ドスグロ団地

charmee

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インタビュー一周目

管理人Aへのインタビューを終えて

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白髪で小柄の優しそうな男性。

オデコの髪の毛は後退し、頭頂部もよく見ると薄い。

お調子者のような話し方は彼なりの演出だろう。

悪い人間には見えないが、管理人としては何とも頼りない。

逆にその辺が子供にも懐かれる理由かもしれない。

汚れたグレーの作業服。管理会社から支給されたものか自前かはわからないが清潔感は無い。


彼が第一発見者とはなんとも不憫である。

遺体を発見して慌てふためく姿が目に浮かぶ。

きっと警察への説明も要領が悪かったに違いない。

彼はもちろん、ここに住んでいるわけではない。毎朝、大体8時前には管理人室に出勤するとの事。

そんなに忙しいのかたずねると

「やる事を探すときりがない。探さなければ楽な仕事。」だそうだ。なるほど。

夏は草取り、冬は雪かき、設備の不具合の点検、軽微な修理まで管理人が行うらしい。

敷地内に建物が4棟あった、いわゆる団地としても体を成していた頃は毎日業者が共有部分を清掃していたが、今は年末の大掃除を除きA氏が清掃しているそうだ。


割に管理人室は綺麗とは言えなかった。

オシャレではない学生の一人暮らしの部屋と言ったところか。

床にはスロットの必勝本が何冊か無造作に置かれている。

敷かれた絨毯にはところどころシミがある。

コタツは万年出しっぱなしだろう。

コタツの天板とテーブルの間に1000円を挟めているのがハミ出して見えている。


あまり長居はしたくないところだ。


何にせよ大した情報は得られなかった。

203号のH氏から電話があり駆けつけた。

電話が来た時、管理人室には子供が居た…と。


住人へのインタビューに期待したいところだが、きっとみんな忘れたい過去だろう。

せっかく落ち着いた所に、二流記者がホックリ返しにきたのだ。

煙たがられても仕方ない。

ニイサカは深くため息をついた。

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