~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
6 / 99

第6話 間一髪、そして再開

しおりを挟む

 これで前線で戦うのは私ひとり。竜二も接近戦ができないわけじゃないけど、このレベルだと一撃でやられると思う。

 竜二はあくまで「ある程度前線で闘える後方の弓使い」。ポリバレントと呼ばれる状況に応じて役割を変えられるタイプ。前線での実力はせいぜいBランク程度。
 打つ手が浮かばず、この場に絶望の雰囲気が漂ってくる。

「俺たちのコンビネーションが全く通用しない」
「どうすればいいのよ……」

 後方にいる竜二と優愛の声が、徐々に怯えていくのがわかる。まずい……私が元気づけないと。リーダーの私がうろたえてたら、2人まで動揺がさらに広まっちゃう。

「大丈夫。私がいるから、絶対勝つから──頑張ろ」

 根拠は言えなかった。それでも、少しでも勇気づけなきゃ。じっとネフィリムもにらんでいると、ネフィリムがパチパチと拍手してきた。

「なかなかの実力だった、そなたたち──ここまでわれに全力を出させたのはあの男以来伽、褒めてつかわす」

 真剣な目つきで、じっとこっちを見ている。褒めてもらったってまったく嬉しくない。
 すごい侮辱された気分。ほとんどダメージ食らってなくて余裕なくせに。

「ありがとう、じゃあ負けてくれるの?」

「それは逆にかわいいそうじゃ。貴様たちの強さに敬意を表し、しっかりと全力の力で倒してやる」

 そして、ネフィリムはその神々しい剣をこっちに向けてきた。剣からは──今まで感じたことがないくらいの魔力。
 この攻撃を止めるすべはない。

 こっちに向かってくる。
 でかい攻撃が来る前に何とかしないと。リスク覚悟で一気に突っ込む。

 私が対応するが、まったく抗しきれない。振り下ろした攻撃を後退しながら受けた瞬間にネフィリムの姿が消えたと思ったら後方から強い衝撃。背後に回られて殴られた?

 吹き飛ぶ身体。後ろにある壁に叩きつけられると、ネフィリムはわたしを無視して竜二と優愛に突っ込んできた。

「やべっ!!」

 慌てて竜二が対応。しかし、ネフィリムの攻撃は彼では受けきれない。何度か攻撃を受けて、ぼろぼろになった竜二の肉体が吹き飛びそのまま倒れこんだ。

 次に優愛へと向かっていく。まずい──優愛は接近戦に関しては素人同然。逃げようと後姿を見せた瞬間に思いっきりけりを入れた。

 優愛の身体はそのまま前方に吹き飛んだ。大きな爆発音を上げて壁にたたきつけられる。まったく意識はない。
 これで私だけ。

 助ける仲間も援護してくれる人もいない。本格的に一人。
 孤独となった私は体がびくびくと震え、恐怖心が芽生えてくる。

 怖い──自然と両手で腕をつかむ。
 現実を直視できなくなって、配信していたスマホのコメントに自然と視線が行く。

 :頑張ったよ璃緒ちゃん
 :死なないで、早く逃げてよ
 :みんな、生きていてほしい。ネフィリム、手加減してくれ

 心の中で「みんなありがとう」とささやいて、涙を流す。なんだかんだ、私たちを慕ってくれたいい人ばかりじゃん。こんな人たちに囲まれて、私は幸せだった。

「さあ、これで最後じゃ。そなたの実力──見事なものじゃったぞ」

 ネフィリムが大きな剣を振り上げる。

「もうだめだ──」

 思わず目をつぶったその時だった。

「させるかぁ」

 誰かが、私とネフィリムの間に入ってきた。
 剣同士がぶつかる大きな音がすると、そっちに視線を向ける。

 彼──さっき最下層に一人でいた配信者君だ。







 すげえギリギリだけど、何とか間に合った。


 ここまで来るのに、かなり苦労してしまった。まず、敵。ドラゴンとかそれなりに強いやつが数匹いたのだが。

「魔法、通じないの?」

 魔法攻撃の通りが悪い。防御が固いタイプかなと思い、接近戦で物理攻撃に切り替えると案外楽に倒せた。

 レベルを上げて物理で殴らなきゃいけないのか。
 そう思いきや、別の全く色が同じドラゴンはなぜか当たり判定がおかしい。

 首や腕を攻撃しても、体に触れた感触がなく素通りしてしまう。何でだと思い胴体に攻撃を当てると普通に切断できた。

 こういう仕様なのか──あとで聞いた方がよさそうだ。
 これ「エンシェントロマン」は苦戦するかもしれない。こいつら、全体的に癖があってその癖を見抜いて弱点を突かないと苦戦する感じだ。しかしエンシェントロマンは違う。良くも悪くも自分の強さに自信を持っていて、自分たちの戦闘スタイルを貫くタイプ。
 ちょっと相性が良くない感じか。


 早く奥へ向かおう。
 ダンジョンを進むにつれて、戦闘音に悲鳴のような音が奥から聞こえてくる。自然と足音が早くなって、地下神殿のような大掛かりな建物に入って奥へ行くとネフィリムが璃緒をぶん殴ろうとしていた。

 見るからにボロボロで、フラフラ。次攻撃を受けたら持たないかもしれないと思い急いで2人のところへ。両足に力を込めて大きく飛んで、2人の間に割って入る。


 間一髪でネフィリムの攻撃を受ける。重い──腕1本でトラック1台を受けるとこんな感じなのかなって思う。

 そして、ネフィリムと視線が合うなりネフィリムがにやりと笑みを浮かべた。俺と会うことを、待ち望んでいたかのように。

「何とか間に合ったか」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...