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女子高生、異世界へ行く。
本からとび出てなんとやら
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何事だ?!と家主たる魔術師とこいつ面白がってないか?と思える顔の錬金術師が部屋に入ってきた時には本の光は徐々に収まってきていた。
「ほ、本!本本本!本がこうビカーッ!ってなった!本!発光した!」
「落ち着かんかお前さんは。……うむ、魔導書か」
曖昧な表情で光の収まりつつある本を見つめるダレンさん。そして自分自身の顎に左手をあて、考える様な素振りを見せる。
「……なるほど、一理ある。か」
ボソリとそうひとりごちると魔術師は本を拾い上げ、私に投げて寄こした。投げてよこされた私は咄嗟にトスを上げてすぐそこに居た錬金術師に渡したがそのまま打ち返されて手元に戻ってきた。
「何やっとるんだ、お前さんは。その本、開いてみるといい。今なら読めるかもしれんぞ」
「えっマジですか?」
人間とは現金な生き物である。私はそう言われた瞬間あれ程持つのを嫌がった本を勢いよく開いた。
「た、確かに読める……」
そう、読めたのだ。
「一行だけ……」
一行目だけが日本語になっていた。後はどこの古代文字なんだと言いたくなる文字が並んでいて読めたもんじゃない。
「なんですかこれ、一行だけじゃないですか!しかもこの一行目もなんか短いし!」
「お前さんの実力がそこまでだったんだろ」
「そうですねェ」
何一つ納得がいかない。何故この場に至って私はディスられているのか。
「目覚めしは旅路を示すもの……なり?」
疑問形なのは別に最後の漢字が読めなかった訳では無い。断じてない。
読んで数秒、特に何も起こんないじゃんと言おうとした時、本の中からヌルッと褐色の腕が文字通り出てきた。私は瞬間的に本を投げ捨てた。驚きすぎて言葉も出ない。
そうこうしているうちにも本の中からそれは出てくる。腕、頭、胴体、脚。そして目の前には踊り子のような姿の褐色肌に金髪碧眼の美少女が立っていた。
「こーんにちはっ!あなたがマスターのゴシュジンサマ?」
元気いっぱい手を挙げて挨拶をしてくれたその子は「私はターニャ!よろしくね!」と自己紹介してくれた。そして本を拾い上げ、ぐるりと周りを見回す。
「え、っと……ターニャ……さん?」
「ターニャでいいよ!みんなそう呼ぶし!」
「あ、そうなんだ……じゃなくて、その、ターニャ……ちゃん?はこの本の、なんていうか、精霊とか妖精的な……?」
「ううん。全然違うよ?」
おずおずと聞いた私に彼女はバッサリと切り捨てた。
「私は魔法生物だよ。マスターがつくったお人形を依代にしてあるの」
ニコニコと笑顔でそう説明してくれたターニャちゃんにどう答えていいのか分からなくなっていると、今の今まで黙っていた錬金術師が口を開く。
「魔法生物ですか。これはまた随分と久しぶりに見ますねェ。それもここまで完成度の高いものは本当に久しぶりです」
魔法生物(マナニア)とは、魔法を使える者が魔力を依代に注ぎ込み、魂を封じ込めて作った生き物だという。
「生き物、と言うのも精密に言えば正解ではございませんがねェ。動力源たる主人を失えば彷徨うだけのガラクタに成り下がる、そういうモノです。ええ、ハイ」
「……という事は、私が……?」
「ううん。違うよ」
マスターは私展開かと思ったが違った。
「マスターはこっち!」
ターニャちゃんは本を掲げ、自慢げに言った。相変わらずの顔をした本はあの発光以来、うんともすんとも言わない。
「マスター、ってことはこの本はなんかこう……意思とかお持ちな感じで?」
「あるよ?えーっとね、あたし達のマスターはマスターで、一応マスターの持ち主だから、ゴシュジンサマ?」
「一応?」
「ほら、だってゴシュジンサマ、一行しか読めなかったでしょ?」
ぐうの音も出なかった。
おっしゃる通り過ぎて悲しみもなんもなかった。
「ほ、本!本本本!本がこうビカーッ!ってなった!本!発光した!」
「落ち着かんかお前さんは。……うむ、魔導書か」
曖昧な表情で光の収まりつつある本を見つめるダレンさん。そして自分自身の顎に左手をあて、考える様な素振りを見せる。
「……なるほど、一理ある。か」
ボソリとそうひとりごちると魔術師は本を拾い上げ、私に投げて寄こした。投げてよこされた私は咄嗟にトスを上げてすぐそこに居た錬金術師に渡したがそのまま打ち返されて手元に戻ってきた。
「何やっとるんだ、お前さんは。その本、開いてみるといい。今なら読めるかもしれんぞ」
「えっマジですか?」
人間とは現金な生き物である。私はそう言われた瞬間あれ程持つのを嫌がった本を勢いよく開いた。
「た、確かに読める……」
そう、読めたのだ。
「一行だけ……」
一行目だけが日本語になっていた。後はどこの古代文字なんだと言いたくなる文字が並んでいて読めたもんじゃない。
「なんですかこれ、一行だけじゃないですか!しかもこの一行目もなんか短いし!」
「お前さんの実力がそこまでだったんだろ」
「そうですねェ」
何一つ納得がいかない。何故この場に至って私はディスられているのか。
「目覚めしは旅路を示すもの……なり?」
疑問形なのは別に最後の漢字が読めなかった訳では無い。断じてない。
読んで数秒、特に何も起こんないじゃんと言おうとした時、本の中からヌルッと褐色の腕が文字通り出てきた。私は瞬間的に本を投げ捨てた。驚きすぎて言葉も出ない。
そうこうしているうちにも本の中からそれは出てくる。腕、頭、胴体、脚。そして目の前には踊り子のような姿の褐色肌に金髪碧眼の美少女が立っていた。
「こーんにちはっ!あなたがマスターのゴシュジンサマ?」
元気いっぱい手を挙げて挨拶をしてくれたその子は「私はターニャ!よろしくね!」と自己紹介してくれた。そして本を拾い上げ、ぐるりと周りを見回す。
「え、っと……ターニャ……さん?」
「ターニャでいいよ!みんなそう呼ぶし!」
「あ、そうなんだ……じゃなくて、その、ターニャ……ちゃん?はこの本の、なんていうか、精霊とか妖精的な……?」
「ううん。全然違うよ?」
おずおずと聞いた私に彼女はバッサリと切り捨てた。
「私は魔法生物だよ。マスターがつくったお人形を依代にしてあるの」
ニコニコと笑顔でそう説明してくれたターニャちゃんにどう答えていいのか分からなくなっていると、今の今まで黙っていた錬金術師が口を開く。
「魔法生物ですか。これはまた随分と久しぶりに見ますねェ。それもここまで完成度の高いものは本当に久しぶりです」
魔法生物(マナニア)とは、魔法を使える者が魔力を依代に注ぎ込み、魂を封じ込めて作った生き物だという。
「生き物、と言うのも精密に言えば正解ではございませんがねェ。動力源たる主人を失えば彷徨うだけのガラクタに成り下がる、そういうモノです。ええ、ハイ」
「……という事は、私が……?」
「ううん。違うよ」
マスターは私展開かと思ったが違った。
「マスターはこっち!」
ターニャちゃんは本を掲げ、自慢げに言った。相変わらずの顔をした本はあの発光以来、うんともすんとも言わない。
「マスター、ってことはこの本はなんかこう……意思とかお持ちな感じで?」
「あるよ?えーっとね、あたし達のマスターはマスターで、一応マスターの持ち主だから、ゴシュジンサマ?」
「一応?」
「ほら、だってゴシュジンサマ、一行しか読めなかったでしょ?」
ぐうの音も出なかった。
おっしゃる通り過ぎて悲しみもなんもなかった。
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