推測と繋ぎし黒は

貳方オロア

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  青の見ゆるを土より

38.座談

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予想。
全ては予想。
あとは、西耒路サイライジ署の刑事さんがたが明らかにするでしょう。
朝比堂賀アサヒドウガ

告船灯ツガフネアカシ
入海暁一いりうみあきかず
替え玉。
ルート。
薬物。
攪乱。

入海暁一をはじめから、刺すつもりでいた。
とすればどうなる。
一連いちれんの流れ。
安紫あんじ会で起きた抗争から攪乱に至る。
告船は入海を刺すために。
それに則るためだったか。

刺したことに関して。
告船が利用したものはなんだったか。
利用出来るものとして。
上がるのはまず替え玉のことだ。

入海暁一は替え玉だった。
伊豆蔵蒼士いずくらそうじ
若頭わかがしらの替え玉ということ。
そこをまず利用する。






次。
替え玉の件についての情報。
知る者と知らない者が居たということ。
情報として更にもある。
薬物のルートに関すること。
情報については隠すことが大前提。
その情報を知る者と知らない者がた。

情報を上へ上げる部分と隠す部分。
そのかたれた状態を保ちつつ。
自身として必要な情報を、分かたれたままに。
入海の自ら隠す情報を外部へらさず。
更に自分の持っている情報を入海に洩らさず。
入海のルート要員として、自身が組み込まれていたとしても。
告船はそこを利用して行動をした。
あくまで朝比の予想を含むこと。

入海暁一の場合。
自身が替え玉であることを隠す行動を取るだろう。
特にくみの外では気を付けるだろう。
そこもまた利用することが出来る。
先に把握して予測して機会を伺う。
そして鑑識という立場の出来ることもある。

警備の合間を縫った。
そして刺す。






五味田渓介ごみたけいすけ
記者。
その五味田のデスク。
日刊「麒喜きき」。
なんだかんだ日にちが経つ。
刑事たちが明らかにした情報が、徐々におおやけになりつつ。

警察発表だけを記事にするのか?
おおむね記者が叩かれるのは。
警察発表だけを記事にするからだ。
とかいう意見がある。
例えば犯罪者側の素直な声がない。とか。
現場の大変さを全く把握していないだろう。とか。
そういう点での野次やじ文句。

少なくとも、野次文句では個人的な部分までは見えない。
少なくとも、五味田自身は今回の件に関わりがある。
抗争に巻き込まれたという点である。

だから、警察発表だけを記事にしても。
そう言われてもなあ。
事情はこっちにだってあるしなあ。
出来るだけ叩かれたくはない、か。
日刊麒喜として。
しかしまあ載せるにあたる内容の点で。
ちょっと待ったが掛かる場合だってある。
載せたくても載せないこともある。
そうすると。
ただただ簡素にせるしかない枠とかも出てくる。

「簡素になり得ない情報ってのは?」

仁富郁徳にとみいくのりは言った。

五味田のいるあたりに三人溜まる構図。
大体いつものパターン。
いま一人は陳ノ内惇公じんのうちあつきみ
日刊「麒喜」の日中風景。
ニュースが飛び交う合間。
三人が丸く囲む部分だけは。
少し暇な空気が流れている。
時間は仕事に向かって飛んでいく。
てんやわんや。
それ自体に変わりはなく。
今は情報交換というていである。






仁富。

「何か朝比あさひさんからは」

陳ノ内。

「今は刑事のほうがメインなんじゃない? おもてに出ている情報はさ。うちでも大分だいぶ扱っているからね」

「まあね。ただ九十九つくも社さんってのは。個々人を中心に見ていく。というのが今回は特にそうだったようだし。立場立場で行かなかっただろう。立場立場で行くと見えない部分があったんだろうよ」

