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第一学期
出会い
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翌日━━。今日は学校に行くのが楽しみだった。伝えたいことがあるワクワク感に胸を躍らせながら学校へ向かう。しかし、僕の気持ちとは反対に、空は厚い曇に覆われて薄暗い世界が広がっていた。
学校に着いた僕は、何か違和感を感じていた。何だかいつもより空気がザワついているような気がしたのだ。下駄箱で靴を履き替えていると聞こえてきた一言で、それは確信へと変わった。「ゆえ様が来てるらしいよ。」それを聞いた瞬間、身体に電気が走った。ゆかさんに伝える前に、まさか本人が現れるなんて思ってもいなかった。気付くと勢いよく階段を駆け上がり、無我夢中で教室まで急いでいた。すると教室前の廊下には女子生徒たちの人集りができており、これ以上先には進めない状態になっていた。
なんだこれ…すごい…
全て月城ゆえを見に来た人達だろうか?このような情景を初めて見た僕は完全に圧倒されていた。皆の視線の先に…この教室の中に…あの彼がいるのだろうか…。そう思うと何故か緊張してきて唾を飲んだ。
だけどこれじゃ教室に入れないよ…女子の間をかき分けて進むわけにもいかないし…どうすれば…。しばらく呆然と立ち尽くしていたが、ただ時間が過ぎるだけ。もう仕方がない。恥ずかしいけどこうするしか…。そして僕は勇気を振り絞って叫んだ。
「すみませぇぇん! 教室に入れてくださぁぁあああい!!」
すると廊下は静まり返り、全員がコチラを向いた。威圧的な目線もあり怖くて後ずさりをしたが、ズルズルと教室まで続く道を作ってくれた。「あ、ありがとうございます…すみません…ありがとうございます…。」なんてボソボソと礼を言いながら歩いた。なんだ、意外とみんな優しい方じゃないか。そう安堵したが、教室に入る直前で一人の女子生徒に呼び止められた。
「ねぇあなた、一つお願いがあんだけどいいかしら?あそこの席で眠ってるゆえ様を起こしてくれない?ずっと呼んでも起きないのよ。あなたクラスメイトでしょ?なら、それくらいいいわよね?」
「え?いえ、僕は彼と話したいこともないですし…たぶん他の人の方が……。」
「私達、今あなたのお願い聞いてあげたよね?なら、私達のお願いも聞くってのが道理じゃない?」
「え?そんな…それはそもそも廊下に……」
「私達、ゆえ様が登校する日をずっと待っていたの。だからお願い。これはここにいる全員の願いなのよメガネ君。」
そういうと僕の手を握りしめた。周りの女子達からも鋭い視線を感じる。
く…始めからこれが目的だったのかな……くそぉっ。
「はぁ。わかりました…。でも、起こせる保証はないですからね。」
僕は負けた。しかし本当にどうしようか…。彼の席に目をやると、顔を隠すように蹲って寝ている姿があった。綺麗な金髪が、風でかすかに揺れている。綺麗に伸びた指先には、ネイルが施してあった。爪、直さなかったんだ…。
僕は彼の横に立った。自分の心臓音が聞こえるくらいドキドキしていた。彼の後頭部を見下ろしながら、色んなものが脳裏に流れ込んできた。怒りっぽいこととか、先生との言い合いとか、スマホの中で見た笑顔とか、弟がいるんだとか、学校に来て欲しくないというゆかさんの言葉とか。まるで走馬灯のように。
彼は僕のことを何も知らないのに、僕は彼のことを少し知っている。それがなんだか不思議な気持ちでもあり、申し訳なさのような気持ちもあった。
「あの。」「ねぇ。」「月城さん。」
