木積さんと奇怪な日常

浅木宗太

文字の大きさ
17 / 21
第三怪

合宿譚と僕らの長い一日4

しおりを挟む
登り坂や下り坂、あるいはお前そこ通る?と言いたくなるような道を歩き回り、どうにかこうにかスコアボードを網羅した我々は合宿場へ戻る道を歩いていた。すると目の前にぽつりと人の姿が見える。
「あれ?吉岡さんじゃん」
「あ、北山さん!ちょうど良かった!」
そう言って駆け寄ってきたのは吉岡さん。クラスメイトの一人でかわいい系の顔の女の子だ。趣味はB級ホラー映画巡りというちょっと変わった女の子だがこの位では動じなくなった私も私だ。
「どうしたの?班の人は?」
「それが……急に霧が出てきて、皆とははぐれないように歩いてたつもりだったんだけど……いつの間にか……」
「霧……?そう言えば、今日こんな霧が出るって予報なかったよね……?」
彼女の言葉に周囲を見渡せば自分達以外は見えない程の霧に包まれていた。
「これって……」
「お鈴、吉岡に歩いてもらおう。俺達はその後ろをついて行く方が良さそうだ」
その言葉に不安そうな顔をする吉岡さんに彼方はへらりと笑うと「大丈夫だって、俺を信じな」と彼女の肩を軽く叩いた。

「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
吉岡さんの案内の元歩きながら隣を歩く彼方にこそりと尋ねる。
「大丈夫も何も、今回は吉岡が鍵だ。俺達を巻き込んだ理由は分からんが、やるべき事は大方見当がついている」
前を歩く吉岡さんを見ながら彼方はそう言うと「とりあえず吉岡の班の連中には連絡を取ってあるしな」とさも当たり前のような顔で言い放った。
「……ひとつ聞いていい?」
「ん?」
「班の連中ってさ」
「ヒト相手にはうちの舎弟共は見えねぇだろうなぁ」
にひひと笑う彼方にやっぱりかと何とも言えない気持ちになる。
「……うちのクラスにってか、うちの学校どのくらい妖怪が居るんだろ……」
考えるとちょっとため息がでた。
どのくらい歩いただろう、体感時間にして多分三十分も歩いてないくらいの時だった。前を歩いていた吉岡さんがぴたりと止まったのだ。
隣に来て彼女の見つめている先へ視線を移す。
「泉と、なにあれ豪邸?って言えばいい?」
「んー、寝殿造り、かな。この手の建物には多いん、だ」
目の前に広がる泉というよりは湖と呼ぶ方が正しそうなそこは澄んだ水が穏やかに波を立てており、その上にはどうやって建てたのか、昔の貴族が住んでそうな建物が建っている。
「北山さんも代々木くんも驚かないの?!」
「吉岡、深呼吸深呼吸」
「はーい吸ってー吐いてー、そのまま中嶋の後ろに隠れてー」
何がなんだかわからない吉岡さんの背を押して中嶋くんの後ろに連れていく河原くん。そして彼方はと言うと楽しげにうっすらと笑みを浮かべた。
「お鈴、出たぞ」
彼方のその声に真っ直ぐに前を見つめる。何かが水をかき分けるような音、そして霧の中から一艘の船が姿を現した。船の上には狩衣を着た人物と船を漕ぐ従者のようなものが乗っている。
船は岸辺に着くと狩衣の人物だけが船から降りてくる。
「その娘を嫁に貰い受けに参った。渡せ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...