「あいつら警察じゃないから」

「そう。ただの葬儀屋だし」

仁富はフンと鼻を鳴らして言った。

五味田。

「簡素とか。そういうのとかは、ですね。それとはまた話が別問題になるかもしれませんがね」

仁富。

「何かあるのか」

「流れてくる細かい情報ですね」

五味田。

「そもそも俺ら抗争に巻き込まれてもいます」

「確かに。それはそう。大怪我はこいつだけだった。よかったな」

と仁富。

陳ノ内へ。

「そりゃどうも」

「うん」

「で。告船の件なんですけれど」

と五味田。

仁富。

「刺したってのは認めたんだろう? 入海暁一を」

「そうですね。だからもう犯人扱いで大盛おおもり上がりな」

「だからさ。分かり切った事実なんだから。告船はもういいから。告船周辺の詳しい、細かい情報については今回置いておこう」

「で」

と五味田。

「告船は。力江りきえとかいう遺体が遺棄されていた場所を前もって。知っていたんじゃないかっていうことらしいですが」

「告船はもういい」

「でもこれ。公になっていない情報ですよ。公になっていない情報だからこそ、この場に合うでしょう。仁富さんはそう思いません」

「確かにな」

「そうでしょ」

「で?」

「で」

力江航靖りきえこうせいったのって告船じゃないんだろう」

「そうですね」

洋見仁重なだみとよしげ? 安紫会の。やつも幹部候補だってわれたけれど。今回の件でどうなんだろうね」

「薬物事案の方が色濃いんじゃないか。今」

と陳ノ内。

「それと入海と告船に関する見方。そっちの方が重大事案だろう」

「そうかもしれない。まあ洋見は組員だし。力江航靖は阿麻橘あおきつ組だ。のっけから殺されていた組員ね」

と仁富。

「力江の遺体は河川敷で、頭部だけ山中にあった。だっけ」

五味田。

「そうです。大体そうですね」

「その頭部を遺棄したのも。洋見なの」

と仁富。

五味田。

「恐らくは。そう。ただその辺よく聞いていないので」

「遺棄された場所は。入海暁一の遺体が発見された場所と同じ」

「そう。力江の頭部は山中にて。そんで身体からだの方は河川敷でした」

陳ノ内は口をおさえた。

「あ」

と五味田。

陳ノ内。

五味田。

「ええと。それで、たぶん河川敷で見つかった身体のほうですけれど。そっちはすぐに阿麻橘組に見つかったんでしょうから」

「だが頭部は山中で、大分だいぶあとに見つかった」

と仁富。

「そう。頭部は身体が見つかった後よりも更に後ですね」

「うん。堂賀どうがが現場へ行った」

と陳ノ内。
気を取り直したか。

「九十九社と西耒路署の刑事でね」

「たぶん九十九社の方が非公式でもついて行ったんでしょう。それで、力江の頭部は入海暁一が殺されて、遺棄されていた場所。というか同時に見つかったわけでしょう。ただね」

と五味田はひと呼吸。

「なに」

と仁富。

「ただですね。洋見仁重が安紫会の伊豆蔵蒼士いずくらそうじ。替え玉じゃない方ですよ」

「伊豆蔵蒼士の方ね」

「そう。で、その替え玉でない本当の伊豆蔵蒼士をったのかっていうと。そうではないらしくて」

「らしいって言うけれど」

仁富は椅子の背凭せもたれへり返った。

「お前さ。情報が流れて来たんじゃなくて。情報を取りに行っている感じじゃないの?」

「今回そういう伝手つてが出来ましたからね。いろいろ」

五味田。

「刑事から直接でなくとも、組員に近しい人からの情報とか。いろいろあるわけで」

仁富。

「でも力江と入海の発見場所がおなじってうならさ。洋見はあらかじめ告船のこととか。告船がやったであろう何かの一つでも。予め知っていたんだろうか? あるいは、告船の方から洋見へ伝えていたか」