まずはそう呼んでみたけれど、ピクリとも動かない。それはそうだ。だって、緊張で声が出ていないのだから。今にも裏返ってしまいそうだ。僕は呼びかけることを諦め、恐る恐る肩を揺らした。するとすぐに、パチン!という大きな音が教室中に響いた。肩にやった僕の腕は勢いよく弾かれ、同時に頬を打たれたのだ。
「あ?誰だよテメェ。」
彼は起き上がり、鋭い言葉と目線が僕を突き刺した。打たれた頬がじんじんと痛み、今にも殴りかかってきそうな恐怖に怯えながらも、その真っ直ぐで引き込まれそうなほど美しい黄色い瞳にしばし目が奪われた。
「おい、誰だか聞いてんだろメガネ野郎。今触ったのはテメェか?なぁ。テメェも喧嘩売りに来たのか?」
ハッと我に戻ると、痛む頬を抑えながら僕は言う。
「ちが…ちが…」
あれ?言葉が出ない。どうして…。次第に視界がボヤけ始め、溢れた涙で頬がしみた。そんな僕を見て彼は慌てた口調で言った。
「は?お、おい! 急になに泣いてんだお前!喧嘩売ってきたのはそっちだろ!」
どうしていつもこんなことになるんだろう。虐められて、馬鹿にされて、文句を言われて、しまいには殴られるのか…本当に情けない人生だ。そんな風に人生を悲観していると、教室の入口から馴染みのない声が聞こえた。
「すみませーん!ゆえ兄ちゃんいますかー?」
そこには、綺麗な桃色の髪をした男の子がひょっこりと顔を出しており、すぐに教室や廊下がザワつき始めた。「あれって1年の岩永一輝じゃない?」「マジ?」「ってことはモモ?」「あのフルーツジュースの?」「絶対そうだよヤバくない?」「えっかわいい~!」などと聞こえてきたが、僕には一体なんのことだかサッパリ分からなかった。だけど、この子も有名人なんだろうという事くらいは簡単に理解できた。ゆえ兄ちゃんってことは、もしかしてこの子が弟さん?でも苗字が違うし…そんなことを考えていると、あっという間に彼が目の前まで来ていた。
「ねぇ、ゆえ兄ちゃん。間違えて僕の鞄持ってってない?」
「は?知らねぇよ。見てねーもん。」
「ちょっと中身見せて。……ほら、やっぱりコレ僕のやつじゃん!ちゃんも中身確認してから持ってってよね!授業で恥かくとこだったでしょー!」
「うるせーな今それどころじゃねんだよ。」
「…?」
すると桃色の子は僕の方を見て「お友達?」と尋ねる。
「いえ、僕は…」
「すごいじゃん! ゆえ兄ちゃん! 初日からお友達作れたなんてさー!」
「あ?ちげーよ、コイツは気持ち良く寝てた俺に喧嘩売りにきたメガネ野郎だ!」
「ゆえ兄ちゃん!お友達にそんな言い方はダメでしょー!先輩ごめんなさい。ゆえ兄ちゃん口は悪いけど、悪い人ではないんです。だからこれからもゆえ兄ちゃんのこと、よろしくお願いしますね!」
「え?」
「は?何勝手なこと言いやがっ」
「友達できないっていっつも喚いてたじゃん!」
「できないんじゃなくて、いらねーんだよ!」
2人は仲良さそうに会話を続けていた。桃色の彼…よろしくお願いしますと言いながら僕を見た時、頬の傷に気付いたのか少し驚いた感じだったな…。それにしても僕が有名人と友達?笑っちゃうな。そんなのなれる訳ないじゃないか。一般人の友達ですら作れない僕なのに。住む世界が違いすぎるよ…。
「あ、そうだ、ゆえ兄ちゃん。廊下にたくさん人が来てるよー。迷惑になる行動はやめてねって、ちゃんと言わなきゃダメでしょー!」
「どーせお前んとこだって一緒だろ。」
「僕は前もって『危ないから集まらないでね♡』ってSNSで呼びかけたもん!皆ちゃんと守ってくれる、いい子たちだもーん!」
「へー、アイドル様はやることが違うなあ!ちょうどいいや。お前が代わりにアイツらに言ってきてくれよ。」
