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幸一は幼馴染の女の子と夫婦になるようです
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「とりあえずやってほしいことがあるのは君だ、幸一君」
街の奴隷の市場を牛耳っているマフィアたちへの潜入作業であった。
今までのルトの調べで彼らはこの国の奴隷の売買で多額の利益を上げていることが分かった。
なので地方の奴隷市場をつかさどっている商人の夫婦役として潜入し彼らの犯罪を暴いてほしいという事であった。
そしてルトも二人の奴隷役として参加するという事であった。
イレーナがその言葉を聞いてほほを赤らめる。そこに幸一がとある懸念に気づく。
「でもその妻役って誰がやるんだ? イレーナやサラじゃばれるんじゃないか?」
考えてみればそうだ、イレーナはもちろんサラも王国側の人間でそれなりに有名になってしまっている。
なので変装をしてもどこかでばれてしまう可能性がある、そういった恐れを考えたのだがルトはそれについても対策は用意していた。
「悪いけどイレーナとサラには裏方に徹してほしいんだ、幸一君の妻役にはこっちで一人用意させてもらったから──」
「……わかった」
イレーナが口をとがらせて納得する、頭では納得しても彼女の感情がどこか納得しなかった──。
自分ではない誰かが役とはいえ夫婦として過ごすことに──。
そしてマフィアと取引をしている商人の夫婦という形で変装してもらう幸一の妻役をルトが案内しようとする。
「幸一君が一緒に仕事をしてもらうパートナーを紹介するよ、名前は──」
ルトが名前を紹介しようとすると誰かがドアを開けてその声を遮るように叫ぶ。
「幸くーーん、おっ久しぶりー」
明るく陽気な口調、青い肩までかかったセミロングの髪の毛に水色のリボン、クリーム色の帽子をかぶった少女だった。
幸一はもちろん彼女とは初めての出会いである、だが彼女の姿にどこか既視感があり、その正体を何とか思い出そうとする。
(俺の事を知っているようなそぶり、なんとなく会った気がするんだよなぁ……)
狩りの時間、宮殿にいた時、写生の講師、この世界に来てからあらゆる場面の記憶をたどったが彼女の姿は見当たらない。
自分を思い出してくれない幸一に顔を膨らませてどこか悔しそうに彼女が言葉を返す。
「もう~~、私のこと忘れちゃったの? 小学生の時クラス全部一緒だったでしょ!!」
幸一ははっとした表情になり驚愕する。
「ええっ? すると宗谷青葉? お前もこの世界に来ていたの?」
彼女は幸一が小学生の時最後までクラスが同じという因縁があった幼馴染出会った。
彼女によると十五歳のころ突然天使シモンによってこの世界に召喚されたという、以来ホーゼンフェルトの側近として裏社会のスパイとして活躍していたのであった。
青葉は幸一の左側に急接近、そして──。
「私きょうから幸君の彼女~~、やったーー!!」
「い、いや、そういう仕事だからね、本当に付き合ったわけじゃないからね!!」
本当に彼女になった様な言い方に戸惑いながらも突っ込みを入れる幸一。
理由は一つ、なぜなら背後からただならぬ殺気を感じていたからだった。
「こ、こ、幸君? これはどういうことなの?」
殺気満々のオーラを出しながらイレーナが幸一を問い詰める。
するとそれを見た青葉は挑発するような目つきに変わる。
「ふ~~ん、イレーナちゃん。わっかりやす~~い」
表情と言葉一つで青葉がイレーナの幸一に関する気持ちを察する。するとまるで見せびらかすようににやけながら両腕で彼の左腕をぎゅっと握る。
「しょうがないじゃーーん、夫婦って設定なんだからしっかり役になり切らないと敵にばれちゃうんだもーん、ねーダーリン!!」
青葉のあまりにも積極的なアプローチに意表を突かれ言葉を失う幸一、イレーナは顔を真っ赤にして青葉に負けじと幸一の右腕を強く握る。
「私だって負けないもん、幸君!! こんな変な虫に誘惑されちゃダメ!!」
涙目になりながらの反撃、幸一はそれを見てイレーナの必死な表情にドキッとしてしまう。
サラも思わず言葉を失う。
(幸君、すごいハーレム……)
予想外の彼女達のやりとりに苦笑いをするホーゼンフェルト。
「まあ、中は悪くなさそうで何よりだよ──、でも仲良くはしてね……」
「ルト君もちゃんとしきらなきゃだめだよ。みんな、これは真面目な話しなんだからちゃんとしなきゃだめだよ」
サラがオホンと咳をしてこの場を落ち着けさせる。
「それでさ? 夫婦って名乗るわけにはやっぱりそれなりに仲が良いところを演じなきゃいけないじゃない? だからこれから親睦を深めあわない?」
戸惑う幸一をよそに青葉は無視して言葉を進めていく。
「デートにする? クエストにする? それともベット?」
左腕を握っている青葉の言葉を聞き流しながら苦笑いをする。
同時に幸一が一つ疑問を持った。
「そう言えばルトも一緒に行動するって聞いたけどバレたりしないのか?」
幸一が懸念していたこと。それは仮にも王子様であるホーゼンフェルトの正体がばれてしまわないかという事であった。とくにマフィアの幹部クラスが政治家とつながっているというのは幸一の世界でも存在しているパターンであり当然この世界でも想定はしていた。
するとルトは複雑な表情をしだしてそっぽを向いてキョロキョロと視線を泳がせ始める。
ルトに変わって青葉が自信満々に言葉を返し始める。
「それなら心配ないわ、彼は変装に関しては誰にも負けない腕を持っているもの!! ま、実際に見ればわかるわよ!!」