「告船が入海を本当に遺棄したんなら。そうかもしれない」

と陳ノ内。

五味田。

「あのですね。刑事からは何もいていませんからね」

「分かった」

と仁富。

五味田は姿勢を直す。

「それで。協力関係というか」

と言って。

陳ノ内。

「情報として隠す部分が多かったんだろう」

「ええ。そう」

告船つがふねは。安紫会と関わりがあったってことになるが。そこはまず告船自身で隠す必要があった。洋見なだみは洋見で安紫会の幹部候補だろう。洋見の意思かは分からないが、とにかく洋見が力江を殺ったということは。安紫会側としては伏せていたわけだし」

「自供はしたがな」

と仁富。

陳ノ内。

「洋見が力江を殺ったっていう動機はなんなの」

「薬物のルートに関すること。主には」

「洋見なりにさ。組の薬物ご法度を護りたいとかそんなだった。だが奴は組員だからさ。その方法がな」

と仁富。

「告船が入海を刺した。告船も安紫会の薬物の件と、入海に対して思うところがあった。それが洋見と告船に似通にかよった点だった? のかもね」

「それで協力関係か」

と陳ノ内。

「そう。あるとすればの話だ」

と仁富。

「力江は結局。その《クロコダイル》の薬物ルートに関わって。その薬物で洋見に殺られたっていう展開だな」

「うん」

「しかも。その《クロコダイル》特殊ルートに告船と入海が噛んでいた。伊豆蔵蒼士と入海が合意の元にあったにせよないにせよ。西耒路署と劒物けんもつ大学病院の間に出来ちまった薬物ルートってことになる。かなり大問題だよな」

「西耒路署からみても病院からみても。そうだろうな」

「そうすね」

と五味田。

「でも結局そのルートの存在を今調べているのも。西耒路署なわけで」

「うん」

と仁富。

「で。今はご法度はっとの話になる。安紫会で薬物はご法度だった。クロコダイルは例に漏れないな。薬物の資金源ルートが出来ていたということ自体。安紫会としてもそれは問題だった。更にそれがおもてに出ていなかった。情報としてね」

「そこを利用したんでしょう」

と五味田。

「表に出るはずの問題。それを双方そうほうが双方であっち隠しこっち隠しを繰り返して見えなくなっていた。ならばです。その隠しているという状態を逆に利用して。薬物ルートを食い止める側に使用する。とね。その方法としては殺人になったわけですけれども。幹部候補及び鑑識が殺人に手を染めちまった。でも」

