神万の方術師 

一ノ瀬はらら

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呪いの公衆電話1

呪いの公衆電話5

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「ってなわけでウワサの正体を見つけた!」
「ってなわけで……じゃないわ。大体お前、正体見つけるの早すぎなんだよ」
律月が呆れたように言う。
(建くんはコミュニケーション能力高いからなぁ)
どうせ会話の中でトントン拍にウワサを突き止めていったのだろう。

「で、ウワサの正体はなんだったんだ?」
「公衆電話。」
「「公衆電話?!」」
ミヤビと律月の声が重なる。

「まず公衆電話からある番号に電話をかけるんだ。電話に出るのは幽霊で、神万町内にある三つの『物』を探す、『物鬼』に誘われる。断ったらその場で“鬼の仲間”にされてしまう。『物鬼』の制限時間は六十六分。参加者は最低でも三人。もしも探し物を見つけたらまた公衆電話で電話をかける。見つけていないのに見つけたとウソをつくと失格。その場で“鬼の仲間”になる。」
建が人さし指を立てながら説明してくれる。
つまりナニカから逃げていたというのは、鬼から逃げていたということになる。

「なるほど…。受けても断ってもどっちにしろ詰みってことか」
(何それ、めちゃくちゃ怖いんだけど。)
ミヤビは思わずぶるりと体を震わせる。
「でも………もしも勝負に勝ったら、“なんでも一ついうことを聞いてくれる”んだ。」
「だから皆、こんなことに挑戦するんだね…」

「……決行はなるべく早い方がいい。それプラス親の寝てる時間。今夜の十二時に公衆電話の前で集合。これでどう?」
「りょーかい」
「え?今夜…!?ウソでしょ。」
(せめて明日とかにしない…?)

驚くミヤビと反対に、建は行く気満々のようだ。

「佐瑠女さんが無理そうだったら違う曜日にしてもいいけど?」
律月が気を使ったようにミヤビに問いかける。
「う…、そういうわけじゃなくて…ちょっと…」

「大丈夫だよ。ミヤビのことは俺が絶対守るから。」
おどおどするミヤビの手のひらの上に建が手を重ねる。
その手が温かくて、あまりにも優しいのでミヤビは一瞬何を怖がっていたのかというのも忘れてしまった。

(ああ、もうまたこの変な気持ちだ。)

こくり、とミヤビは首を縦にふる。
「いいよ。この三人でやってやろうよ!」
さっきまでとは違ってやる気を固めるミヤビであった。


ーーーーその夜

「ちょっと早く着きすぎちゃったかも」
家で少し寝た後、言われた通りの住所をたどってきたものの時計を見ると時間は夜の十一時四十五分。
ひゅるりと冷たい風が頬をなでつけ、くしゅんっとくしゃみをする。
なるべく動きやすい服で来るようにと律月に言われたので、ミヤビはパーカーに半ズボンという格好だ。

目の前には一つの電話ボックスがある。
夜の闇の中で、青白い光に照らされながら緑色の公衆電話が不気味に光る。
ここから幽霊につながるのかと思うと、背筋が寒くなった。
(ここに一人はさすがに怖いよ………!建くんと律月くん、早く来てよ!)
さっきまでの威勢は泡となって消え失せたミヤビであった。

ふと空にかかる少し欠けた月をあおぎ見る。
(この月が満月になる頃に、天土祭があるんだよね……。)
天土祭に参加するため、今頑張っているミヤビ達。
この前までただただ毎日を過ごしていた自分が、何か大きなことをしようとしていると思うと、ウソのように思えて仕方がなかった。
お姉ちゃんからもらった勾玉のネックレスは、今はお守りの効果のない状態にあるらしい。

(お姉ちゃんに守られて生きてきた私があの二人のなんの役に立てるのかな)

「おまたせ、佐瑠女さん」
後ろから声が聞こえ、振り向くと、律月の姿が目に入った。
ゆったりとした黒色のモード系ファッションがよく似合ってる。
隣に八陀と因幡を乗っけた健の姿もある。
建はTシャツと半ズボンというカジュアルな格好だ。
(それにしても改めてこの二人が並ぶと輝いてるなあ………)
目の前の景色だけでも絵になれそうだ。

「ちょっとアンタ達!あたしより目立ってるんじゃないわよっ!」
「因幡はそのままでも可愛いよ?」
律月がなだめるように言うと、因幡は当たり前よ!と鼻息を荒くする。
(…律月くんがモテる理由がなんか分かったような気がする)

「おやおや、因幡さん。夜分に大声を出すというのは感心いたしませんな。」
「ちょっと本当に静かにしてよ因幡。今何時だと思ってんの?」
八陀と建が迷惑そうに顔をしかめる。

「あはは、こんな時でもみんなは全然変わらないね…」
なんだか分からないけれど少しホッとする。

「じゃ、早速電話しよ」
建がボックスに入ろうとすると、律月が止める。

「ちょっと待って、その前に渡したいものがある。」
すると手に下げていた袋から何かを取り出した。

「これは何?」
スマホによく似た形だけどスマホよりも大きさがピッタリ手のひらサイズ。
画面と五つほどボタンがついている。

「これはGPS付きのカメラトランシーバー。今から『物鬼』をするんだ。お互いがどこにいて何をしているのかを知る必要がある。」

「おぉー。なんかスパイ感あるな。」
建はトランシーバーを物珍しそうに眺める。

「因幡と八陀にはこれ。」
律月が因幡達の頭に小型カメラをつける。
「君達は『物鬼』に参加していない。つまり鬼の眼中に君達の姿はないってことだ。だから君達は“鬼”の姿を追って欲しい。因幡は地上から。八陀は空からね。ちなみにそのカメラに映ったものはこのトランシーバーの画面に映るよ。」

(このトランシーバーどんだけハイスペックなの?)

「つまり因幡は地上部隊、八陀は空中部隊ってことだね」

律月の言う“部隊”というかっこよさげな単語を聞いて、嫌がっていた因幡がきらりと目を輝かせる。
「いいわよ。別に。それ、つけてあげても」
(やっぱり律月くん因幡をなだめるのに慣れてる…?)

「そうと決まれば、早速電話してみよう」
因幡が草の間にとびこみ、八陀が夜の空にはばたく。

「そういえば建くん、その剣持ってくんだ…?」
「うん。この剣がないと幽霊を祓えないから」

電話ボックスの中は意外と三人が入る余裕があった。
“電話ボックスに入る人達が参加者”というのが条件だからたとえ少し狭くても我慢しなきゃいけない。
前を向くと、建のキレイな横顔が近くにあった。

「皆、作戦は覚えてる?」
「「もちろん」」
「じゃあ、かけるよ」

建が番号を打ち込む。

《⚪︎⚪︎⚫︎-333-4444》

そしてガチャリと受話器を取る。

プルルルルルルル。プルルルルルルル。

電話の呼び出し音がボックス内に鳴りひびく。
ーーーバクバクバク。
呼び出し音と同じくらい、心臓の音がうるさい。

ーーーーガチャリ

(出た……)
し……んとボックス内が静まり返る。
「もしもし」

『こぉんばんわ。アタシと一緒にあぁそびぃましょぉ。』

十二歳くらいの小さな女の子のような声が、受話器の向こうから聞こえた。
最後の方は、ザザザザっというノイズで聞き取りずらい。

『一分だけ、待ってあげるわ。『物鬼』よ。最初の探し物は“灯台”。ーーーそれじゃあよぉい、始めっ!」

だっ、とミヤビ達はボックスを出て、三方向に散らばる。






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