「なんで僕なのー!ゆえ兄ちゃんのファンなんだから、ゆえ兄ちゃんが言わなきゃダメでしょー!」
すると彼は大きな大きな溜め息をついて、廊下の方へと歩いていった。
桃色の彼も溜め息をついたあと、何か言いたそうな顔でしばらく僕をみつめた。
「あの…先輩。先輩のその頬って…もしかしてゆえ兄ちゃんのせい……ですか?」
「あ、これ?えっと……う、うん。でも、さっき無理矢理起こしちゃった僕が悪いから…。」
「本当にすみません!」
そう言うと彼は深く頭を下げた。
「え?い、いいよ。大丈夫だから。君が謝ることでもないし…。」
「僕からもキツく言っておきますので!今度ゆえ兄ちゃんと……」
"キーンコーンカーンコーン" 予鈴が鳴った。
「すみません。僕はもう行きますね。良かったらこれ使って下さい。では。」
そう言うと、絆創膏を手渡し去っていった。あの時彼が何を言いかけたのかは分からないけれど、妙に悲しげな表情が僕には引っ掛かっていた。それにしても、2人はきっといい関係なんだろうな。羨ましい。僕もそんな相手ができたらいいのに。
そんなことを思っていると、背後から不気味な笑い声が聞こえてきた。
「クックックックックッ」
嫌な気を感じ振り向くと、そこには緑色のボブ髪をした女の子が不気味な笑みを浮かべてコチラを見ていた。
「クックックック…」
「な…なんなんですか?」
「これは…これは……」
「だ、大丈夫ですか? よだれ! よだれ出てますよ! 良かったらこれ使ってください!」
怪しげな彼女に恐る恐るポケットティッシュを渡そうとすると、勢いよく腕を引っ張られて心臓が止まりそうだった。彼女は物凄く興奮した様子で小刻みに震えており、ゆっくり、またゆっくりと顔を近づける。僕も恐怖で身体が震え始め、2人の振動がシンクロした時、彼女は耳元でこう言った。
「これは………これはBL展開ですなっ…!」
「え?」
「クックックックッ…クックックック……。」
彼女はいつまでもニヤけていた。僕は増々恐ろしくなり、逃げるように自分の席に戻った。BL? BLって一体何のことだろう?変わった人だなぁ。
学校に着いた僕は、何か違和感を感じていた。何だかいつもより空気がザワついているような気がしたのだ。下駄箱で靴を履き替えていると聞こえてきた一言で、それは確信へと変わった。「ゆえ様が来てるらしいよ。」それを聞いた瞬間、身体に電気が走った。ゆかさんに伝える前に、まさか本人が現れるなんて思ってもいなかった。気付くと勢いよく階段を駆け上がり、無我夢中で教室まで急いでいた。すると教室前の廊下には女子生徒たちの人集りができており、これ以上先には進めない状態になっていた。
なんだこれ…すごい…
全て月城ゆえを見に来た人達だろうか?このような情景を初めて見た僕は完全に圧倒されていた。皆の視線の先に…この教室の中に…あの彼がいるのだろうか…。そう思うと何故か緊張してきて唾を飲んだ。
だけどこれじゃ教室に入れないよ…女子の間をかき分けて進むわけにもいかないし…どうすれば…。しばらく呆然と立ち尽くしていたが、ただ時間が過ぎるだけ。もう仕方がない。恥ずかしいけどこうするしか…。そして僕は勇気を振り絞って叫んだ。
「すみませぇぇん! 教室に入れてくださぁぁあああい!!」
すると廊下は静まり返り、全員がコチラを向いた。威圧的な目線もあり怖くて後ずさりをしたが、ズルズルと教室まで続く道を作ってくれた。「あ、ありがとうございます…すみません…ありがとうございます…。」なんてボソボソと礼を言いながら歩いた。なんだ、意外とみんな優しい方じゃないか。そう安堵したが、教室に入る直前で一人の女子生徒に呼び止められた。
