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【外伝】旅の理由
【クリム・フラム】魔界最大戦力を持ちながら、小国の我が国はどう考えてもおかしい。
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火山の国赤土の大地。年中暗く重たい雲が覆うこの国は、東西南北四つの巨大な火山に囲まれた異質な国だ。
中心に王家の住む黒い西洋の城グランドレッド城を構え、それを囲うようにイタリア郊外のような城下町が栄えている。
火山からとれる鉱石は、魔界で最も硬く、最も鋭い。他国からやって来たドワーフたちは、主にその鉱石を加工する仕事を生業にしている。
さびれたレンガ調の町並みに住む国民は、商店街や闘技場、学び舎などに陽が沈むと通い不自由のない生活を送っていた。
グランドレッドには人型の魔族が多く住んでいる、特に多いのが吸血鬼だ。キャンディの幸福のお菓子に住む妖精族が甘く可愛いものを好むのに対し、グランドレッドの吸血鬼は辛くスリルのあるものを好む。男性も女性もスーツのような礼服に身を包み、身だしなみや作法を重んじる種族だ。容姿も美男美女が多く妖艶な体つきをしている。人間を誘惑し、人間の生き血を吸い眷属を増やす彼らにとって肉体は、人間を魅了するものの方がいい。
グランドレッド城の城主である、クリム・フラムは、白の騎士風のジャケットに身を包み事務処理をしていた。そのほとんどが国民の食糧調達に関する問題だ。人族の大半が絶滅してしまった今、獣人の血がほとんどであり、純血を手に入れることは難しい。これまで最大戦力を持っていながら国交がうまくいかなかったのには、この純血が関係している。土地と純血のトレードや、国の2割の財産と人族50人の取引など愚かとしか言えない交易を何度もしてきた過去があり、外国からすれば、とりあえず人族をちらつかしとけば黙る国だと思われている。クリムは、頭を抱え玉座にもたれかかった。
クリムが玉座につくまでの道のりは決して平坦ではなった。悪魔でも吸血鬼でもない彼女は、王家の中でも嫌われ者だったのだ。
5つ離れた兄や姉たちにも髪の色が違うといじめられ、義理の父からは暴力的な武術の指導を受け、それでも彼女は一度も自分や母を責め、己を曲げることはなかった。母は辛ければ逃げてもいいと言って優しくクリムの頭を撫でたが、クリムはただ真っ直ぐに前を見つめ、自分のなすべきことを淡々とこなしていく。
そうしているうちに大きな変化が現れ始める。5つ下の臆病な妹フレイヤが、兄や姉のいじめの間にわってはいったのだ。父と同じ金髪のブロンズの髪に母親の赤い瞳に映る小さな勇気。兄と姉はその姿を見て、拳を突き上げるのを辞めた。妹は、このとき人の年齢に換算すると小学二年生ほどで、真っ黒なワンピースを着ていて人形のように可愛らしい。兄ブレイムと姉ブレイスは双子で我儘なところがあり喧嘩ばかりしていた。夢見がちな2人は、20になると世界旅行に出てしまった。国を治めることに興味がないようで、クリムに丸投げしたのだ。
クリムが18になると王位継承の話が持ち上がったが義理の父は、王位をクリムに継がせることを反対した。しかし、妹フレイヤの説得もあり決闘で勝てば認めるということになった。
魔法と剣術、召喚術を競い合う2人の決闘は闘技場で行われ、どちらが勝つか国民は真二つに割れた。
幻術と鉄壁の障壁を生み出す、現国王の鉄壁の守りが勝つか、それともクリムの7色の使い魔と剣術の攻撃力が勝つか。クリムに最高の剣を授けた武器職人たちは皆クリムが勝つと言い張り、国王に防具を作ったドワーフたちは国王に賭けた。吸血鬼たちはクリムの境遇と努力を知る者は情でクリムに入れ、知ったうえでも現実は甘くないと国王に入れるものもいた。
