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異世界旅行の始まり
レベル-111のマシュマロが白龍を倒すのは、どう考えてもおかしい
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午後9時【赤土の大地】にて
クリムはキャンディとの交渉を終えると、眷属であるコウモリにアンテナをつけた様な生物のアンテナを押し、続けて元国王へと連絡を取る。
「お父様!」
「私なら後ろだ!」「おわぁ!」
影人形のアロハシャツがそこには立っていた。
「もうすぐライリを連れてくる!影人形でバケツリレーをしているところだ!」
「ライリ、まさかもう体力が……」
「クリムの治療術が頼りにはなる、すまない」
「いえ、あれを回避出来るとしたらライリだけでしょう。頼むぞ、グリン」
「寿命縮めるかもしんねぇぞ、クリム」
「それでかまわない。なんでもいい、ただ守りたいものがあるんだ。」
そう話していると、眷属であるアンテナコウモリが気持ち悪そうに何かを吐き出した。
それは、イエロの体の上に落ちる。
「まさかこれがキャンディの使いか!?な、なんだこの穢らわ……いや、珍妙な菓子は……? マシュマロ?いや、餅なのか?」
有栖川の姿は、数字の8のような形になっている。信じられないほどの弾力と甘さを持っていて、特徴はテクスチャで貼られたのかと思うほど、平面な0のような目が2つ均等についていることだ。
だが今はイエロの炎によって体が溶けてしまい、小さな丸いマシュマロのようになっている。
「相変わらず、キャンディのお姫様はひねくれてるようだな。」
「いけ好かねぇ女だ」
アロハとキツネはぼうぜんとするクリムを慰めるように肩を叩く。
「とにかく時間が無い!!機能さえすれば問題ない!」
クリムは今にも溶けて消えそうな有栖川をつまみ上げ、ステータスを確認した。
【マシュマロん】
レベル⋮-111
属性⋮超柔属性、菓子属性、塵属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-96
魔法防御⋮-6
素早さ⋮0
魅力⋮-99999
運⋮-85
「レベルマイナス!?なんだそれは!ちゃんと機能するのか!?」
左手に持つマシュマロをクリムは睨みつけた。
今にも消えてしまいそうな体を見て、とりあえずグリンの緑の炎を与え、元の8の字型の姿に戻す。
(ん、ここは……!なんだこの美人騎士は!天国か!?)
プルルルン。頬を赤らめ、体を揺らすマシュマロん。
確かに物凄い弾力ではあるが、このちっぽけな体であの光線を跳ね返せるのか?
クリムは不安に駆られたが、頼りになるのはこれしかないと割り切ることにした。
「そうと決まればやることはひとつ!」
(ん、あれ、白龍……!?てかこの光景!?戦争か!?やっぱり地獄じゃねぇえええか!)
マシュマロんは、恐怖のあまり体を震わせれるがクリムにとっては弾力を強調しているようにしか見えない。
「なるほど、魔族ではないのか。それなら白龍に、ダメージを与えられるかもしれんな」
「ライリが来る。クリム、悪いがしばらく寝てもらうぞ」
「構わない。全回復してやってくれ」
眠った形のライリを影人形のアロハが投げ本体アロハが受け止める。その瞬間狐がライリの上に乗り、クリムが狐の頭の上に手を置く、一瞬でクリムの意識が飛びライリがゆっくりと目を覚ます。
その瞬間──
白の巨大な光線が放たれる。
(なんじゃありゃあああ!ぜったいやばい!国一つぶっ飛ぶぞ!早く逃げなきゃ)
ぷるぷるぷる。
「ライリ!このやる気のあるマシュマロと光線を結んでくれ!」
「は、はい!」
剣に魔力を貯め線を出すも、消えてしまう。
「うそっ!」「魔力が回復していないのか!?」
絶体絶命を覚悟したその時、巨大な白の塊の動きが止まった。
***
「あなたは確か……!フレイヤちゃん!!?」
クラリスは驚いた。目の前にある圧倒的質量を、たった1人のフランス人形のような小さな吸血鬼が受け止めていたのだ。
青い円形の結界を体の前に張り、まるで時を止めているかのように閃光の歩みが止まった。
「クラリスさん!お父さんに伝えて!マシュマロをこっちに打ち込んでって!」
「マ、マシュマロ!?」「いいから!!」「もうやけだわ!わかった!」
***
「ライリ!行けるのか!?」
「このマシュマロをまっすぐ光線に打ち込めばいいのですね、容易いことです」
(ん?マシュマロって俺のこと?ははは、まさかな)
ライリは、軌道をイメージし、マシュマロを宙に投げるとラインブレードに全神経を集中させマシュマロの芯を捉えるように振り抜いた。
「くっ…!」
その瞬間、何倍もの反動がライリに伝わり、ライリは地面に叩きつけられる。
(う、うわあああああ!あれ、でも全然痛くない……?)
