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女子高生、異世界へ行く。
外出します。2
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「久しぶりだな。てかあんまり戦いたくないんだけどなぁ」
溜息をつきながらリングへ上がる彼方さん。少年はと言うとからからと笑い
「まぁいいじゃん。ギルマス達出ねぇし、ちょっと相手してくれよ」
と着ていた上着を投げ捨てる。上着はふわりと宙を舞うことなく、リングすぐ近くの地面(更に言うと私の真横だ)に上着にあるまじき、ドスンッという音を立てて着地した。更にあの呪いのメイスもその横に投擲された。
「ちょっとじゃないじゃん。ガチじゃん」
眉を顰める彼方さん。彼女の今の服装はTシャツにスラックス、そしてハイカットシューズというラフな格好だ。相対する少年は上着を脱ぎ捨てたのでその下に着ていた半袖の文字Tシャツとズボンにブーツ、そこに冒険者らしい(?)革手袋だ。やっぱり戦時中を題材にした映画でこんな学校の人見たことがあるかもしれない。でかでかと胸に粉砕と書かれたTシャツは見た事ないけど。
「ルールは武器有り、三分の制限付きでリングから出るか倒れたら負けな」
「人の話聞いてます?クラブ・アルジャーノン君?」
まぁ聞いてても聞いてなくても負ける気は無いけどね。と言う彼方さんの影の中から一振りの日本刀が姿を現す。丸腰対日本刀。彼のジョブはモンクか格闘家なのだろうか。そもそもそれなら何故あの呪いの装備を持ってたんだこの人、という疑問がふつふつと湧いてくる。いやほんとなんで持ってたん?
「そんじゃ、両者構え!レディー……」
結論から言うと凄かった。縦と横と止めと払いとはねを一緒に書けと言われたくらいに凄かった。そんな経験はないけど。勝敗は引き分けだったけれど、そんな事ある?って位に激しい戦いだった。両者引けを取らぬ戦い。打撃と斬撃でそんな戦いってできるんだなぁと感じさせられた。怒涛の攻めというのはこういうののことを言うんだな。ひとつ賢くなった気がする。
彼方さんの攻撃は基本的には刀による斬撃、もっといえば刺突に近い。誰かが日本刀は本来突くものだと言っていた気がするが、まさにそんな戦い方だった。一方のクラブ、と呼ばれた少年はと言うと拳である。もうシンプルであるが故に強いと言っても過言ではなさそうな感じだ。だが、ただただ殴る訳ではなく、足技だって使うし、ジャブだってする。計算された拳と言うのかもしれない。リングに拳で穴があくという事案はあったものの、試合そのものはつつがなく終わったし、二人とも怪我のひとつも無い。それどころか「アンタ手を抜いたろ」「いやお前だって」と言い合ってすらいる。軽口をたたき合う仲、という関係性のようだ。
ぼんやりとそんな二人を見ていると彼方さんと目が合う。
「こっち来なよ、きちんと紹介するから」
そう言われて少し足早にそちらへ向かう。
「ふうん、見たところ異邦人ってとこか?」
「そうそう。つい昨日この世界に来たばかりのな」
「なるほど。俺はクラブ。クラブ・アルジャーノン。この街にある蛙鳴蝉噪ってギルドに所属してる衛生兵だ」
「どうも、ところで衛生兵って前衛でしたっけ?」
聞いてしまった私は何一つ悪くないと思う。
彼はそんな私の質問に「よく言われる」と笑いながら答えてくれた。
「それはそうとしてクラブ、お前、人にもの教えてるらしいじゃん?」
「ん?まぁ、週に二、三回授業っつーかなんつーかやってるな」
「こいつ寄越すからいつやってるか教えてくんない?」
「えっ?」
「あー、問題ない。つかそれだけの為に来たろ。遠回りだなぁ」
「いやいや、今回はこいつの服の買い出しよ。こいつこれしか持ってないしさ」
「はいはい。じゃあそういうことにしといてやるわ。クソ弱そうだし、下手に誰かしらに喧嘩売ることもなさそうだしな」
さらっとディスられたが、こちとらひ弱な現代っ子だ。野山にまじりて竹を取ることも無ければ休みの日は家でゲーム三昧してた人種である。そんな負け戦決定の喧嘩を売るほどアホではない。きっと。むしろ売ったら秒で死ぬわ。
「んじゃあ決まりだな。日程は?」
「週二回。風月の日……あー、月曜日?っつーんだっけか?それと後あれ、金曜日って日な」
「だそうだ。覚えとけよ」
私にわかりやすく言い換えてくれたあたり、この私に搭載されている“翻訳機能”の様なものは月や曜日のような物は適用範囲外らしい。文字が読めなかったり、この世界の固有名詞やこう言ったものには適用されないあたり、わりとガバガバのようだ。