重たい鐘の音を合図にクリムは次から次へと使い魔を出し、怒涛の連携攻撃を仕掛けるも、100、1000と増えていく国王の幻影魔術、【影の人形】により的を絞れない。さらにコウモリを自在に操る四方八方からの攻撃により不意を突かれ、徐々に摩耗するクリム。その様子を見て妹を始め沢山の国民がクリムを応援した。何度倒れても、どれほど血を流してもクリムは何度でも立ち上がる。クリムは国王にならなくてはならない理由があった。それは、魔族随一の攻撃力と魔法力を誇りながらも領地を拡張できないこの不器用な国を変えるため、吸血鬼でない自分が交易の最前線に立ち、自分を育ててくれたこの国を、自分を支えてくれた母と妹に恩を返す。それがクリムの生きる意味であり、信念であった。だから、負けるわけにはいかない。
クリムは7色7番目の強力な使い魔を出し、幻影を吹き飛ばした。的を絞ったクリムは全身の力を剣先に込め炎を纏い、大きな火の矢となり国王に突っ込んだ。国王はクリムの強大な魔力を感じ、しのげれば確実に勝てると踏み、最大出力で黒い障壁を生み出した。火の矢は、障壁に直撃すると大きさを何倍にもし、障壁を打ち破ったのである。国王はクリムの火力を見誤り、クリムの剣を胸元に受けてしまった。
一晩中剣を交えあう攻防は、娘の精力を尽くした胸元への一突きで幕を閉じたのである。
その、勇敢で堂々とした戦いぶりに国民は心を打たれ、彼女について行く覚悟を決めた。この時すでに、国王を超える攻撃力を持っていた彼女が勝利するのは当然だったのかもしれない。
母はもちろん国王であった義理の父も娘の事を誇りに思った。劣悪な環境の中、鍛錬に耐え自らを高みに導き、大義をなした。国民の歓声を背に受け堂々と立つその姿はもうすでに立派な王女のものだった。
これが、異世界初のハーフバンパイアの王女が生まれた瞬間である。
しかしその2年後、
クリムに天災が襲い掛かる……。
【クリム・フラム】
全異世界魔族ランキング⋮8/19085312323
全異世界魔族攻撃力ランキング⋮1/19085312323
全異世界魔族魔力ランキング:10/19085312323
全異世界召喚士ランキング:72/5762348
中心に王家の住む黒い西洋の城グランドレッド城を構え、それを囲うようにイタリア郊外のような城下町が栄えている。
火山からとれる鉱石は、魔界で最も硬く、最も鋭い。他国からやって来たドワーフたちは、主にその鉱石を加工する仕事を生業にしている。
さびれたレンガ調の町並みに住む国民は、商店街や闘技場、学び舎などに陽が沈むと通い不自由のない生活を送っていた。
グランドレッドには人型の魔族が多く住んでいる、特に多いのが吸血鬼だ。キャンディの幸福のお菓子に住む妖精族が甘く可愛いものを好むのに対し、グランドレッドの吸血鬼は辛くスリルのあるものを好む。男性も女性もスーツのような礼服に身を包み、身だしなみや作法を重んじる種族だ。容姿も美男美女が多く妖艶な体つきをしている。人間を誘惑し、人間の生き血を吸い眷属を増やす彼らにとって肉体は、人間を魅了するものの方がいい。
グランドレッド城の城主である、クリム・フラムは、白の騎士風のジャケットに身を包み事務処理をしていた。そのほとんどが国民の食糧調達に関する問題だ。人族の大半が絶滅してしまった今、獣人の血がほとんどであり、純血を手に入れることは難しい。これまで最大戦力を持っていながら国交がうまくいかなかったのには、この純血が関係している。土地と純血のトレードや、国の2割の財産と人族50人の取引など愚かとしか言えない交易を何度もしてきた過去があり、外国からすれば、とりあえず人族をちらつかしとけば黙る国だと思われている。クリムは、頭を抱え玉座にもたれかかった。
クリムが玉座につくまでの道のりは決して平坦ではなった。悪魔でも吸血鬼でもない彼女は、王家の中でも嫌われ者だったのだ。
