聖戦記

桂木 京

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第4章:日、出づる国の動乱

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「……承知いたしました。不穏な軍勢について、私も最大限の警戒を払います。アズマ軍とは別行動をとり、有事の際には協力を惜しまないことをお約束いたします。」


一方、アズマ城内。
謁見の間では、シエラとジェイコフがアズマ国王の話を聞いていた。

海域封鎖の理由。
封魔石の存在。
王妃の現状。


アズマ国王は、ヨハネとの会話を思い出し、去り際の彼女の言葉を信じた。


『3つの光。次の謁見希望者にはすべてを話せ。妾も、その光の力となろう。』

その言葉の直後、やってきたのがシエラとジェイコフだった。

2人。
ヨハネの『3つの光』と食い違う現状に少々悩んだアズマだったが、

「もうひとりは別行動をとっております。謁見出来ないことをお許しください。」

そう言うシエラの言葉に、アズマは確信した。


戦友であったジークハルトの娘。
そしてジークハルトに仕えた剣士。
そんなふたりと共に旅する者。

この三人以外に、ヨハネが『光』と言いうる存在がいるだろうか?と。


「……済まぬな。これは国内の問題。本来なら我がアズマ国民で解決せねばならん。だが、国の、妻の命運がかかっている以上、体裁にこだわっている場合ではないのだ。……頼む。我が国を……救ってくれ。」


国王・アズマが来訪者に頭を下げる。
シエラはそんなアズマの前に跪く。ジェイコフもそれに倣った。

「お顔を上げてください。陛下はわが父ジークハルトの戦友。そんな陛下の力にならないなど、考えられませんわ。……そうでしょう、『おじ様』?」


にこりとアズマに微笑むシエラ。
アズマはふぅっと息を吐くと、

「全く……ジークハルトは良い跡継ぎを儲けたようた。あの幼子が、ここまで美しく、そして頼もしく育つとはな。」


ヨハネが言っていた『光』という言葉。
アズマ自身も英雄と呼ばれた身。
自身を超える存在は、顔を見ればわかる。

まとっている『気』でわかるのだ。

少なくとも、目も前にいるシエラからは、その『気』を感じる。

目の前に、世界の平和を担う存在がいるのだ。
だからこそ、アズマは悩む。

(こんな若者に……国の命運など背負わせて良いのか?)

それでも、アズマはシエラを、『光』を纏う存在を信じることを心に決めた。



『信じよ。彼らは光じゃ。そう易々と染まりはせぬよ。そうならぬ様に力を貸すのが、妾達の役目じゃ。』


自信にあふれた戦友が、そう言ったのだから。


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