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鈴音からの手紙『置き去りのヴァイオリン』
しおりを挟むうちがゆうちゃんと出おうたんは、六歳の頃、幼稚園の中でや。
初めはうっとおしい奴やった。
「なんで無理してまでそんな話し方してんだよ。」
「おまえ、普通にしてたらきれいなのにな。」
そんなことを永遠と言いおる。
うちはなんで関西弁を喋るんか誰にも話しゃせんかった。
親にも言わんし、ゆうちゃんにも絶対言わんかった。
ゆうちゃんと出会って、しばらくしてからおじいちゃんが死んだ。
日本ではよくある脳卒中っつぅ病気やった。
あん頃のうちはようわからんくてな。
うちがヴァイオリンをうま弾けへんのが悪いって思ったんや。
やから、ひたすらに引いた。
幼稚園にも行かんと、弾き続けた。
どんなに手が早く動くようになっても、全然楽しゅうなかった。
どんな難しい曲を弾けるようになってもおじいちゃんは帰って来んかった。
それでも、まだ足りんのや、まだうちが下手なんや。って自分を責め続けてた。
そんな時や、ゆうちゃんがうちの部屋の窓ガラスを割って入ってきたんわ。
「お前、毎日ずっと引いてるな」
「…」
うちは茫然としとった。
そんころ、飯も食わんとずっと部屋に籠っとったから、動くもんも久しぶりに見たんや。
それで久しぶりに見るもんが、窓ガラスをグーパンチで割るゆうちゃんやで。そりゃ頭はついて行かんわ。
「こんな真っ暗な部屋で、寂しくないのか?」
「…寂しい」
「ずっと弾いてて楽しいのか?」
「…楽しくない」
「なら、俺と来いよ! 楽しい遊び沢山教えてやるからよ!」
そういうて血まみれの手を差し伸べて来たんやでゆうちゃん。
覚えてるか? そりゃ、覚えてるわな。
うちはまだ夢に見るわ。あんときもし、ゆうちゃんが来てくれんかったらうちは一生あの部屋の中に閉じこもってヴァイオリンを弾き続けたかもしれん。
そもそも生きてるかも分からへん。
やからゆうちゃんはうちの命の恩人なんや。
ありがとうな、ゆうちゃん。
今日まで、ありがとう。
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