかった。悪いけどなるべく急ぎで頼む」
『だいじょうぶ』
無線の向こうからの悲鳴は止まない。
今、この瞬間も彼らの命は危険に晒されている。
そして、それは自分も同じ事だ。
ごとん、と、天井からの衝撃で車が揺れた。
きっと、外でも同じ事が起きている。
「シバタ。外の様子はどうなってる?」
「ん~‥僕らの仲間が頑張って敷地内に蜂を誘導してるね。少しずつでも数が減ってきている」
「カホ。駆除薬の散布は?」
「必要分が揃うまであと20分は時間が欲しいッス。でも、この敷地全部散布するとなるとやっぱり上空からやるしか‥ヘリもこの蜂の中じゃ跳べないしぃ‥」
「あ、でも、もう上役の会議でヘリの出動が決定したようだよ。今向かってるって」
「は?バカやないの?」
蜂の注意は全て白服が引いている。
敷地内への閉じ込めは今のところ成功しているが、問題は駆除方法だ。
今までの様に数匹ならばともかく、巣を丸ごと全て駆除するとなると時間が掛かる。それもこんな大規模な巣だ。蜂の数も被害も想像を絶していた。
ならば上空からの殺虫剤の散布が有効なのだが。
「ヘリは確実に墜落するねぇ」
「カホ。ヘリの操縦士に繋いで。時間稼ぎする」
「ッス」
似た者同士のマッドサイエンティストの余りにのんきな口調は緊張感がまるでない。
しかし、胸の痛みがほんの僅か和らいだ気がして、感心しそうになった自分を叱咤した。
この二人は別に慰めようとした訳でもないだろう。
だって、こんな状況なのに目が爛々と輝いている。
考えている事はまるわかりだ。
きっと二人の元に急いでいるだろう仲間の無線に繋ぎ、冷淡を取り繕った。
「聞いた通りだ。悪いが、死んでくれ」
あゝ。
こんな命令でも、きっと、奴は笑って頷くのだろう。
案の定インカムの向こうからの動揺はまるでなく、それどころか、あまく吐息で笑って頷くのだ。
『了解したよ、リーダー』
チームメイトの訃報は痛くて堪らない。
なのに、何故、この声は笑うのだろう。
穏やかで甘い声が今はただ恐ろしくて悍ましい。
屋根には再び蜂が落ちて、ごとりと、車を揺らした。
-to be continued-
※次回更新予定10月2日(土)
野次の声。
恐怖に怯えるそれらの声はいつも以上。
上空は喧しく空を裂く蜂の羽音が喧しく反響している。
一般人の声はどれもが自分の身を案じて白服を詰るか。もしくは、まだ救出されていない子どもの身を案じて宥める白服を問い詰めるか。
当然だが彼らに余裕は全くない。
罵声の中をかい潜り、警備車で待つ白衣の男に駆け寄った。
「シバタ!」
「おっはよーシロハくーん!」
ああ。打って変わって緊張感は欠片も無い。
のんびりと手を振る男に駆け寄った。
「中の様子はどうなってる?」
「先行した部隊班は全滅。後続の班員との連絡もロスト。状況は最悪だね。辛うじてになるけど、君のチームの子達は皆優秀だから、彼らとは問題なく情報共有が出来る筈だよ」
「そうか」
ああ。
この男はこんな顔をするのか。
「本当に地獄だ」
眉根を寄せて頬を引き攣らせ、痛みに耐えている。そんな顔だ。
普段の軽率さも歪んだ性癖も形を潜めた人間味のある苦い表情。
「…ああ」
車に乗り込んでいくシバタを追い掛け、ふと、思い立って足を止めた。
蜂に占拠された学校を見つめる。
曇天に浮かぶ影はその殆どがワーカー。働き蜂だろう。
これだけの数がいるんだ。ならば、校舎内は想像を絶する惨状になっているだろう。
否。そんなことより。
「シロハ君?」
「………」