5つ離れた兄や姉たちにも髪の色が違うといじめられ、義理の父からは暴力的な武術の指導を受け、それでも彼女は一度も自分や母を責め、己を曲げることはなかった。母は辛ければ逃げてもいいと言って優しくクリムの頭を撫でたが、クリムはただ真っ直ぐに前を見つめ、自分のなすべきことを淡々とこなしていく。
そうしているうちに大きな変化が現れ始める。5つ下の臆病な妹フレイヤが、兄や姉のいじめの間にわってはいったのだ。父と同じ金髪のブロンズの髪に母親の赤い瞳に映る小さな勇気。兄と姉はその姿を見て、拳を突き上げるのを辞めた。妹は、このとき人の年齢に換算すると小学二年生ほどで、真っ黒なワンピースを着ていて人形のように可愛らしい。兄ブレイムと姉ブレイスは双子で我儘なところがあり喧嘩ばかりしていた。夢見がちな2人は、20になると世界旅行に出てしまった。国を治めることに興味がないようで、クリムに丸投げしたのだ。
クリムが18になると王位継承の話が持ち上がったが義理の父は、王位をクリムに継がせることを反対した。しかし、妹フレイヤの説得もあり決闘で勝てば認めるということになった。
魔法と剣術、召喚術を競い合う2人の決闘は闘技場で行われ、どちらが勝つか国民は真二つに割れた。
幻術と鉄壁の障壁を生み出す、現国王の鉄壁の守りが勝つか、それともクリムの7色の使い魔と剣術の攻撃力が勝つか。クリムに最高の剣を授けた武器職人たちは皆クリムが勝つと言い張り、国王に防具を作ったドワーフたちは国王に賭けた。吸血鬼たちはクリムの境遇と努力を知る者は情でクリムに入れ、知ったうえでも現実は甘くないと国王に入れるものもいた。
重たい鐘の音を合図にクリムは次から次へと使い魔を出し、怒涛の連携攻撃を仕掛けるも、100、1000と増えていく国王の幻影魔術、【影の人形】により的を絞れない。さらにコウモリを自在に操る四方八方からの攻撃により不意を突かれ、徐々に摩耗するクリム。その様子を見て妹を始め沢山の国民がクリムを応援した。何度倒れても、どれほど血を流してもクリムは何度でも立ち上がる。クリムは国王にならなくてはならない理由があった。それは、魔族随一の攻撃力と魔法力を誇りながらも領地を拡張できないこの不器用な国を変えるため、吸血鬼でない自分が交易の最前線に立ち、自分を育ててくれたこの国を、自分を支えてくれた母と妹に恩を返す。それがクリムの生きる意味であり、信念であった。だから、負けるわけにはいかない。
クリムは7色7番目の強力な使い魔を出し、幻影を吹き飛ばした。的を絞ったクリムは全身の力を剣先に込め炎を纏い、大きな火の矢となり国王に突っ込んだ。国王はクリムの強大な魔力を感じ、しのげれば確実に勝てると踏み、最大出力で黒い障壁を生み出した。火の矢は、障壁に直撃すると大きさを何倍にもし、障壁を打ち破ったのである。国王はクリムの火力を見誤り、クリムの剣を胸元に受けてしまった。
一晩中剣を交えあう攻防は、娘の精力を尽くした胸元への一突きで幕を閉じたのである。
その、勇敢で堂々とした戦いぶりに国民は心を打たれ、彼女について行く覚悟を決めた。この時すでに、国王を超える攻撃力を持っていた彼女が勝利するのは当然だったのかもしれない。
母はもちろん国王であった義理の父も娘の事を誇りに思った。劣悪な環境の中、鍛錬に耐え自らを高みに導き、大義をなした。国民の歓声を背に受け堂々と立つその姿はもうすでに立派な王女のものだった。
これが、異世界初のハーフバンパイアの王女が生まれた瞬間である。
しかしその2年後、
クリムに天災が襲い掛かる……。
【クリム・フラム】
全異世界魔族ランキング⋮8/19085312323
全異世界魔族攻撃力ランキング⋮1/19085312323
全異世界魔族魔力ランキング:10/19085312323
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