「ねぇあなた、一つお願いがあんだけどいいかしら?あそこの席で眠ってるゆえ様を起こしてくれない?ずっと呼んでも起きないのよ。あなたクラスメイトでしょ?なら、それくらいいいわよね?」
「え?いえ、僕は彼と話したいこともないですし…たぶん他の人の方が……。」
「私達、今あなたのお願い聞いてあげたよね?なら、私達のお願いも聞くってのが道理じゃない?」
「え?そんな…それはそもそも廊下に……」
「私達、ゆえ様が登校する日をずっと待っていたの。だからお願い。これはここにいる全員の願いなのよメガネ君。」
そういうと僕の手を握りしめた。周りの女子達からも鋭い視線を感じる。
く…始めからこれが目的だったのかな……くそぉっ。
「はぁ。わかりました…。でも、起こせる保証はないですからね。」
僕は負けた。しかし本当にどうしようか…。彼の席に目をやると、顔を隠すように蹲って寝ている姿があった。綺麗な金髪が、風でかすかに揺れている。綺麗に伸びた指先には、ネイルが施してあった。爪、直さなかったんだ…。
僕は彼の横に立った。自分の心臓音が聞こえるくらいドキドキしていた。彼の後頭部を見下ろしながら、色んなものが脳裏に流れ込んできた。怒りっぽいこととか、先生との言い合いとか、スマホの中で見た笑顔とか、弟がいるんだとか、学校に来て欲しくないというゆかさんの言葉とか。まるで走馬灯のように。
彼は僕のことを何も知らないのに、僕は彼のことを少し知っている。それがなんだか不思議な気持ちでもあり、申し訳なさのような気持ちもあった。
「あの。」「ねぇ。」「月城さん。」
まずはそう呼んでみたけれど、ピクリとも動かない。それはそうだ。だって、緊張で声が出ていないのだから。今にも裏返ってしまいそうだ。僕は呼びかけることを諦め、恐る恐る肩を揺らした。するとすぐに、パチン!という大きな音が教室中に響いた。肩にやった僕の腕は勢いよく弾かれ、同時に頬を打たれたのだ。
「あ?誰だよテメェ。」
彼は起き上がり、鋭い言葉と目線が僕を突き刺した。打たれた頬がじんじんと痛み、今にも殴りかかってきそうな恐怖に怯えながらも、その真っ直ぐで引き込まれそうなほど美しい黄色い瞳にしばし目が奪われた。
「おい、誰だか聞いてんだろメガネ野郎。今触ったのはテメェか?なぁ。テメェも喧嘩売りに来たのか?」
ハッと我に戻ると、痛む頬を抑えながら僕は言う。
「ちが…ちが…」
あれ?言葉が出ない。どうして…。次第に視界がボヤけ始め、溢れた涙で頬がしみた。そんな僕を見て彼は慌てた口調で言った。
「は?お、おい! 急になに泣いてんだお前!喧嘩売ってきたのはそっちだろ!」
どうしていつもこんなことになるんだろう。虐められて、馬鹿にされて、文句を言われて、しまいには殴られるのか…本当に情けない人生だ。そんな風に人生を悲観していると、教室の入口から馴染みのない声が聞こえた。
「すみませーん!ゆえ兄ちゃんいますかー?」
そこには、綺麗な桃色の髪をした男の子がひょっこりと顔を出しており、すぐに教室や廊下がザワつき始めた。「あれって1年の岩永一輝じゃない?」「マジ?」「ってことはモモ?」「あのフルーツジュースの?」「絶対そうだよヤバくない?」「えっかわいい~!」などと聞こえてきたが、僕には一体なんのことだかサッパリ分からなかった。だけど、この子も有名人なんだろうという事くらいは簡単に理解できた。ゆえ兄ちゃんってことは、もしかしてこの子が弟さん?でも苗字が違うし…そんなことを考えていると、あっという間に彼が目の前まで来ていた。
「ねぇ、ゆえ兄ちゃん。間違えて僕の鞄持ってってない?」
「は?知らねぇよ。見てねーもん。」
