2 / 7
第一学期
笑顔の朝
しおりを挟む朝が来た。僕は決まって6時半に起き、カーテンを開ける。朝日を浴びながら軽く体操をし、歯磨き、洗顔、スキンケアをし制服に着替える。眼鏡をかけ髪を整え、婆ちゃんと朝食を済ませ、母さんに挨拶をして家を出る。これが朝のルーティンだ。もちろん、父さんへの連絡も忘れない。
「婆ちゃん。おはよう。」
「あら、なお君おはよう。学校初日からしっかり起きて偉いわね。さぁ、朝ごはん出来ていますよ。」
「うん、ありがとう。頂きます。」
毎朝、僕の時間に合わせて朝食を作ってくれる婆ちゃんに感謝している。
にしても、今日はいつもより豪華だな……。
「婆ちゃん、今日はなんか豪華だね!」
「だって新学年初日だもの。たくさん食べて頑張ってほしいの。」
「ありがとう。でも今日は始業式だから午前だけで終わるよ?」
「いいのよ。なんでも初めは肝心だから。」
「そっか、ありがとう。頂くね。」
婆ちゃんは僕の対面に腰を掛け、どこか悲しげな顔で僕を見つめていた。
「ん?婆ちゃん、どうしたの?」
「ねぇ、なお君。お婆ちゃんね、心配していることがあるの。」
「え、何? 何かあった?」
「なお君、お友達はいるの?」
「……!!」
動揺で手が止まった。
「え、いるよ? 急にどうして?」
嘘をついた。
大好きな婆ちゃんに、僕は嘘をついた。
「だって春休みの間、一度もお友達と出掛けなかったでしょう?それだけじゃないわ。夏休みも冬休みも…なんなら、この家に来てから一度もお友達の話を聞いたことがないから、もしかしたらって心配で。」
「な…なんだ、そんなことか。それはただ、友達とは家が遠くてあまり会わないだけで、学校では話すし上手くやってるよ。あははは。」
また嘘をついた。
嘘笑も下手くそだ。
罪悪感という名の毒針が、心臓を突き刺す音がした。
「そう?それならいいのだけれど……。でもね、なお君。高校生活も残り一年よ。お婆ちゃんはね、お友達と遊びに行ったり恋をしたり、色んな思い出を作ってほしいの。大人になった時に後悔しないように。」
「……後悔…………」
「いい?学生ってのはね、長い人生の中ではほんの一瞬の出来事なの。お婆ちゃんは家が厳しかったから、なかなか家から出してもらえなくて悔しい思いをしたわ。後悔していることだってたくさんある。なお君を見ていると、昔の自分と重なる時があるのよ。あなたにはそんな想いしてほしくないわ。だって、なお君とお婆ちゃんは違うもの。あなたはどこへでも行けるし、行っていいのよ。だからこの一年間は、精一杯に楽しんで。」
「…うん……そうだね。ありがとう。」
「はぁ~、朝からこんな話してごめんなさいね。楽しむのも大切だけど、大学受験もあるし難しい時期よね。そんなことより、素敵なクラスだといいわね。新しいクラス。帰ったらまた話してちょうだい。」
そう言いながら、僕の手を握りしめた。
その時の僕は、嘘をついた自分への嫌悪感と、心配させてしまった罪悪感と、そんな毎日を過ごしたいという願望と、過ごしたかったという悔しさと、その願いからは程遠い日々への絶望と、この学園に来た後悔と、逃げ出したい恐怖感と、今日からの期待と不安とで、頭と心はグチャグチャだった。僕はこの後、婆ちゃんに何と言ったのか覚えていない。
「いってきます」
今日の挨拶は、笑えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

