現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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異世界旅行の始まり

【赤土の大地】小国の闘技場で魔界ランキング1位と2位が戦うなんてどう考えてもおかしい

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──手術より6時間前──
午後6時頃【赤土の大地】にて


「クリム様、そろそろ夜の時間です」

きらびやかな王室で、黒髪黒眼の細目のメイドが白の騎士装束に身を包んだ赤髪赤眼の美しい女王クリム・フラムに話しかける。

「ああ、ありがとう。ライリ。じゃあ、街の様子を見てくるよ」

ライリと呼ばれた細目のメイドは、クリムの後ろをついていく。

「ついて来なくてもいいんだぞ」

「いえ、あなたを守るのが私の役目ですので。どこまでもお供しますよ。」

「ありがとうライリ。……少し聞いてもいいか?」

「突然どうなされたのですか、クリム様」

「お父様との王位奪還戦……どちらが勝つと思っていた?」

ライリの眉がぴくっと動いた。

「当然クリム様です。」

「ライリは嘘をつくとき眉が動く。相変わらずだな」

クリムはにこにこと笑う。
ライリは眉を抑え、恥ずかしそうに顔を伏せた。

「いえ、正直申しますとお父様の黒の障壁を貼りながらマリオネットで攻め、背後からコウモリで噛み付くこすい……いえ、堅実な闘い方に攻略法があるとは思いませんでした。」

「実際攻略出来たわけでもないしな。あれは力技で強引に押し切っただけだ」

「クリム様の力があってこそですよ」

「いや、ライリのラインブレードなら攻略できるんじゃないか?」

「まさか、障壁を超えれないことには……」

ライリはフラム家の直属のメイドだ。代々フラム家の国王に仕える優秀な一族で、家事や身の回りの世話はもちろん戦闘技術まで受け継がれている。

継剣ラインブレードはその第一継承者の証しで特異な能力を持つ。

                   ***

イタリアの郊外を模した妖しくも美しい街並みは、夜になると活気が増す。

吸血鬼たちは昼間カーテンを閉め光に当たらぬよう寝ているが、夜になるとスーツに身を包み外に出かけるのだ。

この日、クリムの妹であるフレイヤも外に出ていた。

(何か悪い予感がする…)

真っ黒なレースのついたワンピースを着た、もこもことした金髪、ルビーのような澄んだ赤眼を持つ彼女はこっそり城を抜け出していた。

フレイヤは、手に持った青いクリスタルを見つめる。よく見るとその中心は白く光っていた。

不吉を知らせる結晶スライトクリスタルが白くひかってる…白に何かあるんだわ)

噴水のある開けた広場で、きょろきょろとあたりを見回す。白い光、白いチラシ、白いケーキ……それらしきものは見当たらない。

(どうしよう、早く見つけなきゃ……)

フレイヤは街の喧騒に消えていく。

                   ***

城から出た2人は近くの噴水のある開けた広場で立ち止まる。

「今日はどこに行こうか」

「そういえば闘技場に魔族ランキング1位の彼女が来ているそうですよ」

「おっ!それは見に行くしかないな!」

2人はそのまま路面電車に乗り北東にある闘技場を目指した。

グランドレッドは、東京都ほどの面積しかない小国である。国の端から端まで路面電車を使えば3時間とかからないだろう。

クリムとライリがおしゃべりをしながら電車に乗っていると、嫌でも目立つ。しかし、紳士な国民たちは話しかけることはしない。プライベートな時間を汚したくないのだ。

「闘技場はやっぱり遠いなー!やっとついた!」

「路面電車のおかげで、大体1時間でついたんですからよしとしましょう」

闘技場と呼ばれる、巨大な円形の建物の前で、電車は止まった。

魔族の数はどこよりも多く、沢山の種族が見えた。
妖精族、アンデッド族、ヴァンパイア族、ゴーレムやスライム、デュラハンなど人型でない種族もいた。
クリムはぴょんと高く跳ね上がり一気にコロッセオの一番高い席まで跳躍する。ライリもその隣に跳躍した。

コロッセオ内はほぼ満席で、物凄い熱気だ。ナイターでの試合を見やすくするため、大型のライトがコロッセオを照らす。

他国からの観戦もよしとしているのでスーツ姿だけでなく、沢山の衣装が入り混じっているのがクリムには見えた。

また反対側の特別席には、アロハシャツを着た青年風な男、元国王であるクリムゾン・フラムがいた。

(お父様……? お父様も魔界ランキングに興味あるのか?)