「そ、そう……。わかった、青葉がそう思うなら信用するよ」
街の奴隷の市場を牛耳っているマフィアたちへの潜入作業であった。
今までのルトの調べで彼らはこの国の奴隷の売買で多額の利益を上げていることが分かった。
なので地方の奴隷市場をつかさどっている商人の夫婦役として潜入し彼らの犯罪を暴いてほしいという事であった。
そしてルトも二人の奴隷役として参加するという事であった。
イレーナがその言葉を聞いてほほを赤らめる。そこに幸一がとある懸念に気づく。
「でもその妻役って誰がやるんだ? イレーナやサラじゃばれるんじゃないか?」
考えてみればそうだ、イレーナはもちろんサラも王国側の人間でそれなりに有名になってしまっている。
なので変装をしてもどこかでばれてしまう可能性がある、そういった恐れを考えたのだがルトはそれについても対策は用意していた。
「悪いけどイレーナとサラには裏方に徹してほしいんだ、幸一君の妻役にはこっちで一人用意させてもらったから──」
「……わかった」
イレーナが口をとがらせて納得する、頭では納得しても彼女の感情がどこか納得しなかった──。
自分ではない誰かが役とはいえ夫婦として過ごすことに──。
そしてマフィアと取引をしている商人の夫婦という形で変装してもらう幸一の妻役をルトが案内しようとする。
「幸一君が一緒に仕事をしてもらうパートナーを紹介するよ、名前は──」
ルトが名前を紹介しようとすると誰かがドアを開けてその声を遮るように叫ぶ。
「幸くーーん、おっ久しぶりー」
明るく陽気な口調、青い肩までかかったセミロングの髪の毛に水色のリボン、クリーム色の帽子をかぶった少女だった。
幸一はもちろん彼女とは初めての出会いである、だが彼女の姿にどこか既視感があり、その正体を何とか思い出そうとする。
(俺の事を知っているようなそぶり、なんとなく会った気がするんだよなぁ……)
狩りの時間、宮殿にいた時、写生の講師、この世界に来てからあらゆる場面の記憶をたどったが彼女の姿は見当たらない。
自分を思い出してくれない幸一に顔を膨らませてどこか悔しそうに彼女が言葉を返す。
「もう~~、私のこと忘れちゃったの? 小学生の時クラス全部一緒だったでしょ!!」
幸一ははっとした表情になり驚愕する。
「ええっ? すると宗谷青葉? お前もこの世界に来ていたの?」
彼女は幸一が小学生の時最後までクラスが同じという因縁があった幼馴染出会った。
彼女によると十五歳のころ突然天使シモンによってこの世界に召喚されたという、以来ホーゼンフェルトの側近として裏社会のスパイとして活躍していたのであった。
青葉は幸一の左側に急接近、そして──。
「私きょうから幸君の彼女~~、やったーー!!」
「い、いや、そういう仕事だからね、本当に付き合ったわけじゃないからね!!」
本当に彼女になった様な言い方に戸惑いながらも突っ込みを入れる幸一。
理由は一つ、なぜなら背後からただならぬ殺気を感じていたからだった。
「こ、こ、幸君? これはどういうことなの?」
殺気満々のオーラを出しながらイレーナが幸一を問い詰める。
するとそれを見た青葉は挑発するような目つきに変わる。
「ふ~~ん、イレーナちゃん。わっかりやす~~い」
表情と言葉一つで青葉がイレーナの幸一に関する気持ちを察する。するとまるで見せびらかすようににやけながら両腕で彼の左腕をぎゅっと握る。
「しょうがないじゃーーん、夫婦って設定なんだからしっかり役になり切らないと敵にばれちゃうんだもーん、ねーダーリン!!」
青葉のあまりにも積極的なアプローチに意表を突かれ言葉を失う幸一、イレーナは顔を真っ赤にして青葉に負けじと幸一の右腕を強く握る。
「私だって負けないもん、幸君!! こんな変な虫に誘惑されちゃダメ!!」
涙目になりながらの反撃、幸一はそれを見てイレーナの必死な表情にドキッとしてしまう。
サラも思わず言葉を失う。
(幸君、すごいハーレム……)
予想外の彼女達のやりとりに苦笑いをするホーゼンフェルト。
「まあ、中は悪くなさそうで何よりだよ──、でも仲良くはしてね……」
「ルト君もちゃんとしきらなきゃだめだよ。みんな、これは真面目な話しなんだからちゃんとしなきゃだめだよ」
サラがオホンと咳をしてこの場を落ち着けさせる。
「それでさ? 夫婦って名乗るわけにはやっぱりそれなりに仲が良いところを演じなきゃいけないじゃない? だからこれから親睦を深めあわない?」
戸惑う幸一をよそに青葉は無視して言葉を進めていく。
「デートにする? クエストにする? それともベット?」
左腕を握っている青葉の言葉を聞き流しながら苦笑いをする。
同時に幸一が一つ疑問を持った。
「そう言えばルトも一緒に行動するって聞いたけどバレたりしないのか?」
幸一が懸念していたこと。それは仮にも王子様であるホーゼンフェルトの正体がばれてしまわないかという事であった。とくにマフィアの幹部クラスが政治家とつながっているというのは幸一の世界でも存在しているパターンであり当然この世界でも想定はしていた。
するとルトは複雑な表情をしだしてそっぽを向いてキョロキョロと視線を泳がせ始める。
ルトに変わって青葉が自信満々に言葉を返し始める。
「それなら心配ないわ、彼は変装に関しては誰にも負けない腕を持っているもの!! ま、実際に見ればわかるわよ!!」
「そ、そう……。わかった、青葉がそう思うなら信用するよ」
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