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無を以て追跡と
17.
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姿勢。あの声。
そう、レブラだ。
今は全く髪型が違うが。
強いて言えば胸、いや体の形まで変えている。と言っていい。
だが面影がある。
そう釆原は思った。
レブラが大穴から数登の方へ振り返る。
その途端に下では大きな声が上がると同時に、何やら乱闘するような騒ぎまで聞こえてきた。
僚稀は釆原に目配せする。
釆原たちが上がってきた階段下、何やら物々しい集団が集まってきているのが分かった。
レブラと数登がこのビルへ入る時に見た装甲車。
そして追って来た一人の捜査員。
今は、捜査員は一人だけではないのだろう。
そしてレブラも一人で来たのではなかったのだろう。
「レブラは香炉目当てだったんじゃないですかやっぱり!」
小声なのに大声を張り上げるように僚稀は言った。
「盗むためにちゃんと準備してきたということだな」
「そうなりますね。盗むっていうより守りなんじゃないですかレブラにしてみれば」
レブラは記者を嫌っていた。
となれば、いま階下にいる奴らは自分たち相手に容赦ないかもしれない。
動けば見つかりそうな距離。
釆原と僚稀は息を詰める。
数登は大穴から、下を見つめているようだ。
釆原たちの方へは向かない。
その手を軽く下に向けて振っている。
釆原と僚稀はポカンとなった。
「残念ですが、あの香炉は本物ではありませんよ」
数登は振り向いた。
「装飾は全て手作業とあなたは云っていましたが、あの型番のものはカタログで何度も取り上げられています。九十九社ではそうなんです。レブラさん」
言って微笑む。
一瞬騒ぎが止んだ。
レブラもポカンとしているように見える。
「あなたの声を聞いてすぐに分かりました。アイドルの方ではないか、と」
「知っていたのか」
数登はかぶりを振る。
「例えばの話ですが、相手の発声方法が腹式に近いものか、それとも喉からなのかということについては、僕にも分かります。その防弾チョッキもまた、音程を上げ下げするのに一役買っていたのかもしれません。今は恐らく本来の音程に戻っているのでしょうがね」
辺りが帯電していくようだ。
止まっていた下の騒ぎが徐々に動き出す。
「レブラという名前はどこで知ったのかと訊いている」
「嵐道さん、少なくとも偲ぶ会に関わっている者なら、分かり得ますよ」
「分からなくていい」
レブラは数登に近づいた。
帯電どころか、その体格まで変わっていくように見えた。
それは俺だけだろうか。
僚稀と目配せする。
騒ぎは広がり、下の階段に身を潜めていた者たちも身を乗り出す。
数登が言った。
「あなたには本当に《守る》という感情がありましたか」
レブラは数登に掴みかかった。
そう、レブラだ。
今は全く髪型が違うが。
強いて言えば胸、いや体の形まで変えている。と言っていい。
だが面影がある。
そう釆原は思った。
レブラが大穴から数登の方へ振り返る。
その途端に下では大きな声が上がると同時に、何やら乱闘するような騒ぎまで聞こえてきた。
僚稀は釆原に目配せする。
釆原たちが上がってきた階段下、何やら物々しい集団が集まってきているのが分かった。
レブラと数登がこのビルへ入る時に見た装甲車。
そして追って来た一人の捜査員。
今は、捜査員は一人だけではないのだろう。
そしてレブラも一人で来たのではなかったのだろう。
「レブラは香炉目当てだったんじゃないですかやっぱり!」
小声なのに大声を張り上げるように僚稀は言った。
「盗むためにちゃんと準備してきたということだな」
「そうなりますね。盗むっていうより守りなんじゃないですかレブラにしてみれば」
レブラは記者を嫌っていた。
となれば、いま階下にいる奴らは自分たち相手に容赦ないかもしれない。
動けば見つかりそうな距離。
釆原と僚稀は息を詰める。
数登は大穴から、下を見つめているようだ。
釆原たちの方へは向かない。
その手を軽く下に向けて振っている。
釆原と僚稀はポカンとなった。
「残念ですが、あの香炉は本物ではありませんよ」
数登は振り向いた。
「装飾は全て手作業とあなたは云っていましたが、あの型番のものはカタログで何度も取り上げられています。九十九社ではそうなんです。レブラさん」
言って微笑む。
一瞬騒ぎが止んだ。
レブラもポカンとしているように見える。
「あなたの声を聞いてすぐに分かりました。アイドルの方ではないか、と」
「知っていたのか」
数登はかぶりを振る。
「例えばの話ですが、相手の発声方法が腹式に近いものか、それとも喉からなのかということについては、僕にも分かります。その防弾チョッキもまた、音程を上げ下げするのに一役買っていたのかもしれません。今は恐らく本来の音程に戻っているのでしょうがね」
辺りが帯電していくようだ。
止まっていた下の騒ぎが徐々に動き出す。
「レブラという名前はどこで知ったのかと訊いている」
「嵐道さん、少なくとも偲ぶ会に関わっている者なら、分かり得ますよ」
「分からなくていい」
レブラは数登に近づいた。
帯電どころか、その体格まで変わっていくように見えた。
それは俺だけだろうか。
僚稀と目配せする。
騒ぎは広がり、下の階段に身を潜めていた者たちも身を乗り出す。
数登が言った。
「あなたには本当に《守る》という感情がありましたか」
レブラは数登に掴みかかった。
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