推測と仮眠と

六弥太オロア

文字の大きさ
201 / 214
  無を以て追跡と

11.

しおりを挟む
  
「撃たれるようなことっていうと?」

僚稀が言った。

「ドーム内の盗みは、あれの犯人は俺らってことになってただろう。仲間の連絡だけれど、対象者が変わったらしい」

少しずつ歩きを開始する。

「今の対象者は?」

「葬儀屋」

「となるとレブラが疑われる対象になったということ?」

「そうなる。撃たれるのを防ぐためにあらかじめ用意していたっていう可能性もあるだろう」

「おっぱいをですか」

「そうそう防弾チョッキね」






菊壽きくじゅが朝、自分に連絡をよこした時点で、レブラの目的は恩師の美野川嵐道みのかわらんどうを偲ぶことではなく、一族の『金の香炉』だったということになるか?

釆原うねはらは考えた。
徐々に駆け足。






ドームで見た金の香炉。
それを最初に見たのはドームに入って様子を眺めていた時だ。

あの時も葬儀屋が居た。
そいつは定金さだかねの恐れる美野川夫人の脇へ控えていた。
浅黒い肌。

だが夫人を恐れているようには見えなかったし、ドームの外に出る気もなさそうな感じに見えた。

とすれば、『数登すとう』という葬儀屋を自分はまだ見ていないことになる。
今のところ虎目石しか情報がない。






「で、その葬儀屋で外に出ているやつがいないかって、人員を増やして追いかけ始めたらしい」

「つまり僕らが追われる感じになるわけですねー」

菊壽と僚稀。

「レブラの特徴、その他に目立つものはなかったか。おっぱい以外で、何か持っていたとか」

釆原は尋ねた。

「うーん。あ、あれ、追っかけじゃないです?」

「どこ」

「あそこほら」



僚稀が指差す方向を、釆原は双眼鏡で覗いた。
青い色が眼に入る。手首。
釆原はピンと来た。言った。

「ドームに入った時に見た子がいる」



菊壽が釆原から双眼鏡を取った。
そして覗く。
三人は走る。

「渡してきたのは花束だったし、ああそういえば何か包みも持っていたかもしれない」

僚稀が言った。

「レブラが?」

「そう」






前方の集団は十人ほど。
だが徐々に立ち止まったり散り散りになったりしていく。

菊壽はそのうちの一人に話を訊くために立ち止まった。

「あとは追って」

と目くばせ。

釆原と僚稀は走る。
やたら足の速い二人を捉え、追う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...