「ちょっと中身見せて。……ほら、やっぱりコレ僕のやつじゃん!ちゃんも中身確認してから持ってってよね!授業で恥かくとこだったでしょー!」
「うるせーな今それどころじゃねんだよ。」
「…?」
すると桃色の子は僕の方を見て「お友達?」と尋ねる。
「いえ、僕は…」
「すごいじゃん! ゆえ兄ちゃん! 初日からお友達作れたなんてさー!」
「あ?ちげーよ、コイツは気持ち良く寝てた俺に喧嘩売りにきたメガネ野郎だ!」
「ゆえ兄ちゃん!お友達にそんな言い方はダメでしょー!先輩ごめんなさい。ゆえ兄ちゃん口は悪いけど、悪い人ではないんです。だからこれからもゆえ兄ちゃんのこと、よろしくお願いしますね!」
「え?」
「は?何勝手なこと言いやがっ」
「友達できないっていっつも喚いてたじゃん!」
「できないんじゃなくて、いらねーんだよ!」
2人は仲良さそうに会話を続けていた。桃色の彼…よろしくお願いしますと言いながら僕を見た時、頬の傷に気付いたのか少し驚いた感じだったな…。それにしても僕が有名人と友達?笑っちゃうな。そんなのなれる訳ないじゃないか。一般人の友達ですら作れない僕なのに。住む世界が違いすぎるよ…。
「あ、そうだ、ゆえ兄ちゃん。廊下にたくさん人が来てるよー。迷惑になる行動はやめてねって、ちゃんと言わなきゃダメでしょー!」
「どーせお前んとこだって一緒だろ。」
「僕は前もって『危ないから集まらないでね♡』ってSNSで呼びかけたもん!皆ちゃんと守ってくれる、いい子たちだもーん!」
「へー、アイドル様はやることが違うなあ!ちょうどいいや。お前が代わりにアイツらに言ってきてくれよ。」
「なんで僕なのー!ゆえ兄ちゃんのファンなんだから、ゆえ兄ちゃんが言わなきゃダメでしょー!」
すると彼は大きな大きな溜め息をついて、廊下の方へと歩いていった。
桃色の彼も溜め息をついたあと、何か言いたそうな顔でしばらく僕をみつめた。
「あの…先輩。先輩のその頬って…もしかしてゆえ兄ちゃんのせい……ですか?」
「あ、これ?えっと……う、うん。でも、さっき無理矢理起こしちゃった僕が悪いから…。」
「本当にすみません!」
そう言うと彼は深く頭を下げた。
「え?い、いいよ。大丈夫だから。君が謝ることでもないし…。」
「僕からもキツく言っておきますので!今度ゆえ兄ちゃんと……」
"キーンコーンカーンコーン" 予鈴が鳴った。
「すみません。僕はもう行きますね。良かったらこれ使って下さい。では。」
そう言うと、絆創膏を手渡し去っていった。あの時彼が何を言いかけたのかは分からないけれど、妙に悲しげな表情が僕には引っ掛かっていた。それにしても、2人はきっといい関係なんだろうな。羨ましい。僕もそんな相手ができたらいいのに。
そんなことを思っていると、背後から不気味な笑い声が聞こえてきた。
「クックックックックッ」
嫌な気を感じ振り向くと、そこには緑色のボブ髪をした女の子が不気味な笑みを浮かべてコチラを見ていた。
「クックックック…」
「な…なんなんですか?」
「これは…これは……」
「だ、大丈夫ですか? よだれ! よだれ出てますよ! 良かったらこれ使ってください!」
怪しげな彼女に恐る恐るポケットティッシュを渡そうとすると、勢いよく腕を引っ張られて心臓が止まりそうだった。彼女は物凄く興奮した様子で小刻みに震えており、ゆっくり、またゆっくりと顔を近づける。僕も恐怖で身体が震え始め、2人の振動がシンクロした時、彼女は耳元でこう言った。
「これは………これはBL展開ですなっ…!」
「え?」
「クックックックッ…クックックック……。」
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