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第4章 俺のライバル
50 不機嫌
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実家で週末を過ごした後、翌月曜日の夜八時過ぎに、大輝から電話があった。
「今日、どう?」
唐突だった。いつも以上に。
「あ、うん、いいよ。こないだは、ごめんね。ライブの日。お母さん待ってたし……」
「あのさ、予め断っときたいんだけど、今日ちょっと手短に済まさしてもらっていいかな」
「……え?」
「正直言うと、あんまり機嫌が良くない」
「……どうして?」
大輝はそれには答えなかった。自分のせいだろうかと悦子は不安を募らせたが、まさか乱暴なことをされるわけではないだろうし、いざとなれば例のルールがある。
「うちで待ってる。タクっていいよ。俺が出すから」
どの程度機嫌が悪いのかは声を聞いただけではわからないが、手っ取り早くやらせろ、とでもいうつもりなら、タクシー代ぐらいは慰謝料としてもらっておいていいような気がした。ドライバーに告げるべき住所を確認して電話を切ると、悦子は自宅前までタクシーを呼び、急いでシャワーを浴びた。
大輝の家まで一人で行くのは初めてだ。部屋番号を確認して呼び鈴を押すと、すぐにドアが開く。白のTシャツに下は黒のスウェットという姿の大輝が無言で出迎えた。
「お待たせ」
と悦子が微笑むと、大輝はどこか戸惑ったような表情を見せた。確かにいつもとはどこか様子が違う。悦子は敢えてそれを無視し、大輝の横をすり抜けるようにして、
「お邪魔しまーす」
と部屋に上がった。ソファーにバッグを置き、先ほどの電話での「手短に」の意味を思い巡らしながら振り返る。大輝はものも言わずに悦子を抱き締めた。その背中に腕を回し、悦子は久しく味わっていなかった幸福感に酔いしれた。当然キスしてくれるものと思って見上げたが、大輝はただ黙って見つめ返すばかりだった。不意にくるりと向きを変えさせられ、背中を押されるままにベッドへと歩み寄る。
(疲れてる、のかな……)
普段と違う雰囲気に一抹の不安を覚えつつ、悦子は平静を装って従った。ベッドの縁に辿り着き、反射的に振り向こうとすると、大輝の指先にゆっくりとこめかみを押し戻され、悦子の視界には濃紺のベッドカバーだけが残る。大輝は何も言わず、何もしなかった。どう料理しようか思案しているのだろうか。
一分か、それとも二分か。背後の気配だけに晒されて時を過ごす。電話の時点で断った方がよかったのだろうか。気が変わったと宣言して出て行くべきだろうか。大輝の顔が見えないことが悦子の動揺を煽った。
悦子が沈黙に耐えかねて口を開きかけた時、熱い両腕に背後から腹を抱かれた。腹部に絡みついて動かない腕に、手がかりを求めてそっと手を触れる。大輝の息遣いが微かに反応した。その瞬間、大輝だ、と思った。別人になってしまったわけではない。どうしていいかわからない時、人はこういう奇妙な行動を取るものかもしれない。大輝に限ってそんなはずはないが……。
悦子は、余すことなく男を湛えた手首をゆっくりと引き寄せて口づけた。すると、突如目覚めたかのようにその右手が翻り、何の前触れもなく悦子の胸を捉えた。布地三枚越しに左の乳房をぎゅっと絞られ、全身の骨を失ったような感覚に囚われる。と同時に、大輝の膝が悦子の右膝をゆっくりと前へ押しやり、左がそれに続いた。床に両膝を付いた悦子の背中に温かい胸板がのしかかる。片方ずつ前方へと手を引っ張られ、ベッドに上半身を投げ出した格好になった。その無防備な感覚に鼓動が速くなる。そして次の瞬間、例の個包装の開封音を聞いた。
(えっ? この状態で……?)
大きな手の平が背中のくぼみを縦になぞる。止まると思われた位置を素通りし、さらに南下してスカートの丸みを味わうように撫でた。冷やかしのような愛撫がスカートの裾に至ると、五本の指が太腿にはっきりと感じられた。
もっと触れてほしいという欲が湧いた時、他方の手がスカートの中に滑り込み、一本の指が下着越しに中央の溝を上から下まで辿った。馴染みのない感覚に息を呑む。スカートがめくり上げられ、お尻を突き出した姿に罪悪感にも似た羞恥を覚えた瞬間、最後の慎みである薄い生地が右の腰骨辺りで引っ張られた。脱がされる、と身構えたが、それはわずかに下げられただけだった。思わず身悶えすると胸がベッドに擦られ、その刺激を遠く離れた陰部が受け止めていた。
「今日、どう?」
唐突だった。いつも以上に。
「あ、うん、いいよ。こないだは、ごめんね。ライブの日。お母さん待ってたし……」
「あのさ、予め断っときたいんだけど、今日ちょっと手短に済まさしてもらっていいかな」
「……え?」
「正直言うと、あんまり機嫌が良くない」
「……どうして?」
大輝はそれには答えなかった。自分のせいだろうかと悦子は不安を募らせたが、まさか乱暴なことをされるわけではないだろうし、いざとなれば例のルールがある。
「うちで待ってる。タクっていいよ。俺が出すから」
どの程度機嫌が悪いのかは声を聞いただけではわからないが、手っ取り早くやらせろ、とでもいうつもりなら、タクシー代ぐらいは慰謝料としてもらっておいていいような気がした。ドライバーに告げるべき住所を確認して電話を切ると、悦子は自宅前までタクシーを呼び、急いでシャワーを浴びた。
大輝の家まで一人で行くのは初めてだ。部屋番号を確認して呼び鈴を押すと、すぐにドアが開く。白のTシャツに下は黒のスウェットという姿の大輝が無言で出迎えた。
「お待たせ」
と悦子が微笑むと、大輝はどこか戸惑ったような表情を見せた。確かにいつもとはどこか様子が違う。悦子は敢えてそれを無視し、大輝の横をすり抜けるようにして、
「お邪魔しまーす」
と部屋に上がった。ソファーにバッグを置き、先ほどの電話での「手短に」の意味を思い巡らしながら振り返る。大輝はものも言わずに悦子を抱き締めた。その背中に腕を回し、悦子は久しく味わっていなかった幸福感に酔いしれた。当然キスしてくれるものと思って見上げたが、大輝はただ黙って見つめ返すばかりだった。不意にくるりと向きを変えさせられ、背中を押されるままにベッドへと歩み寄る。
(疲れてる、のかな……)
普段と違う雰囲気に一抹の不安を覚えつつ、悦子は平静を装って従った。ベッドの縁に辿り着き、反射的に振り向こうとすると、大輝の指先にゆっくりとこめかみを押し戻され、悦子の視界には濃紺のベッドカバーだけが残る。大輝は何も言わず、何もしなかった。どう料理しようか思案しているのだろうか。
一分か、それとも二分か。背後の気配だけに晒されて時を過ごす。電話の時点で断った方がよかったのだろうか。気が変わったと宣言して出て行くべきだろうか。大輝の顔が見えないことが悦子の動揺を煽った。
悦子が沈黙に耐えかねて口を開きかけた時、熱い両腕に背後から腹を抱かれた。腹部に絡みついて動かない腕に、手がかりを求めてそっと手を触れる。大輝の息遣いが微かに反応した。その瞬間、大輝だ、と思った。別人になってしまったわけではない。どうしていいかわからない時、人はこういう奇妙な行動を取るものかもしれない。大輝に限ってそんなはずはないが……。
悦子は、余すことなく男を湛えた手首をゆっくりと引き寄せて口づけた。すると、突如目覚めたかのようにその右手が翻り、何の前触れもなく悦子の胸を捉えた。布地三枚越しに左の乳房をぎゅっと絞られ、全身の骨を失ったような感覚に囚われる。と同時に、大輝の膝が悦子の右膝をゆっくりと前へ押しやり、左がそれに続いた。床に両膝を付いた悦子の背中に温かい胸板がのしかかる。片方ずつ前方へと手を引っ張られ、ベッドに上半身を投げ出した格好になった。その無防備な感覚に鼓動が速くなる。そして次の瞬間、例の個包装の開封音を聞いた。
(えっ? この状態で……?)
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もっと触れてほしいという欲が湧いた時、他方の手がスカートの中に滑り込み、一本の指が下着越しに中央の溝を上から下まで辿った。馴染みのない感覚に息を呑む。スカートがめくり上げられ、お尻を突き出した姿に罪悪感にも似た羞恥を覚えた瞬間、最後の慎みである薄い生地が右の腰骨辺りで引っ張られた。脱がされる、と身構えたが、それはわずかに下げられただけだった。思わず身悶えすると胸がベッドに擦られ、その刺激を遠く離れた陰部が受け止めていた。
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