26 / 80
第2章 大輝にようこそ
26 悦び
しおりを挟む
大輝はいつの間にかゴムをまとっていた。先端で軽くつつきながら言う。
「痛かったら我慢しないでね」
悦子は頷きながら、痛くてもいいです、と叫びそうになっていた。大輝は慎重に前半を入れ、一度後退してからゆっくりとその全長を収めた。
「大丈夫?」
と聞かれ、悦子は頷く。痛みが全くないわけでもないが、どこか麻痺したようになっていた。大輝は様子を見ながらゆっくりと腰を前後させた。目一杯占領される感覚に顔をしかめると、大輝は、
「この辺の方がいいかな」
と言って、比較的浅い部分を先端で擦った。悦子は頷く代わりに悶える。悦子の内側は単独で刺激されることに慣れておらず、それは霧がかかったようなもどかしい心地よさだった。子犬のような甘ったれた鳴き声が漏れ、視界が潤む。大輝の二の腕に触れた五本の指を、思わずその肉に食い込ませていた。
「あぁ~、かわいい。ヤバイなこれは」
そんなことを呟いて上体を擦り寄せてくる大輝に、女としての本能が桃色に染め上げられる。いつしか奥の方が快感に耐えかねて収縮を繰り返し始めると、大輝にも伝わったらしい。
「これはひょっとすると、ひょっとするのか?」
と大輝の低い声。悦子自身もこのまま達してしまいたいと感じていた。大輝によって至らしめられたい、と。しかし、その一部始終を間近で観察されることには若干の恥じらいが残っていた。
「恥ずかしい?」
と聞かれ、素直に頷く。
「そんなこと言われたら、ますます興奮しちゃうじゃん」
大輝は中の動きを維持し、下腹で悦子の外側を擦った。これはてきめんだった。自分でも馴染みのある感覚に近付き、悦子の純粋な欲が全身を支配する。首筋を舐め回す大輝に、
「見せてほしいな、全部」
と囁かれるまでもなく、悦子の奥底に残された原始の部分は羞恥心を上回りつつあった。
それは残酷なまでに緩やかなカーブだった。かつてない長い長い序曲が、徐々に増幅されボリュームを増す。頂上近くをこれほど長く味わったことはない。悦子自身にも覚えのない甲高いソプラノが喉をつく。それを最後に声を失い、限界まで加速した己の呼吸を聞いた。全身が激しく波打つのを止めるだけの理性は残されていなかった。数秒で止まるはずのその感覚が、螺旋を描くように何度も訪れた。そこに至るまでも長くもどかしいプロセスだったが、余韻もまた果てしなかった。一人では達したら終わり。すぐにでも家事に取りかかれるほどなのに、大輝の後は快感の名残がいつまでも疼いた。
悦子がようやく正気を取り戻すと、大輝がその横で満足げに見つめていた。
「やだあ」
と思わず布団に隠れると、
「やだあ」
と大輝まで真似して潜ってくる。全てを見られてしまった恥ずかしさが、この上ない幸福感にあっけなく凌駕された。目が合うと抱き締められ、おいしいキスをたっぷりと振る舞われた。
(なんか不思議。彼氏でもない人とこんなことしてるなんて……)
快楽に酔いしれる一方で、悦子には幾許かの罪悪感があった。と同時に、こんな親密な営みを大勢と行うという感覚が理解できなかった。
「ねえ、たくさんの人と、その……体験、してるとさ、やっぱり、比べちゃったりする?」
「あ、出た。正直に答えたら怒られるパターンだ、これ」
「怒らないってば。ただ、純粋に興味あって」
「八百屋にみかんが三種類あったらね。どれがおいしいかな、安いかなって比べて買うっしょ。一種類選んで一袋買って帰ったら、食べながら、あ、さっきの方が甘かったなあって、また比べるじゃん。それはもうやむを得ないというか、人類の必然だよね」
「ふーん。じゃあ、一番いい人から一番ダメな人まで、ランキングがあったり?」
大輝は喉の奥で笑った。
「人はみかんよりは複雑。まあ、比べてる以上、それなりに結論があるのは確かだけど」
「それでも一人に決まってしまわないのは……つまり、それぞれに良さがあるってこと?」
「そうだね」
「どの辺がポイントなの? 顔? 体型? 運動神経? それとも……知識とか経験?」
「まあ、全部っちゃ全部だけど。俺が個人的に一番重視しちゃうのは……積極的に楽しんでくれるかどうか。あと、妙なプロっぽさがない人の方がいいかな」
それなら私も入れそう、と悦子は思った。
「それから……突然難しい質問を振ってくる人。もう、たまんない」
そう言うと大輝は再び唇を押し付け、悦子にたっぷりと恋人気分を味わわせた。