と五味田。

「簡単に考えればですよ。行けばよかったんですよ歯医者に」

「なんで」

と陳ノ内。

五味田。

「歯科あるでしょう。陳ノ内さんの行っている劒物けんもつ大学病院にもくらいあるんじゃないです」

「歯科医がどうとかじゃなくて」

「あの」

と五味田。
姿勢を正して言い始める。

朝比あさひさんが頭蓋骨を掘り起こしたっていう段階で。なんかおかしいぞって思っておけばよかったんです。だって、何かサファイアとか嵌っていたんでしょう?」

「ああ。奥歯のところにはまっていたって」

と仁富。

「サファイアだろう。通常だったら嵌めるような代物しろものじゃあ」

「そう。そうです。通常そんなもの嵌めるのなんていません」

と五味田。

「そんなの嵌めるのは。ほら。同じ」

「同じ?」

刺青いれずみ入れたりする感覚とか。要するに組関係とかじゃないとやらないと思います」

「それだってやる奴は限られるだろうがね。鮫淵さめぶちは入っていたな。刺青」

と仁富。

五味田。

「そうです。だからルートとかなんとかより。頭蓋骨から辿たどれたんじゃないですか?」

「なんで」

「その頭蓋骨は伊豆蔵だったんでしょう。サファイア手術の記録とかです」

「そんな記録あるのかなあ」

「何処で伊豆蔵がサファイアを嵌めたかって真っ先に調べていたら。とすれば歯科医が適当じゃありませんかね」

「そういうのはもっと大工事になるんじゃないか。歯科医より。外科手術か大工とか。俺はよく分からないが」

仁富。

「でもま。入海は告船にられずに、自分から替え玉を辞めていたかもしれない。替え玉だってばれるからな。入海の奥歯を調べれば一発だったかもね」

しばらく

「で」

と五味田。

「改めて時系列に行きます」

陳ノ内と仁富は肯いた。

洋見仁重なだみとよしげが阿麻橘組の力江航靖を殺害。そのあと。伊豆蔵の若頭わかがしらが殺されたってことになります。ただ、いろんな奴らが膜を張っていた。それはさっきも言いました」

「うん」

と陳ノ内。

五味田。

「続けます。今言った時系列じけいれつから言ったらです。洋見は入海が。伊豆蔵の替え玉やっていたってことを知らない時から。告船と協力関係にあったのかもしれない」

「知っていたらさ。抗争が起きる前に。入海は真っ先に洋見に殺られていた可能性もある」

と仁富が補足。

五味田。

「ええ。で」

「うん」

「伊豆蔵が殺されたあと。入海の失踪兼安紫会と阿麻橘組の抗争ですね」

「気になったんだけれど。伊豆蔵を殺ったのは告船なのか」

「いえ。阿麻橘組へ疑いが掛かっているようです。現時点ではね」

「ふむ」

「薬物ルートだけは食い止めたってことになる。今のところはね」

と陳ノ内。

五味田。

「そうなるでしょうね。鮫淵柊翠さめぶちしゅうすいって親分継続なんですか?」

「直接行っていた方が早いんじゃないか」

と仁富。

五味田。

「なんで」

「一回安紫会の事務所にも出向いているわけだし。俺ら」

「実際敷地内に入りましたね」

と五味田。

「監視カメラとかに俺たち映っていましたかね」

「抗争の時に壊れてなければな。可能性はあると思う」

「なら。映像に映っていた戦闘シーンで一応。歓迎されたりするのかな」

五味田は言った。

仁富。

「それはないだろ」

「そうすか」

「だがまあね。だんだん元に戻りつつあると思うよ。抗争の起きる前にな。週刊誌の方はまた親分の方へ熱くなっているから」

と仁富。

陳ノ内と五味田。






皿は出て来ただろうか。
上野あがの焼の皿の五点。
今はまだ調査中という。

皿というのは。
告船が分析して釉薬ゆうやくから。
上野焼と決めた皿のこと。
安紫会の事務所からは、いまだに見つからない。
安紫会にあるのかすらも分からない状態。
それに見つからないとすれば。
そもそも調査する場所が違うのかもしれない。

鮫淵さめぶちは鮫淵で。
趣味の焼物やきものなのだからと。
いろいろはなしかれているという。
そしてあれよあれよと時間が飛んでいき。
一時間、三時間。あるいは翌日。
正式に告船つがふねからの証言が取れていく。
日刊麒喜ききにも情報が来て。
その発表を載せていく。
麒喜はウェブでの情報発行なんかもやっている。
だがこちらは会員制だ。
ので。
告船の証言の発表に関しては無料版ではほぼ分からない。
新聞、雑誌、週刊誌。
西耒路さいらいじ署内でも処分について。