『さあさ、お待ちかねー!魔界ランキング第1位にして、囚われの悪魔、ジェード・グリーン!!!』

鎖に繋がれた、緑色の長髪の女が現れる。

見るものを魅了する圧倒的美貌と肉欲を具現化したかのような豊満で理想のボディーラインを布面積の少ない黒い水着で見せつける。

「ふぁ~。今日はどの子がたべられたいの?♡」

170cm前後の体と同じ大きさの鎌がどこからともなく現れ、それをジェードは抱きしめた。

『我が国の王女クリム様ですら勝てるかわからない圧倒的存在に挑むのは……!』

「むっ」「抑えてください、一国の王女が負けるわけにはいけません」「確かにそうだが……」

『齢12にして最強!魔界ランキング第2位、旅人クラリス・クライス!』

「今日こそは勝つわ!」

桃色のツインテールをふらふらと揺らし、防御力の低そうな白のワンピースと2本の大剣白の夢ヴァイスメア黒の夢シュバルツメアを装備し、堂々とした顔つきで現れる。

「「うおおおおおおお!」」

「クラリス対ジェードだと……!会場が吹き飛ぶんじゃないか!?」

「最悪死人が出ますね、結界魔法を張っているようですがどうなるか……」

「それにしたってどうやってあの2人を呼んだ!?」

「ジェード様は元々全国ツアーでうちに回って来たというだけですが、クラリス様はジェード様の参加を聞きつけ飛び入りだそうです」

「そうなのか?相変わらずだなクラリス」

クリムは、右手に炎を宿し、強く握った。炎の中から剣の柄が現れ、それを一気に引く抜くと刀身120cmほどの黒い剣悪魔の夢デモンメアを呼び出した。

「あら、お客さんみたいね。」「あっ、クリムじゃない!?そういえばここ、クリムの国だったわね」

ジェードとクラリスは、強大な魔力を感じクリムの目をじっとみた。

クリムは目で、見させてもらうぞ、と笑いかける。

『世紀の一戦となること間違いないなし!それではスタートおおおおお!』

「行くわよジェード!」

白と黒2色の双剣を抜き、ジェードに突っ込む。

「あなたとはやり飽きたわぁ」

ジェードはあくびをしながら、呪文を唱えた。
すると、地面から数多もの黒い手がクラリスを襲う。

『早速出ました【魔神の手ジェードハンド】!!広範囲にして、超強力!その手で握りつぶせないものは何も無い!!クラリス選手、片っ端から切り刻んでいきます!』

「誰が選手よ!……ああ!もう!この手何度見てもうっとおしい!近付けないじゃない!!」

クラリスが切っても切っても、黒い手が現れ次第に後退していき、クラリスとジェードの距離はどんどん遠のいていく。

「あっ、そういえば鎖とれるんだったぁ」

鎌を地面にさして、ジェードは両手の鎖を取り外した。

「ああ、もういやー!出てきて、クラリア!」

そう叫ぶと、黒と白の剣が煌々と光り、クラリスの背中を守るようにうり二つの無表情な短髪の少女が現れた。

その手には、クラリスと同じ黒と白の大剣が握られている。

「クラリス、もう助けてほしいの?」「だって、めんどくさいんだもーん!」「はぁ、いいよ。凌ぎきってみせる。」

そう言うと、クラリアは二つの剣を虚空に向かって振りきった。すると、全ての魔神の手ジェードハンドは切り刻まれる。

『ああっと!ここでクラリア登場!クラリスの分身であるクラリアには熱狂的なファンも多いー!!!』

「クラリアちゃん、もう出てきたの?相変わらずのハチャメチャぶりね」

「ジェードねぇさん、お久しぶり。僕もいいかげん勝ちたいな」「2人でね!」

「ふふふ、二人がかりで責めてくるなんて燃えるじゃない? おいで、黄泉までひきづりこんであげる」

魔神の手をジェードの肩を掴むと、黒の翼の形に変わった。

大きく飛び上がり、呪文を唱える。
すると、ステージ全面を覆い尽くすほどの巨大な手がふたりを襲う。

「関係!」「ない!」

2人は跳躍し、魔神の手に向かって両刀で切りつける。

「単純ね、そういうところ可愛くて好きだけど」

「「なっ!」」

黒い手を盾に、翼を使い距離を詰めてたジェードは上空から大鎌を振りかざす。

とっさに2人は剣を交差させ、守備体制をとるが大鎌の威力に吹き飛ばされる。

クラリアは、着地点をみると、禍々しい魔神の手が2人を待ち構えていた。

(あれに触れると精神を持ってかれる……!)

クラリア落下しながら眼前に3つ3色の火の玉を出した。そのうちの一つ、青色の炎を噛みつく。

地面とクラリアたちの間に、全長2.5mほどの青色のエイが現れ、2人を受け止め、魔神の手から距離をとるように空を飛んだ。

「きゃあ!」「クラリス、目つぶらないで」「だって、怖いんだもん!えっ、またあんなに出てきてるの!?」

「余所見しちゃ嫌よ♡」

ジェードはいつの間にかクラリス達の隣、エイの上に乗っていた。

クラリスとクラリアは目をぱちくりと開き、悟った。

殺される。

下からは魔神の手、目の前には最強の鎌、逃げるとしたら……

「「上しかない!!」」

2人を上空を見上げたその瞬間───




ピィィィィン!!!!




甲高い鳴き声が国中に響き渡る。

「これは……」

ジェードたちの動きが止まった。エイは怯え、ふるふると震えていた。

「ここで会ったが100年目」「クラリア100年も私達生きてないわ!」

「ふふふ♡来たわね!白龍!!!」

観客席は混乱していた、団子になり出口を一斉に目指し始めた。

『おおーっと!!!ここでまさかの白龍の襲来だぁあああ!!!!皆さん、押し合わず避難してください!!私も逃げましょう!!それでは実況の、山田でした!失礼!!!』

「ライリ!」「まずいですね!!」

クリムとライリは、急ぎ元国王の元へ向かう。

                    ***

(来てしまった……!白の不吉……)

フレイヤはコロシアム付近の坂道でその光景を見ていた。

スライトクリスタルの輝きは増していき、その時が近いことを知らしている。

暗い雲を打ち破り、白く光る2mクラスの翼竜たちがグランドレッドに突っ込んできた。

そして、5mの巨体をもつ白龍が後からコロシアムに向かって膨大な質量を持つ白い光線を吐き出す。

これが、魔界史上2回目の龍の襲来だった。

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