「ああ‥この学校の生徒さんだっけ‥心配だよね?」
「ああ‥」
あゝ。
今、中で戦う班員は。みんなは無事だろうか。
小学校を痛ましい目で見つめるシロハの視界の片隅で、ふと、横切った影を見つけてギョッと目を剥いた。
「タチバナ!」
「ごめーーん!!」
何故。あの少年が。此処に。
躊躇なく校舎内に飛び込んでいったリッカを追うシロハを引き止めたのはシバタだ。
腕を捕まれて振り向けば、シバタは驚いた顔で首を振る。
「ちょっと何処行くの!?」
「……わかってる‥!」
強い口調で諭され頷く。
眉を寄せて力づくで腕を振り解き、車両に乗り込むとインカムを装着した。
わかりやすく不機嫌にチームメイトを呼び出す。
『なぁに?シロハ?』
ああ。ふんわりと甘い声がインカム越しに耳を撫でる。
その声は焦るシロハのしかし、その声が普段より硬く緊張しているのは気の所為じゃない筈だ。
「‥悪いな‥」
シロハは数回深呼吸し、隊員から送られてくる、もしくは監視カメラ等数々の映像から侵入した高校生を探して切り抜き、共有した。
「一般人の子どもが校内に侵入した。探して、保護してやってくれ」
『うん。わかった』
「……すまん」
『だぁいじょうぶ。ね?』
宥める声はいつもよりか細く弱い。
それでも懸命に平静を装う声に何も言えず、通信を切って頭を抱えた。
「なんやねん‥これ‥」
頭が痛い。
悲鳴、絶叫が更に脳を揺らして酷くなる。
隣を見ればモニターを真剣な目で見つめているシバタと、その助手のセーラー服の横顔があった。
---
アプリが通知するメッセージはまだ止まず妹の無事を知らせてくれているが、校舎内は現実味がまるでない。
まるで悪夢の中。もしくは質の悪い低俗なホラー映画の中にでも迷い込んだようだ。
「ひでぇ‥」
廊下や壁は所々赤く染まりきり、想像も考えたくもない体の一部と思われる肉片がそこら中に転がっている。
それは学校関係者や武装した白服の人間達など、まるで見境がない。
子どもの亡骸が見当たらない事が唯一の救いだろうか。
「…くそ‥」
十数分前に保健室で全部吐いたばかりだ。
だと言うのに、体っぽの胃がぎゅうと痛んで体液がせり上がり、耐え切れずに吐き出した。
喉と胃が焼けて熱い。
無意識に流れた涙を拭って顔を上げた。
「まつり‥」
この中に妹がいる。
学校中、蜂の羽音が止まないこの空間の何処かで隠れている。
一歩。踏み出せばねちゃりと靴裏で血が糸を引くが、血生臭い空気を敢えて吸い込んだ。
「今、兄ちゃんが助けるからな…!」
頬を力任せに叩く。
じんじんと熱を持った頬に若干の涙と後悔をにじませながら制服の白いジャケットを頭から被り、羽の擦れる音に耳を澄まして足早に進んでいく。
この規模で意味があるのかは不明だが黒髪は、攻撃色は隠した方が賢明だろう。
白服が殺されている以上気休め程度もないだろうが。
「実験準備室‥別棟の三階だったか‥?」
呟いて階段を目指して進み、バトンスタンガンを見下ろした。
__はたして、これは使えるだろうか‥
白服の武装は一般市場で出回っている物とは別格らしい。
学校で護身用に配られるそれが静電気程度の電圧しかない電池式に対して、白服の装備はズッシリと重く、太かった。
白服の隊員であるクラスメイト二人はこれを軽々と振り回しているのだろうか。
こんな状況で改めて二人の顔を思い出しながら感心し、羽音を認識して足を止める。
「嘘だろ‥?」
羽音は目指していた階段の上から。
急いで他の階段を探しに踵を返した。
「来るなあああ!!!!!」
「?!」
