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第3章 蜜月
34 余韻
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浅葉は時折千尋の顔や体に唇を触れながら、まじまじと見つめてくる。千尋が何となく寝返りを打とうとすると、下半身に湿っぽい感触があった。
(んっ?)
思わず半分上体を起こし、下の方に目をやる。その様子を眺めていた浅葉は、
「これ、必須だな」
と片目をつぶり、千尋の体に踏まれたままになっているバスタオルの角をちょいと持ち上げてみせた。タオル自体もいくらか濡れてはいたが、どうやら自分の体液がさらに湿らせたらしいと千尋は察する。恥ずかしさはすぐに幸福感に塗り潰された。
浅葉はむくりと起き上がると、
「すぐ戻る」
と言ってチュッと短いキスを残し、洗面所へと消えた。
千尋は恍惚の後味を引きずった体をひねり、ゆるりと寝返りを打った。しびれた脳を労わるように目を閉じる。今日初めて体を交えた仲だというのに、最後まで一瞬たりとも痛みや不快感を覚えなかったことはありがたい驚きだった。
よじれたシーツを再び握り締め、思い切り裸体を伸ばす。所在なく枕を抱いていると、洗面所のドアがきいと鳴った。
シャワーを浴びに行ったのかと思いきや、すぐに戻ってきた浅葉の手には、折り畳んだ白いタオルがあった。それを千尋の膝に当ててみせる。熱い湯で絞ってきたらしい。その意図を察した千尋は、照れ隠しにちょっとおどけて言った。
「サービスいいですね」
「当たり前だろ。好きな女にぐらいサービスしなくてどうする」
と、浅葉は無防備に寝そべる千尋の繊細なエリアを拭い始めた。
「ちょっと横向いて」
と言うと、千尋のお尻をちょいと押す。千尋は枕を抱いたまま、横向きになった。浅葉はタオルを折り返し、千尋のお尻から腰辺りまで拭いた。
(ウソ、そんなに……?)
女の体がそんなに濡れるものだとは考えたこともなかった。浅葉マジックに脱帽だ。
浅葉は、洗面所にタオルを片付けたついでにさっとシャワーを浴びたらしい。戻ってくると、千尋の足元に寄った布団を引っ張り上げ、隣に横たわった。実に幸せそうに千尋の頬をつまむ。
千尋は、浅葉の業務用の顔しか知らないままなぜか好きになった自分を表彰したい気分だった。こんなに寛いだ様子の浅葉と、互いの肌に触れながら裸で見つめ合っていることはこの上ない幸福だった。
美しい体に遠慮なく抱き付くと、それ以上に熱烈な抱擁が千尋を包む。浅葉は千尋に触れ続け、ふと胸を捏ね回し始めると、いつまでもそうしていた。その様子がかわいく思えて仕方なく、くすっと笑いながら千尋は聞いてみる。
「おっぱい好き?」
「おっぱいなら何でもいいわけじゃないぞ。お前のはすげー好き」
「ペチャパイでがっかりしませんでした?」
「俺はあんまりでかい胸は好きじゃないんだ。それに体形なんて、服の上から見れば大体わかる。……こっちもね」
と、浅葉は布団の中で千尋の腰の丸みを撫でた。一体いつからそんな目で見られていたのだろう。千尋自身は、全体のバランスから見てお尻が大きすぎると気にしていたが、ウエストがきゅっとくびれているのは母親譲りで、女友達からよく羨ましがられる。
浅葉はいつしかまどろんでいた。千尋は、自分の柔らかいお腹に片腕を預けたまま微かな寝息を立てるこの男が愛しくてならなかった。
(んっ?)
思わず半分上体を起こし、下の方に目をやる。その様子を眺めていた浅葉は、
「これ、必須だな」
と片目をつぶり、千尋の体に踏まれたままになっているバスタオルの角をちょいと持ち上げてみせた。タオル自体もいくらか濡れてはいたが、どうやら自分の体液がさらに湿らせたらしいと千尋は察する。恥ずかしさはすぐに幸福感に塗り潰された。
浅葉はむくりと起き上がると、
「すぐ戻る」
と言ってチュッと短いキスを残し、洗面所へと消えた。
千尋は恍惚の後味を引きずった体をひねり、ゆるりと寝返りを打った。しびれた脳を労わるように目を閉じる。今日初めて体を交えた仲だというのに、最後まで一瞬たりとも痛みや不快感を覚えなかったことはありがたい驚きだった。
よじれたシーツを再び握り締め、思い切り裸体を伸ばす。所在なく枕を抱いていると、洗面所のドアがきいと鳴った。
シャワーを浴びに行ったのかと思いきや、すぐに戻ってきた浅葉の手には、折り畳んだ白いタオルがあった。それを千尋の膝に当ててみせる。熱い湯で絞ってきたらしい。その意図を察した千尋は、照れ隠しにちょっとおどけて言った。
「サービスいいですね」
「当たり前だろ。好きな女にぐらいサービスしなくてどうする」
と、浅葉は無防備に寝そべる千尋の繊細なエリアを拭い始めた。
「ちょっと横向いて」
と言うと、千尋のお尻をちょいと押す。千尋は枕を抱いたまま、横向きになった。浅葉はタオルを折り返し、千尋のお尻から腰辺りまで拭いた。
(ウソ、そんなに……?)
女の体がそんなに濡れるものだとは考えたこともなかった。浅葉マジックに脱帽だ。
浅葉は、洗面所にタオルを片付けたついでにさっとシャワーを浴びたらしい。戻ってくると、千尋の足元に寄った布団を引っ張り上げ、隣に横たわった。実に幸せそうに千尋の頬をつまむ。
千尋は、浅葉の業務用の顔しか知らないままなぜか好きになった自分を表彰したい気分だった。こんなに寛いだ様子の浅葉と、互いの肌に触れながら裸で見つめ合っていることはこの上ない幸福だった。
美しい体に遠慮なく抱き付くと、それ以上に熱烈な抱擁が千尋を包む。浅葉は千尋に触れ続け、ふと胸を捏ね回し始めると、いつまでもそうしていた。その様子がかわいく思えて仕方なく、くすっと笑いながら千尋は聞いてみる。
「おっぱい好き?」
「おっぱいなら何でもいいわけじゃないぞ。お前のはすげー好き」
「ペチャパイでがっかりしませんでした?」
「俺はあんまりでかい胸は好きじゃないんだ。それに体形なんて、服の上から見れば大体わかる。……こっちもね」
と、浅葉は布団の中で千尋の腰の丸みを撫でた。一体いつからそんな目で見られていたのだろう。千尋自身は、全体のバランスから見てお尻が大きすぎると気にしていたが、ウエストがきゅっとくびれているのは母親譲りで、女友達からよく羨ましがられる。
浅葉はいつしかまどろんでいた。千尋は、自分の柔らかいお腹に片腕を預けたまま微かな寝息を立てるこの男が愛しくてならなかった。
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