「な、なんか来たわ!」「流石です……!ライリさん!!」
フレイヤはマシュマロを確認すると結界をといた。
その後起こったことを理解出来たものは少ない。
(ぶじゃびぎゃぐぎゃびしゃああああ!)
マシュマロが国を破壊するほどの大きさと質量を持つ、その巨大な一撃をその小さな体で受け止める。
その瞬間、閃光は消えた。変わりに、細い光の線が白龍の胸元にある、ひし形のエメラルドを打ち砕いた。
白龍は、目を閉じ小さな少女の姿になって落ちていく。
同時にマシュマロも黒焦げになって落ちていった。
(俺、ほんといいことないなぁ。転生したら終点で死んだら終わりなのにレベル-111で、しかも菓子に変えられて、憧れのメイドさんに会えたとおもったら切りつけられて、龍に殺されるなんて、まぁ総じてメイドさんに会えたから悔いなし!あれ!幸せじゃね!?ひゃっほおおおう!)
それがマシュマロの最後の言葉だった。
***
白龍が沈むのを、空の上から見ていた者がいた。
黒を基調に赤のレースのフリフリとしたドレスとマジシャンハットを被った人間だ。
「あーあ。やられちゃったか。魔族の力も測れたし良しとしよう。そうしましょう」
【私は嘘をつく──翼竜達は全て本物だ】
彼女は、そう言うと空を歩いて自分の城に戻っていく。
***
白龍が沈むのを見るかのように、天を見上げた翼竜達はまるで全てが夢だったかのように、忽然と消えた。
「「わああああああ!」」
国中の歓喜の声がコロシアムに響き渡った。
クラリスは、フレイヤと無事を讃え合い、ジェードは地上に降りて、黒焦げのマシュマロを膝の上にのせていた。
「あなた何者なのかしら……魔族でもないようだし……」
ジェードは、座っているのがやっとだった。
黒焦げになり、何故か気持ち良さそうな顔を浮かべるマシュマロを、ぷにぷにと触る。
「フレイヤちゃん、なんなのこいつ。」
「キャンディさんの使い魔?だと思います」
フレイヤとクラリスも、マシュマロの正体が気になり、ジェードからマシュマロを受け取り色々触ってみる。恐ろしい弾力だ。
そこに、空からイエロに乗った、クリムとライリ、影人形のアロハがやってくる。
「フレイヤ!?お前こんなところにいたのか!?」
アロハは驚愕の声を上げる。
「お父様すいません、白が危ないとスライトクリスタルが教えてくれたもので」
「あれを一瞬止めたのはフレイヤ様だったのですね」
ふらふらとイエロから降りたライリは、肩にクリムを背負いフレイヤの方に歩いた。
「少しだけですけどね。本当に止めたのはこのマシュマロです。」
フレイヤはマシュマロをライリに渡す。
「キャンディ様の使い魔ですね。この弾力は素晴らしい」
ライリは、楽しそうにマシュマロを揉む。
マシュマロは夢が叶っているにも関わらず、一向に目覚める予兆はない。相変わらず気持ち良さそうな顔をして眠っている。
「ん……んん……。あれ、どうなった……」
クリムは、楽しそうなみんなの声に目が覚める。
「クリム様、グランドレッドは守れましたよ。このマシュマロが切り札になりました」
ライリは背中のクリムにマシュマロを手渡す。
「ははは、お前がやってくれたのか。……礼を言うぞマシュマロん殿。あなたは私の国の恩人だ、ありがとう。」
マシュマロんの頭を指先で撫で感謝の気持ちを告げる、クリム。マシュマロんの意識はない。
その瞬間、マシュマロんの黒いからだを青白い光が包み込む。
「こ、これは旅人の証!?……まさか人間なのか!?」
クリム、クラリス、フレイヤ、ライリ、ジェード、マシュマロに触れた者の目には、渦と剣をモチーフにした幾何学模様が映し出され、胸元からは紫色の鎖が現れる。
それは、青白い光に伸びていき消えた。
青白い光は、やがて有栖川の体を形取り、黒いTシャツにジーパンのキモオタ風な男が赤土の上に泡を吹いて転がっていた。