聞き覚えのある男の絶叫。
悲痛な悲鳴に銃声が重なって、人が階段を転がり落ちたのはその瞬間だ。
思わず見れば階段の下で横たわるのは、やはり、イツキとミサキの二人だった。
テーザー銃を構えるイツキの隣で、ミサキは意識が無いのかぐったりと倒れたまま動かない。そして、蜂は。
「う‥!」
6、7匹はいるだろうか。
テーザー銃は絡まっているし、イツキ自身立ち上がる事も出来ていない。
ケガをしたのか、混乱しているのか。わからないが、まともな状態とは思えなかった。
「うおおおおおああああああああああああ!!!!!!!!」
「!?」
幼馴染の姿に気付けば体が動いている。
スズメバチがイツキを取り囲んでいるのも構わず、威嚇するように大声上げて駆け寄り、イツキを庇う形で滑り込む。
「な、リッカ?!」
驚くイツキに構わずバトンスタンガンのスイッチを入れるが、どういう事か、スタンガンに電圧は流れず。トリガースイッチは空振りするだけだ。
「へ!?嘘だろ!?」
これでは光らないただの棒だ。
「まじかよ!?こんな時に勘弁してくれよお!!?」
目を剥いて何度も叩くが、やはりうんともすんとも言わず、目の前には大顎開けた蜂の頭が迫っている。
「ヒッ‥!」
「リッカ!!これ使え!!!」
命の危機に無我夢中だった。
指先に触れたバトンを握って振り回して殴った瞬間、蜂は頭を潰して焼き切った。
「……へ?」
リッカの足元に落ちるのは頭部を失って痙攣する蜂の亡骸だ。
針を出したまま、羽は出鱈目に床を打って小刻みに振動音を響かせる。
言葉を失った。想像以上に威力が桁外れだ。こんなもの一般人が扱えるわけがない!
「すげえ‥」
「何してんのセンセー!まだ蜂いるじゃん!!」
「うお!」
唐突に背後から腕を引かれて引き倒される。
リッカの顔があった場所ではイツキのスタンガンに噛み付く蜂の大顎があり、それはガチガチと歯を鳴らしていた。
噛み付かれたままのそれに躊躇なく電圧を流し、瞬間、頭が弾け飛ぶ。
そのまま振り上げた放電シャフトは頭上で針を向けていた蜂の腹を抉り、叩き落として焼いた。
「リッカ!!」
「お、おう!!」
思わず呆然としていたリッカはイツキの強い口調に慌てて立ち上がり、背後で隙を見ていた蜂に向かう。そうして、気付けば助けに入ったリッカは逆に救われ、イツキの足元には数匹の蜂の死骸が落ちていた。
「い、イツキ‥!」
「リッカ!お前、なんで此処に居るんだよ!!」
「わ、わるか‥」
「めっちゃ助かった。命拾いした。本当に。お前ひとりで来たのか?!無事でよかったあああ‥ありがとおおお・・!」
「お、おう?」
肩の緊張を解く。
リッカの目の前でふぅと息を吐いて膝をついたイツキを見つめ、結局スイッチの入らなかったスタンガンを見下ろした。
「これ‥」
「ああ、それ、おれらのスタンガンだよね。何処から拾ったか知らないけど、それはこのタグがないとロック外れないよ」
「そう、なのか?」
言われて、改めて見下ろした。
イツキの首に下がるタグには鷹が嘴で銜えたランプが赤く点灯しているが、それはどうやらスタンガンと連動しているらしい。グリップ部のランプも同様に点灯している。
「じゃあ、さっきは‥」
「タグが無かったからね」
見ればイツキのスタンガンは借りた物とは随分形状が異なっている。
拾ったバトンスタンガンは一般的に目にするものと似ているが、イツキのそれは警棒のようだった。
シャフトは鉄で出来ていて、今でこそ冷めてきているが先ほどまで赤く熱を持っていた。
