現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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雲のアトリエ

レベル-111が危険視されているのはどう考えてもおかしい

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「アリス、あなた方は少々厄介です。旅人の証を持っているのに、人間ですらもなく、魔族の上位を仲間にし、龍人族までもを取り入れた。あなたにはいったい何があるというのです?運パラメータも低く、特殊な能力を持っているわけでもない。なのになぜ、ここにいるんでしょうか?」

巨大空間に張り巡らせた根をしならせ、ムチのように地面に叩きつける。

「あなた自身を倒す事はスライムにだって出来るでしょう、しかしハンプティにさえそれは叶わなかった。なぜか。あなたの周りにいる方々が強すぎたからです。そして、本来あなたにそのような価値も力もない。それにも関わらずここまで来れた理由……幸運、運命。様々な捉え方が出来るでしょう。そしてそれが、どの人間よりも脅威なのです」

「ちょっと買い被り過ぎだろ……」

アリスは締め付けるような思い空気から悟る。
圧倒的な力量差、ハンプティと戦った時と同等かそれ以上の存在感。
こちらはファミリーの多くが魔族であり、戦闘力が落ちている。
分が悪いかもしれない。

「買い被り……確かにそうかもしれませんね。あなたは所詮小さきもの。しかし、退屈なモミの木でいることに疲れたのです私は。少しの快楽、少しの刺激、小さな命を刈り取ることにも多少の悦びはあるでしょう。だから私はアリス、あなたを殺すのです。確実に暗雲を呼び寄せるために」

僅かに嘲笑を浮かべると、目に見えるほどの魔力を体から溢れさせ、爆発させる。それらは木の根を伝い、拡散した。
トリートの操る眷属達は、まるで生き物のように蠢き、ファミリー達に襲いかかる。

「ここは」「私たちの出番だ!」

ファミリーを守った4本の翼。クラリアとハク、聖属性を持つ2人はめいいっぱい羽を広げ、結界を張り防御体制を取る。
四方八方から叩きつけられる幾千の鞭の乱撃に青いシャボンのような結界が後どれだけ持つかはわからない。



この空間の外に出るには……!

「みんな、頼む!1点突破だ!」

アリスは瞬時にこの場所からの脱出を決断した。
すぐさまその発言の意味を理解したファミリーは最大限の力を引き出し、ライリはそれらを地面に結ぶ。

クラリスは自らを悪魔化し、2本の黒の夢に魔力を込めて切りつけるる。
クリムはハンプティ戦で活躍した柴犬を呼び出し右手につけ、紫色の炎を纏い、地面に打ち付けた。
ジェードは魔人の足を使い、地面を突き破ろうとする。

それらのエネルギーをライリはラインブレードで結び、針のような細さでこの鉄の大地を砕こうとした。


「無駄ですよ。私の森は、誰にも壊せない」

トリートは余裕の表情を浮かべ崩さない。
彼女の紫色の結界が働き地面には傷一つ焼け跡一つ残っていない。

「なっ……!」

そもそも、これ程までの硬さを持っている敵にダメージを与えることすら困難なように思える。

「……見えました!あの木の根です!魔力を共鳴させて何倍にも力を膨張させています!」

「フレイヤ・フラム……ファミリー内で最も戦闘経験は浅く臆病な性格ですが、時間を操り未来を見据える能力者。まずはあなたからですね」

   【私は森を離れ罪を背負う】

彼女を木の根が、巻き付き肢体を締め付ける。
手足は根と同化し、細い蔦が彼女の体を這う。
手足の根はゴムのように伸び、鉄製の地面の下に潜り込むと、一瞬でフレイヤの腹に突き刺さった。

「えっ」

時間が止まる。
その根は、フレイヤの腹で枝を生やし、針のように広がった。

「はぁああああ!」

クリムがすぐに根を焼き切るが、焼き切った後も、根はファミリー達を襲おうと、枝分かれしそれぞれに襲いかかる。
ファミリーが防御体制をとったその時、

「くっ……時間の……監獄」

フレイヤはありったけの魔力を振り絞り全ての時間を止めた。
まるで写真の中にいるかのような感覚に陥る。

「フレイヤ!」

アリスは迷わず倒れたフレイヤを抱える。
他の全ての時間は止まっているが、アリスだけは動けた。
時間の監獄は空間の時間全てを独立させる能力。アリスを1度時間の牢獄で独立させた後、時間の監獄を全体に使う。
そして、時間の牢獄を解いて動ける状態にしたのだ。

「こうなると……わかってました……」
「……わかってた?? そんなことより、クリムに頼んで治療を!」

アリスは冷たくなっていくフレイヤの体を、逃さないように抱きしめる。
瞳から熱いものが溢れ出し、フレイヤの赤く染まった黒のワンピースに染み込んでいく。
アリスはこれが致命傷であり、死が近いことを悟った

「アリスさん、私の代わりに……死んでくれって言ったら……死ねますか?」
「ああ……。俺に出来ることなら何だってする」
「ふふ、迷わ……ないんですね。かっこいいです」

フレイヤの目はどんどんと赤みを増し、やがて光を失った。
本能に身をやつし、アリスの首元にキスをし、魂を吸い取る。
アリスは体を走る冷たい感触に耐えながらその時を待った。

「ありがとうございます、これが本来の私の姿です」
「人形……みたいだな」
「ふふ、よく言われます。必ず守ります、ファミリーもアリスさんも」
「ああ、あとは任せた」

アリスの体は消え、時がまた動き出す。


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