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話が斜めの方向に向かってしまったかも?

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 なんとなく、私にしては、綺麗に話をまとめたように思えた。
 そう、シルキーを領地へ招待するという形で……なのに、シルキーが思い出したようで、話が蒸し返されたしまった。


「ジルベスターは、ずるいのじゃ!わらわもアンナリーゼと口づけするぞ!」


 シルキーは、満面の笑みを浮かべ約束したことを喜んでいたはずなのだが……太もものキスマークを見た瞬間に……話が戻ってしまったのだ。
 殿下に小言を言っていたシルキーが私の方に向き直り、その小さな両手で頬を挟まれた。
 おかしなことになってやしないか?と思っていたが……なっていたらしい。
 しんどそうな体をおしてまで、私にキスをするシルキー


「うむ、これで、いいのじゃ!」
「何が、いいのです?」


 キスをして満足気のシルキーは、ストンとまた私にもたれかかって座る。


「ジルベスターがアンナリーゼにキスをしたのなら、わらわもアンナリーゼにキスしたら、
 ジルベスターとおあいこなのじゃ!あぁ、まだ、こっちの分があるのじゃ!」


 なんだか、身の危険?を感じ後ろに引こうと思ったが、殿下の視線は好きにさせてくれというのだったし、まだ本調子でないシルキーを支えてあげているから、無下にもできない。
 シルキーの好きにさせると鎖骨あたりを狙われて舐められ、軽く吸われるわけだが……なんともまぁ……という感じだ。


 そこにタイミング悪くエリザベスが入ってきたから、この部屋はパニックになる。


「シルキー様、アンナに何を……!」


 うん、そうなるよね?エリザベス、それが正しい反応です。
 少し体を動かしたので疲れたのか、シルキーはくたっと私に体を預け満足そうにしている。


「ジルベスターもアンナリーゼにキスマークをつけたので、わらわもつけただけなのじゃ!
 もう、これでこの話はおしまい。
 大好きなアンナリーゼと程々好きなジルベスターの両方とも、わらわの大事な人なの
 じゃし、今は、幸福感でいっぱいなのじゃ!」


 シルキーは、満面の笑みを殿下とエリザベス向けているらしい。
 ここから見えるのは、苦笑いの殿下とどう反応をしていいのかおろおろしているエリザベスしか見えない。
 シルキーの幸福感とキスマークは、関係ないけど……と、私はシルキーのつけた痕を確認する。
 うん、見事についている。
 これは、どうしたらいいんだろう?案件である。
 太ももなら……ぶつけたと言えばなんとでもなりそうな気もしないこともないが、鎖骨をぶつけることってないわよね?
 荷物が落ちてきたなんて言ったら心配するし……領地に帰るまでに消えていますようになんてこっそり祈っておく。


「これが消えるまでは、わらわのアンナリーゼじゃ!手出し無用じゃからな!」


 あ……あれ?ていうことは……?
 私、この痕が消えるまでここにいろってことかしら?
 明日、シルキーの様子を確認したら、フレイゼン領に行ってアンバー領に役立ちそうなものを見てそのまま帰るつもりでいた。
 いやはや……帰れないことになってしまったようだ。


「シルキー様?」
「なんじゃ?アンナリーゼ」
「私、もうしばらくこちらにいるのですか?」
「いてほしいのじゃ、だめかえ?」


 そんな捨てられそうな小動物みたいな顔されたら……帰るなんて言いづらいというか、言えない。
 私もアンバー領で待っている人がいるので……とどまり続けることは難しいのだが、言えない。


「シルキー様、私、明日の夕方には、お暇しようと思っていましたの。
 あちらでしないといけないことがたくさんありますので。
 なので、1日滞在期間を伸ばすので、それで許していただけませんか?」


 そういうつもりはなくても、しょんぼりされると私も強くは出れない。
 こういうときこそ殿下の出番なのだが……シルキーの中での順番的に、殿下より私の方が上らしく、殿下は横に首を振るばかりだ。
 役に立たないわね!と思ったことは胸の内にしまい、私にシルキーへ提案できることはないかと考える。


「シルキー様、今晩から殿下と一緒に寝てください!」
「なっ!」
「えっ?」


 私の代替え案に二人して慌てる。
 何故、なのだろうか?それほど、難しい話ではないはずだ。
 私とジョージアは、常に一緒のベッドで眠っているのだから。
 基準にするのが、まずいのだろうか?と小首をかしげてしまった。


「アンナ……その、シルキーはまだ調子が悪いのだろ?」
「ジルベスターのい……言う通りじゃ!」


 はて?なんのこと?と、私は不思議そうに二人を見る。


「調子が悪いから、一緒に寝るのでしょ?シルキー様の体はまだまだ冷たいのです。
 一緒に添い寝すれば、殿下の体温でシルキー様も温まるじゃないですか?
 何か変なところありますか?」


 きょとんとしながら説明をすると、二人はほんのり顔を赤らめ俯いていく。
 ふーん、そう。勘違いしたんだ。へぇー。私は、二人に生暖かい視線を送っておく。


「何を想像されたのかは知りませんけど、シルキー様の体にいいことは、どんどん取り入れて
 いきましょう。
 侍女でも構いません、シルキー様の回復がなるべく早くなるように手を握ってあげてください。
 今のシルキー様にとって冷たい体は、良くないので!」


 殿下とシルキー、そこに居合わせた侍女に、シルキーの体を温めるように指示してから移動の準備をする。
 目の前で抱きかかえていたシルキーからそっと離れる。
 名残惜しそうにしているシルキーに笑いかける。


「お食事もきたことですし、ゆっくり召し上がってください。
 たぶん、執務室にお兄様とパルマもそろそろ来ているころなので失礼しますね。
 しっかり、食べてくださいね!」


 私は、殿下を部屋に残し、エリザベスと二人で殿下の執務室へ入っていく。
 すでに来ていた兄とパルマがおはようと挨拶したかと思ったら、私の姿を見てギョッとしている。
 あぁ、今、淑女らしからぬ姿であることを思い出し、パルマに服を兄にお粗末な暗殺者をシルキーの部屋から連れ出してもらいに、エリザベスには屋敷に帰宅してもらった。


「アンナリーゼ様、一体何があったのです?」
「話せば長いけど、お仕着せで、猿ぐつわやロープを作ったからこんなことになっているのよ。
 殿下の部屋にドレス脱いで来ちゃったから、それの回収と殿下のクローゼットの奥にまだ、私の服が
 あると思うから持ってきてくれる?」
「服ですか?あの……」


 若干目を泳がせているパルマに説明をしなければならないだろう。
 ほんのり頬の赤いパルマよ、私は何もしていないと潔白を説明し始める。


「言っときますけど、殿下とは以前も昨日も今日も何もないわよ?
 城に出入りしてた頃、いきなり思い立って城下へ遊びに行くから、お忍び用に常に城へ何着か
 庶民的な服を置いてあるのよ。
 ハリーの分もあるはずよ!私たちみんなの目を盗んでは、城の外へ繰り出していたからね!」


 私を見て驚いているパルマ。
 じゃあ、その辺で侍女かメイドを見つけて、服とドレスの回収をよろしくね!というと、私は殿下の執務室に一人取り残されるのであった。
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