まじまじと見つめるリッカからバトンを取り、こびり付いた虫の体液を振り払って階段下のスタンガンを拾い上げた。
「ほら、これ」
それはイツキと同タイプの鉄のシャフトのスタンガンだが、長さは随分違う。
まるで木刀だ。鉄だけど。
「これって‥?」
「丸腰なんてあまりに無謀すぎる。これを貸すから使って」
「えっ‥でもタグがないと‥」
「これがあれば大丈夫だよ。首に下げてて」
次いで、差し出されたのは二連のドッグタグだった。
慌てて顔を上げるがイツキの首には本人の物だろうタグが残っている。ならば。
「お前‥これ誰の‥」
「絶対に無くさないで。おれの友人の形見だ」
「!」
息を呑む。
そこで漸くミサキに駆け寄り、目を瞠った。
「なっ‥あ‥」
ミサキとはクラスメイトというだけであって、それ以上の付き合いは殆ど無かった。
しかし、彼が白服の中でも優秀な人間である事は同年代の人間なら多くが知っているだろう。
だって、彼は有名人だった。
白服を志す者で彼の事を知らない者など殆ど居ないのだ。
そのミサキが、下半身を全て喰らい尽くされている。
「な、んで?!何があったんだよ、イツキ!!」
驚き。困惑し。狼狽したリッカは焦りのままイツキに掴み掛った。
それをやんわりと押し返して、臆することなくイツキは語る。
「異常事態だ。各教室に数え切れない程の卵と孵化した幼虫。ワーカー‥働き蜂が大量に湧いてる」
「!」
「学校内に乗り込んだ時には殆どの仲間が餌にされたんだ。もう‥何とかして逃げるしかなかったんだよ‥」
「な、んだよ‥それ‥」
「おれが派遣されたのも学校関係者の救出任務と駆除依頼があったからだ。無線も壊れちまって救助がどうなってるかもわからないし‥他の班員も無事かどうか‥」
多勢に無勢。
学校内で生き残っている白服は極僅かだと言う。
頭を殴られた衝撃に視界が明滅するが、ポケットの中で震えたスマホの通知で我に返った。
「で。せんせーは本当に何でこんなところに来たんだよ」
イツキの表情は苦い。
しかし、リッカが開いたアプリのメッセージ履歴に目を開いて食いついた。
「まつりが、まだ学校内に隠れてるんだ」
「う‥っそでしょ‥まつりちゃんまだ避難出来てないの?」
「友達と隠れてるらしい。オレは何とかしてアイツを助けたい」
「………」
イツキとまつりは認識がある。
それこそ、まつりにとってはもう一人の兄のような存在だったんだ。イツキも、そんな思いでいるだろう。
イツキは一度目を閉じ、首を振って向き直った。
「わかった。リッカをここで帰す時間は無いね。おれも一緒に行く。なるべく離れないで」
「すまん。恩に着る」
白服の人間。それも、幼馴染の頼もしさよ。
知らぬ間に緊張していた肩の力を抜いて安堵した。
「こっちだ」
促し、はたと、気付いて足を止める。
「イツキ‥」
「……悪い‥今行くよ」
イツキはミサキの傍に膝を折っていた。
屈み込み、開いたままだった瞼を降ろさせて漸く立ち上がる。
「行こう。まつりちゃんが心配だ」
あゝ。
そうだ。ミサキはイツキのパートナーだったんだ。と。
ミサキのタグを握りしめて、目元を拭うイツキに背中を向けた。
「……借りてくぞ。ミサキ」
殆ど独り言だ。
イツキは一度手を合わせ、それより後は決して振り向く事も無く躊躇なく階段を上がっていく。
踊り場まで登り、リッカを振り向いた。
「今なら行けそうだ。急いで、リッカ」
「お、おう!」
未だ羽音は止まず、校舎の何処かから微かに悲鳴が聞こえてきている。