上野焼の皿。

「何かそっちに情報行っているか?」

陳ノ内じんのうち

今日はいている。
午後の時間。
ソファの待合で人はまばら。

隣に朝比堂賀あさひどうが

「いいえ」

と言った。

「告船さんの証言に関しては。入海を刺したことについてですね」

今は整形外科である。

「薬物ルートに関しても。いずれは記事にしていくつもり。入海いりうみ本人も亡くなっているし」

「ええ」

「よくてくれたと思う。ここの病院ではな」

劒物大学病院。
先日来ていた整形外科。

「なるほど」

と朝比。

陳ノ内。

「どう思う」

「何がです」

「今またこうして劒物大学病院には来られているがね」

「忙しくなるのでしょう。西耒路署、そしてこの病院も」

「処分とかそのほかか」

「僕の予想が当たっているとすれば」

「薬物ルートのことで本当に。確証になるものが出たらだ。軸丸じくまるさんにも影響は出るだろうか」

「少なくとも非があるのは入海暁一」

と朝比。

「薬物ルートとなれば。多少影響は出るでしょう。ですが軸丸さんは予想のことも含めて。刑事さんとお話出来る材料をお持ちです」

「仁富の軸丸への評価は酷かったが。チャットだがね。なんでも文面で判断出来る訳じゃないな」

と陳ノ内。

朝比は苦笑した。

「アツがうんですね」

「言うよ。今言った」






整形外科の待合。
入海暁一いりうみあきかずの名前はない。
今回は代わりの先生が担当するというが。
誰が来るのかはランダムなのだそうで。

数人から話を訊いた。
それは訊いたが、入海本人からではないのだ。
死んだ入海から「替え玉」に関することは何も聞いていない。
亡くなっている以上。何も証言を取ることは出来ない。

相手方。
今回診察するであろう医師だ。
俺の診察をするときにどんな表情をするだろう。
そもそも。安紫あんじ会の動きを追ったのが始まりだった。
と陳ノ内は思ったりする。

扉が開いた。
出て来たのは清水之暖しみずゆきはる

朝比は眼をぱちくりした。

「おや奇遇ですね」

と清水。

朝比と陳ノ内。
二人で隣り合っていたが。
その真ん中を開けた。

清水はそこへ腰掛けた。

「その後、どうです」

と陳ノ内。

「いや、署もてんやわんやですよ。告船のこともありますから」

と清水は苦笑。

「忙しいですがね。今日は私も診てもらう日だったもんで」

「奇遇です」

と朝比。

いでしょうか一つ」

と清水。

朝比と陳ノ内は眼をぱちくり。

「告船がったと証言した品物はね。四つではなく三つだということでしてね」

「そんなことおっしゃってしまって大丈夫なんでしょうかね」

と陳ノ内。

清水。

「世間話だと思ってくださいな。あまり盗みに関しては。今回は重要ではなくなりましたから」

「重要でないというか」

と陳ノ内。

かげに隠れちまっただけでしょう」

「そうなりますね。ただ盗みに関して言うなら。世間話程度で出来るということです」

清水は微笑んだ。

「残り一つは扇子だったそうですがね。四つのうちの一つ」

「それはバーチャルアイドルの件で?」

「ええ。そうです。お名前を出すならば。上ノ段七日生うえのだんななせさんですね」

「世間話ですね」

と朝比も微笑む。

清水。

「そう。あなたも関わりがあったでしょうがね。あくまでも個人的な依頼だというのが元々になります。それで。あくまでも三つだったと。告船の関わったのは三つだと」

「なるほど」

と陳ノ内。

「残る一つには関わっていないと」

「そう。扇子に関してです。しかし、上ノ段さんは扇子もなくしたということだった」

「思い込み。でしょうかね」

と陳ノ内。

「ほう」

と朝比。

「単純に。上ノ段さんが扇子をなくしていたと思い込んでいた。そういう可能性もある」

「告船に関しては何も変わらないけれど。上ノ段さんに関しては思い込み。その可能性であるといですがねえ」

と清水。

「ただ扇子せんすは出て来たんだろう」

と陳ノ内。

朝比へ。

「ええ。今度。上ノ段さんご本人にお話を訊くか。あるいは」

と朝比。

「彼女のなくしものは。四つではなく三つだったと。そうならいい」

「そうだな」

と陳ノ内。

名前を呼ばれた。
扉の向こうから声を張り上げている医師。
その声である。

陳ノ内は立ち上がった。
診察室への扉前へ。
朝比も腰を浮かした。
そして再び腰を下ろす。
清水もまだ居る。
陳ノ内は扉を開けて。






《完》
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