「今の鎖は、実物は初めて見たがおそらく間違いない……キャンディイ……貴様ぁあああああ!!!」
「嘘でしょ……私がこんなやつに!?」
「あら?新しいご主人様ね♡」
「……バタッ」
「……うみ?」
クリム、クラリス、ジェードはそれぞれに理解し戸惑い、ライリはショックのあまり気絶したが、フレイヤだけは状況を理解していなかった。
全員の体には、有栖川の左手にある。紋章と同じ紋章が刻まれている。
「これはまさか……契約か!?まずい!すぐにでも殺さねば!」
影人形のアロハは眷属を出し、キモオタを食い殺そうとする。
それをフレイヤが粉砕の迫撃を止めた結界で防いだ。
「か、体が勝手に!?ごめんなさいお父様!」
「うわああああん!もう終わりだあああ」「終わりなの?私達もう終わりなの?うわああああん!」
クリムとクラリスは子どものように泣き、ジェードは楽しそうに言う。
「良かったじゃない。これで私達ファミリーね」
人間と魔族には複数の契約がある。
今回、彼女達が有栖川と結んだのは主従契約、人間の下に魔族が立つ言わば最も屈辱的な契約なのだ。
もちろん有栖川にそんな力も知識もない。キャンディ・キャラメロンの仕掛けだ。
キャンディ・キャラメロンは、有栖川の旅人の証をいじり、条件付きで魔族と強制的に主従関係を結ぶ術式を加えたのだ。
その条件は、頭と尻を同時に触り、感謝の気持ちを抱くこと。
普通ならありえない状況だがマシュマロ状態だった有栖川にはそれをさせることが出来た。
「この、醜い生き物が私の主!?認めん!認めんぞ!」
クリムは、キモオタに近付き、ステータスを確認する。
【有栖川りょう】
レベル-111
属性⋮柔属性、塵属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-9625
魔法防御⋮-15369
素早さ⋮1.3
魅力⋮-9999999
運⋮-854421
異世界人間族ランキング⋮1782/1782位
「く、クズ属性!?なんだそれは!人間ですらないのか!?」
有栖川は体の機能や特徴は完全に人間だが、異世界に人間として認められてはいなかった。
よって、誰も彼を人間と認識できず、キャンディの罠にハマったのだ。
「しかもレベル-で、このステータス……一体どんな前世を……」
クリムは次第に不思議な感情にとらわれた。
あまりにも可哀想では……ないだろうか。このような醜い姿で産まれ、きっとあらゆる者に蔑まれたはず。
しかもこちらの世界に転生してもこの仕打ち……。
「……あんまりじゃないか、こんなのが私の主なんて!!!」
クリムは、両手を向け、自分のステータスを出す。
【クリム・フラム】
レベル:32455
攻撃力:532454
守備力:124578
魔力:432587
魔法防御:215476
素早さ:78652
魅力:53241
運:1500
そして、有栖川のステータスの改ざんを始めた。
「と、とにかく見た目だ!見た目をなんとかしたい!」
『魅力-9999999を0に戻すにはレベル30000が必要です。それでもよろしいですか』
「レベル300000!?ふざけている!どれだけの努力が必要だと思ってるんだ!」
絶望する、クリムの肩をジェードとクラリスが叩いた。
「私達も力貸すわ。こんなのが主だと格好つかないもの。」
「主様には素敵になってほしいじゃなぁい?♡」
「……すまない、出来れば力を貸してほしい」
そう言うと、ジェードとクラリスも手を出した。
数値は、クラリアの分も割られている。
『それでは有栖川りょうの魅力ステータスを1人あたり7500レベルで元に戻します。』
クリム、ジェード、クラリア、クラリスの4人のレベルが下がり、有栖川の魅力ステータスが0になる。