それは恐らくリッカを先導してくれているイツキの仲間の断末魔なのだろうと察して口を噤んだ。
同時に、自分の行動はイツキを殺すかも知れないのだと漸く理解し、目の前が一度ぐらり。揺れる。
「ごめん、イツキ」
それでも、まつりを助けたい。
メッセージが届く以上妹は生きているんだと自らを奮い立たせて、白いツナギの友人の背中を追い掛けた。
---
「………」
顔を覆う。
長い前髪で隠れたシロハの唇は裂かれてほたりと赤を落とした。
『シロハ』
「すまん。もう、大丈夫や」
予想していた事だった。
いつかは、こんな日が来るんだと理解していた。
しかし、覚悟をしていても余りに痛くて堪らない。
無線の向こうで同じように息を呑み、声を震わせた仲間に掛ける言葉は見つけられなかった。
そんなシロハに声を掛け、背中を叩いたのは只一人、いつもと寸分変わらない甘さを孕んだ声だけだ。
「話した通りや。ミサキの死亡を確認した。イツキはまだ生きてる筈や。誰か探せる人おらん?」
『悪い、リーダー。こっちは手いっぱいだ。今離れたら部隊が全滅するかもしれない』
『私は手が空いたわ。最善を尽くす』
「そうか。お前は?」
『向かった先くらいはわかるかも。今追いかけてるよ』
「わかった。悪いけどなるべく急ぎで頼む」
『だいじょうぶ』
無線の向こうからの悲鳴は止まない。
今、この瞬間も彼らの命は危険に晒されている。
そして、それは自分も同じ事だ。
ごとん、と、天井からの衝撃で車が揺れた。
きっと、外でも同じ事が起きている。
「シバタ。外の様子はどうなってる?」
「ん~‥僕らの仲間が頑張って敷地内に蜂を誘導してるね。少しずつでも数が減ってきている」
「カホ。駆除薬の散布は?」
「必要分が揃うまであと20分は時間が欲しいッス。でも、この敷地全部散布するとなるとやっぱり上空からやるしか‥ヘリもこの蜂の中じゃ跳べないしぃ‥」
「あ、でも、もう上役の会議でヘリの出動が決定したようだよ。今向かってるって」
「は?バカやないの?」
蜂の注意は全て白服が引いている。
敷地内への閉じ込めは今のところ成功しているが、問題は駆除方法だ。
今までの様に数匹ならばともかく、巣を丸ごと全て駆除するとなると時間が掛かる。それもこんな大規模な巣だ。蜂の数も被害も想像を絶していた。
ならば上空からの殺虫剤の散布が有効なのだが。
「ヘリは確実に墜落するねぇ」
「カホ。ヘリの操縦士に繋いで。時間稼ぎする」
「ッス」
似た者同士のマッドサイエンティストの余りにのんきな口調は緊張感がまるでない。
しかし、胸の痛みがほんの僅か和らいだ気がして、感心しそうになった自分を叱咤した。
この二人は別に慰めようとした訳でもないだろう。
だって、こんな状況なのに目が爛々と輝いている。
考えている事はまるわかりだ。
きっと二人の元に急いでいるだろう仲間の無線に繋ぎ、冷淡を取り繕った。
「聞いた通りだ。悪いが、死んでくれ」
あゝ。
こんな命令でも、きっと、奴は笑って頷くのだろう。
案の定インカムの向こうからの動揺はまるでなく、それどころか、あまく吐息で笑って頷くのだ。
『了解したよ、リーダー』
チームメイトの訃報は痛くて堪らない。
なのに、何故、この声は笑うのだろう。
穏やかで甘い声が今はただ恐ろしくて悍ましい。
屋根には再び蜂が落ちて、ごとりと、車を揺らした。
-to be continued-
※次回更新予定10月2日(土)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる