ドスグロ団地

charmee

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インタビュー一周目

103号男性Dへのインタビューを終えて

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D氏はよく喋る変わった男だった。

よく言う「悪い奴では無いんだけどな…」と言うタイプの人間だ。

お香のニオイは101のB氏の言う通りキツかった。

ニイサカはニオイが移っていないか自分のシャツを嗅いでみた…がよく分からなかった。

昔からあるロング缶の甘過ぎるコーヒーのフタを空ける。

甘党な訳では無い。自販機でブラックコーヒーが売切だったのだ。


B氏の言う不自然な来客は宗教関係だったわけだ。

D氏はそこに引け目を感じている様子は無く隠すような態度もなかった。

部屋には御札やパンフレット、隅の方にはペットボトルの水も大量に置かれていた。


204の住人が亡くなった日、D氏もまた部屋にいたと言う事だ。

2階からの「何か倒れたような音」を確かに聞いている。

103からみて204は斜め上に位置するので、在室であれば確実に聞こえるだろう。

しかも12時過ぎだった事まで分かっていた。この辺も他の住人との「昼頃」と言う証言と相違ない。

D氏は防犯カメラが機能していない事を知らなかった。

警察が到着した時、2階のサラリーマンを1階で見かけたと言うのは少し気になるが、それもまたD氏の言う通り本件とは無関係であろう。

色々話してくれた割に、まとめるとこの程度か。

ニイサカはここまでインタビューを進めてみて、同じ建物に住んでいてもここまで関係性は希薄なものかと思った。

が…すぐに自分のマンションの事を思い浮かべ、それが一般的なのかもしれないと思い直した。

自分のマンションで人が死んだら…事件性があるかも知れないと言われたらどうだろう。

特に気にせず住み続けるかもしれない。

そして周りの住人の事を聞かれても、きっと答える事ができない。

そんなものだ。

それでもさっき一瞬でも「希薄な関係」だと感じたのは、自分がスクープに繋がる情報を欲していて上手く行っていないからだ。

気を取り直して104のイケメンに会いに行こう。

何も無いようであれば早目に切り上げるのもアリだな。

さっき空けた甘いコーヒーを一気に飲み込む。

それをニイサカは美味しくないと思った。
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