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女子高生、異世界へ行く。

錬金術師と魔術師

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世界には必然で満ちている。
我々がこうして存在していることも、巡り合わせも。
まるでそれが物語ストーリーであるとでも言うかのように。

密林の雨の湿っぽい匂いが鼻腔に広がる。
遠くではスコールが降る音が聞こえてくるし、徐々に近づいてきている。この調子でいけば、あと一時間もしないうちにこちらも降り始めることだろう。
「一体なんのつもりだ」
テーブルの向かい側に座る魔術師は開口一声目でそう言った。のらりくらりとしていて掴みどころのない爺だが、こちらへの警戒は常にしていた。そう、この数日間、常にだ。
「なに、と言われましてもねェ。仕事ですよ。仕事」
疑り深い目の前の魔術師とは対称的に、こちらは口角をキュ、と上げる。いつでもビジネススマイルは大切だ。
「あの機械から我が社の人員のコアが出てきましてねェ。いえ、おかしいなとは思っていたのですよ?特定の、それの一種類のみの魔物に作用する周波数なんて。おかしいなー、なんだろなー、と皆様がお話をしておられる間にちょちょっと見てみたらなァんと!我が社の社員のコアが使われてるじゃあないですか!ああ、ちなみに彼の名前はブラッドバットと言いましてね」
「……まだ、帝国が?」
「お話が早くて助かります。ワタクシ、ボスに社員を全員連れ戻してこいと言われておりましてねェ。まだ居るようならばできる限り大事になる前にと思っております。ええ」
話しながら大袈裟な身振り手振りをするのは昔からの癖だ。しかし、この癖さえボスに出逢わず、社員として働いていなければ身につくことのなかったものである。
マグナス・オプス、大いなる業とさえ呼ばれるルベドにとってそれ程までに自身の所属する“会社”は唯一無二にして大切な物である。そしてそれはその社員をも含めて、の話だ。
「我社としては手を出したからにはタダで済まさないのが我々です」
それが人間でなくとも。自社の同じボスを頭として認めたその時から。
「残りも取り戻す必要があるのですよ。ハイ」
「それはそうとして、だ。我が家に居座る理由もあの異邦人の娘に付きまとう理由も無かろう」
眉間に皺を寄せつつこちらを睨んでくる魔術師の言葉にそんな事か、と納得がいく。
「ただの貧弱にして何も出来ない存在ですものねぇ。でもですよ?あの、魔眼の娘の店に吸い寄せられるように辿り着き、帰る方法があると聞きながらこの世界に残り、帝国軍に遭遇したり王様謁見しちゃったりなんかしちゃって!……これってぇ、主人公みたいじゃないですかぁ?わぁざわざ、帰る選択肢まで蹴っちゃってぇ」
まるでそれが正解であるかのようにこんな所にとどまっているなんて、正気の人間のすることじゃない。
「そうは思いませんか?宮廷魔術師筆頭、ダレン・アーチボルト殿」
聡明な彼は思い当たる節があるのか、顔を顰めたまま、眉間のしわをより一層深くした。
「つまり、このままあの子と居ればお前さんの会社の社員が、他にも同じ様な目に遭っていれば出会える、と?」
「頭の回転の速いニンゲンは好ましいですねぇ」
にこにこと笑みを浮かべる。彼は相変わらず納得のいかない顔をしている。
「この家の中で面倒ごとは起こすなよ」
「それはもちろん」
そんな会話の直後であった。「え゛ぁーーーーーーーーー?!」などという素っ頓狂な悲鳴が家の中を響き渡ったのは。
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