「痛かったら我慢しないでね」
悦子は頷きながら、痛くてもいいです、と叫びそうになっていた。大輝は慎重に前半を入れ、一度後退してからゆっくりとその全長を収めた。
「大丈夫?」
と聞かれ、悦子は頷く。痛みが全くないわけでもないが、どこか麻痺したようになっていた。大輝は様子を見ながらゆっくりと腰を前後させた。目一杯占領される感覚に顔をしかめると、大輝は、
「この辺の方がいいかな」
と言って、比較的浅い部分を先端で擦った。悦子は頷く代わりに悶える。悦子の内側は単独で刺激されることに慣れておらず、それは霧がかかったようなもどかしい心地よさだった。子犬のような甘ったれた鳴き声が漏れ、視界が潤む。大輝の二の腕に触れた五本の指を、思わずその肉に食い込ませていた。
「あぁ~、かわいい。ヤバイなこれは」
そんなことを呟いて上体を擦り寄せてくる大輝に、女としての本能が桃色に染め上げられる。いつしか奥の方が快感に耐えかねて収縮を繰り返し始めると、大輝にも伝わったらしい。
「これはひょっとすると、ひょっとするのか?」
と大輝の低い声。悦子自身もこのまま達してしまいたいと感じていた。大輝によって至らしめられたい、と。しかし、その一部始終を間近で観察されることには若干の恥じらいが残っていた。
「恥ずかしい?」
と聞かれ、素直に頷く。
「そんなこと言われたら、ますます興奮しちゃうじゃん」
大輝は中の動きを維持し、下腹で悦子の外側を擦った。これはてきめんだった。自分でも馴染みのある感覚に近付き、悦子の純粋な欲が全身を支配する。首筋を舐め回す大輝に、
「見せてほしいな、全部」
と囁かれるまでもなく、悦子の奥底に残された原始の部分は羞恥心を上回りつつあった。
それは残酷なまでに緩やかなカーブだった。かつてない長い長い序曲が、徐々に増幅されボリュームを増す。頂上近くをこれほど長く味わったことはない。悦子自身にも覚えのない甲高いソプラノが喉をつく。それを最後に声を失い、限界まで加速した己の呼吸を聞いた。全身が激しく波打つのを止めるだけの理性は残されていなかった。数秒で止まるはずのその感覚が、螺旋を描くように何度も訪れた。そこに至るまでも長くもどかしいプロセスだったが、余韻もまた果てしなかった。一人では達したら終わり。すぐにでも家事に取りかかれるほどなのに、大輝の後は快感の名残がいつまでも疼いた。
悦子がようやく正気を取り戻すと、大輝がその横で満足げに見つめていた。
「やだあ」
と思わず布団に隠れると、
「やだあ」
と大輝まで真似して潜ってくる。全てを見られてしまった恥ずかしさが、この上ない幸福感にあっけなく凌駕された。目が合うと抱き締められ、おいしいキスをたっぷりと振る舞われた。
(なんか不思議。彼氏でもない人とこんなことしてるなんて……)
快楽に酔いしれる一方で、悦子には幾許かの罪悪感があった。と同時に、こんな親密な営みを大勢と行うという感覚が理解できなかった。
「ねえ、たくさんの人と、その……体験、してるとさ、やっぱり、比べちゃったりする?」
「あ、出た。正直に答えたら怒られるパターンだ、これ」
「怒らないってば。ただ、純粋に興味あって」
「八百屋にみかんが三種類あったらね。どれがおいしいかな、安いかなって比べて買うっしょ。一種類選んで一袋買って帰ったら、食べながら、あ、さっきの方が甘かったなあって、また比べるじゃん。それはもうやむを得ないというか、人類の必然だよね」
「ふーん。じゃあ、一番いい人から一番ダメな人まで、ランキングがあったり?」
大輝は喉の奥で笑った。
「人はみかんよりは複雑。まあ、比べてる以上、それなりに結論があるのは確かだけど」
「それでも一人に決まってしまわないのは……つまり、それぞれに良さがあるってこと?」
「そうだね」
「どの辺がポイントなの? 顔? 体型? 運動神経? それとも……知識とか経験?」
「まあ、全部っちゃ全部だけど。俺が個人的に一番重視しちゃうのは……積極的に楽しんでくれるかどうか。あと、妙なプロっぽさがない人の方がいいかな」
それなら私も入れそう、と悦子は思った。
「それから……突然難しい質問を振ってくる人。もう、たまんない」
そう言うと大輝は再び唇を押し付け、悦子にたっぷりと恋人気分を味わわせた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる