神万の方術師 

一ノ瀬はらら

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呪いの公衆電話1

呪いの公衆電話4

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人気のない図書室。 
校庭から鬼ごっこをする子達の大きな声が聞こえてくる。
ミヤビは今、建、律月の二人といる。

二人は机の上に鉛筆と紙、フセンを広げ、見つけた情報を書き込んでいく。

(こんなところ人に、特に女子に見られでもしたら終わりだ)

甘野さんの時みたいに、また叩かれそうになるのはもうごめんである。 
ミヤビは空気の抜けた風船のように、椅子の上で小さく縮こまってしまう。
ヒヤヒヤしながらあたりを見回し、誰もいないことを確認する。

(誰もいない…よかった)

「手がかりは見つかったか?」
「いや、いまのところ何も。」

律月の父や祖父でも見つけるのに手こずっている幽霊である。
そう簡単に見つかるはずもなく、ミヤビ達は頭を悩ませていた。
なんやかんやで調べ始めてもう少しで一週間がたとうとしている。
八陀と因幡も協力してくれて、町の様子をちくいち教えてくれる。
しかし未だどこにいて、どんな幽霊なのかすらということすらも尻尾をつかめないのだ。

「全然関係ないけど、最近欠席者が多くなったような……。風邪でも流行ってるのかな。」
建がペンをぐるぐると回しながらつぶやく。

「欠席者…それは興味深いね」
手を顎にあてながら、神妙な面持ちで律月が言う。

「そういえば甘野さん達も来てなかったね」
「甘野とミヤビはあんまり関わらない方がいいよ」
建が心配そうに顔をしかめた。

「……じゃあまた明日。放課後は僕の家に集合で。」
律月が少し笑みを浮かべながら席を立つ。

(あ、あれはなんか企んでる顔だな)

一見クールそうに見える律月は案外“やる時はとことんやる”派でミヤビや建よりも幽霊探しを楽しんでいる。
もちろん推理力も抜群で、メンバーの中でも頼りになる存在と化していた。
そして、無表情の時が多い律月がニヤリとほほ笑むのはだいたい何か良い策を考えついた時だ。
建が行動力、律月が推理力、ミヤビが……
(ちょっと待って、このチーム内での私の立ち位置ってなんなんだろう……)


ーーその次の日の放課後

「律月くんの部屋って…なんかすごいね」
そろえられた最新型の高そうなパソコンやテレビ。
将棋大会、カルタ大会優勝などのトロフィーや賞状などがずらりと並んでいる。  

(不要なものは一切ありません、って感じだ)

どすん、と建は遠慮なくベッドの上に座る。 

「…で、今日なんで集合場所が律月の家なんだ?」

すると、椅子に座った律月はふっと笑った。
「まあ、いいからこれ見てよ」
パソコンの画面をクリックする。

建とミヤビはパソコンの画面をのぞき込む。

「これが今日の欠席者の名簿。一組では二人。二組は三人。三組は八人。四組は一人。」
パソコンの画面にずらっと名前が映された。
「うん。」

「まず最初に言ってしまうと、この人達は。」

「存在しなかった…?!どういうこと?」

「正確に言えば存在していないことになっていたんだ。」
律月がまたパソコンの画面をクリックする。
「聞いてみたところ、学校を欠席している人達は先生や僕達以外の生徒、さらには親や兄弟さえ彼らの存在を忘れていた。」
「…これは?」
ミヤビは画面に映ったものに目をこらす。

「これは三組の甘野エリスが神万町の防犯カメラに最後に映った時の映像。」

(甘野さんが…?!)

「マジでよくこんな映像見つけてきたな」
顎に手を当てながら、建が感心したように言う。

画面を見ると、暗闇の中でぼんやりと人の顔のようなものが浮かんでいる。
ピンク色のスカート、白いカーディガンという服装で、映像に映る人物が甘野さんであるということがわかる。
表情は暗くてよく見えない。
動きからしてどこか焦ったようと見える。

「なにかあったのかな。急いでるみたい。」
「……何かから……“逃げてる”」
建が深刻な面持ちで言う。

「僕も、君達と同じことを思った。しかも全員が同じような状況で防犯カメラに映っているんだ」
律月が画面をクリックすると、全員の防犯カメラの映像が映し出された。

(たしかに全員が何かから逃げているみたいだ…)
背中の後ろが少しゾワリとしてきた。

「……ちょっと待って、この映像に映る人は今日も学校に来てた。」
建が画面の右はしを指さす。

(あ、この子。)
甘野さんがミヤビのことを呼んでいることをミヤビに伝えに来た人だ。

「そう。それで早速この人に話を聞いてみたんだ。」

(さすが律月くん、仕事が早い……。)

「ところが、何も喋らなかったんだ。まるで何かから口止めされているみたいに。」 

律月の話によると、欠席者の行方について聞くと、その子はガタガタと震えだし、体調が悪くなってしまい、その後保健室へ行ったそう。

「話をまとめると、欠席者が増えているのは風邪が流行っているわけじゃない。……もっと別の、“人ならざるもの”のせい。しかもその人達は最初からいなかったことになってる。そして“ナニカ”から逃げきれた人も脅されているように何も喋らない。ってことだよね。」

「……一つギモンがあるんだけど。なんで私達はいなくなった人達のことを認識出来るの?」
「…それは…分からない。だけど一つ言えるのは、早く正体を暴かないと犠牲者が増える一方って事だ。」
パチリとパソコンの画面を消し、律月は頭を抱える。

「こんなにたくさんの“神万中学の生徒”がいなくなってるってことは、そういうウワサ的なものが神万中に流れてるんじゃない?」

「要するに……そのウワサ、とやらを探ればいいんだね」

建がまかせろとでもいったような顔で胸を叩く。




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