「えと、これからよろしくお願いします」
お辞儀をすると目の前の彼はに、と笑って「これからよろしくな」と言った。
溜息をつきながらリングへ上がる彼方さん。少年はと言うとからからと笑い
「まぁいいじゃん。ギルマス達出ねぇし、ちょっと相手してくれよ」
と着ていた上着を投げ捨てる。上着はふわりと宙を舞うことなく、リングすぐ近くの地面(更に言うと私の真横だ)に上着にあるまじき、ドスンッという音を立てて着地した。更にあの呪いのメイスもその横に投擲された。
「ちょっとじゃないじゃん。ガチじゃん」
眉を顰める彼方さん。彼女の今の服装はTシャツにスラックス、そしてハイカットシューズというラフな格好だ。相対する少年は上着を脱ぎ捨てたのでその下に着ていた半袖の文字Tシャツとズボンにブーツ、そこに冒険者らしい(?)革手袋だ。やっぱり戦時中を題材にした映画でこんな学校の人見たことがあるかもしれない。でかでかと胸に粉砕と書かれたTシャツは見た事ないけど。
「ルールは武器有り、三分の制限付きでリングから出るか倒れたら負けな」
「人の話聞いてます?クラブ・アルジャーノン君?」
まぁ聞いてても聞いてなくても負ける気は無いけどね。と言う彼方さんの影の中から一振りの日本刀が姿を現す。丸腰対日本刀。彼のジョブはモンクか格闘家なのだろうか。そもそもそれなら何故あの呪いの装備を持ってたんだこの人、という疑問がふつふつと湧いてくる。いやほんとなんで持ってたん?
「そんじゃ、両者構え!レディー……」
結論から言うと凄かった。縦と横と止めと払いとはねを一緒に書けと言われたくらいに凄かった。そんな経験はないけど。勝敗は引き分けだったけれど、そんな事ある?って位に激しい戦いだった。両者引けを取らぬ戦い。打撃と斬撃でそんな戦いってできるんだなぁと感じさせられた。怒涛の攻めというのはこういうののことを言うんだな。ひとつ賢くなった気がする。
彼方さんの攻撃は基本的には刀による斬撃、もっといえば刺突に近い。誰かが日本刀は本来突くものだと言っていた気がするが、まさにそんな戦い方だった。一方のクラブ、と呼ばれた少年はと言うと拳である。もうシンプルであるが故に強いと言っても過言ではなさそうな感じだ。だが、ただただ殴る訳ではなく、足技だって使うし、ジャブだってする。計算された拳と言うのかもしれない。リングに拳で穴があくという事案はあったものの、試合そのものはつつがなく終わったし、二人とも怪我のひとつも無い。それどころか「アンタ手を抜いたろ」「いやお前だって」と言い合ってすらいる。軽口をたたき合う仲、という関係性のようだ。
ぼんやりとそんな二人を見ていると彼方さんと目が合う。
「こっち来なよ、きちんと紹介するから」
そう言われて少し足早にそちらへ向かう。
「ふうん、見たところ異邦人ってとこか?」
「そうそう。つい昨日この世界に来たばかりのな」
「なるほど。俺はクラブ。クラブ・アルジャーノン。この街にある蛙鳴蝉噪ってギルドに所属してる衛生兵だ」
「どうも、ところで衛生兵って前衛でしたっけ?」
聞いてしまった私は何一つ悪くないと思う。
彼はそんな私の質問に「よく言われる」と笑いながら答えてくれた。
「それはそうとしてクラブ、お前、人にもの教えてるらしいじゃん?」
「ん?まぁ、週に二、三回授業っつーかなんつーかやってるな」
「こいつ寄越すからいつやってるか教えてくんない?」
「えっ?」
「あー、問題ない。つかそれだけの為に来たろ。遠回りだなぁ」
「いやいや、今回はこいつの服の買い出しよ。こいつこれしか持ってないしさ」
「はいはい。じゃあそういうことにしといてやるわ。クソ弱そうだし、下手に誰かしらに喧嘩売ることもなさそうだしな」
さらっとディスられたが、こちとらひ弱な現代っ子だ。野山にまじりて竹を取ることも無ければ休みの日は家でゲーム三昧してた人種である。そんな負け戦決定の喧嘩を売るほどアホではない。きっと。むしろ売ったら秒で死ぬわ。
「んじゃあ決まりだな。日程は?」
「週二回。風月の日……あー、月曜日?っつーんだっけか?それと後あれ、金曜日って日な」
「だそうだ。覚えとけよ」
私にわかりやすく言い換えてくれたあたり、この私に搭載されている“翻訳機能”の様なものは月や曜日のような物は適用範囲外らしい。文字が読めなかったり、この世界の固有名詞やこう言ったものには適用されないあたり、わりとガバガバのようだ。
「えと、これからよろしくお願いします」
お辞儀をすると目の前の彼はに、と笑って「これからよろしくな」と言った。
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