その瞬間、キモオタの姿から、平凡な男の姿に変化した。
『有栖川りょうの名前を変更しますか?』
続けてポップアップしたのは名前変更だ。
「有栖川は確かに呼びずらいな。」「そうね、何かいいのない?ジェード」「アリスなんてのはどうかしら?可愛いじゃない?」
「なら、そうするか。そちらの方が呼びやすい」
『有栖川りょうの名前をアリスに変更します。』
こうして、有栖川りょうのステータスはこう変更された。
【アリス】
レベル-111
属性⋮柔属性、人属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-9625
魔法防御⋮-15369
素早さ⋮1.3
魅力⋮-0
運⋮-854421
異世界人間族ランキング⋮1782/1782位
「それにしたって笑えるステータスだな」
「ほんとに!攻撃力マイナスとか意味わかんないわ」
「まぁ、これくらいはちゃめちゃな方が面白いものよ」
呆れ果てて話す3人を見て、アロハは途方に暮れとりあえず町の復興に向かった。
フレイヤは今もよくわかっていないようで、ライリの看病をしている。
そう、誰も気づかなかったのだ。白龍がアリスの横にしゃがみ。頬をつついていることに。
「お父さん……」
白龍は、8歳くらいの容姿を持つ色素の薄い青い目と青いショートヘアの少女に姿を変えていた。服は着ておらず、腕と胴体に僅かに白い逆鱗が服代わりの装備になっている。背中から自分の体と同じくらいの翼を二つ持っていた。
「「「白龍!?」」」
「いや、というよりお父さん……?」
「そういえば聞いたことがあるわ。龍族は自分を負かした者に付き従う……しかも人型で、しかもかなり若い、何この龍?本当にあの白龍なの?」
「ねぇ、あなた。可愛いわね。おいくつなの?」
指を1本ずつ立てていき、3本立てるとジェードの方に向けて答える。
「……3さい」
「「「3歳!?」」」
「3歳に国を滅ぼされかけたのか!?」
「私達3歳に負けかけたの!?」
「いや、それよりもこれを見て」
ジェードは、白龍の手の平にうっすらと見える紋章を指す。それはアリスの紋章だった。
「えーっとつまり?」「まさか」
「この子も私達のファミリーね」
「「えええ!」」
クリムとクラリスはあまりの出来事に倒れてしまいそうになる。ジェードは相変わらずニコニコとしていた。
「あの……どうかしましたかって、だれ!?」
「お母さん……!」
白龍は目を輝かせ、フレイヤに抱きついた。
「お、おおおおかあさん!?なんで!?」
フレイヤが慌てていると、ジェードが納得したように手を叩いた。
「ああ!なるほど!粉砕の迫撃を真っ向から止めたフレイヤちゃんをお母さん、跳ね返した御主人様をお父さんって認識したのね!」
「いや、それで納得出来るか!」
「そんなことどうでもいい、もっと大変な問題があるでしょう!」
「ええええ!私まだ恋もしたことないのに子どもが出来たんですよ!?」
「それよりもよやばいことがあるのよ!」
「がーん!」
クラリスは、翼をバタッとはためかせ、アリスを指差し、叫んだ。
ここに寝ているコイツが、異世界中の標的になったということよ!!!
クリムはキャンディとの交渉を終えると、眷属であるコウモリにアンテナをつけた様な生物のアンテナを押し、続けて元国王へと連絡を取る。
「お父様!」
「私なら後ろだ!」「おわぁ!」
影人形のアロハシャツがそこには立っていた。
「もうすぐライリを連れてくる!影人形でバケツリレーをしているところだ!」
「ライリ、まさかもう体力が……」
「クリムの治療術が頼りにはなる、すまない」
「いえ、あれを回避出来るとしたらライリだけでしょう。頼むぞ、グリン」
「寿命縮めるかもしんねぇぞ、クリム」
「それでかまわない。なんでもいい、ただ守りたいものがあるんだ。」
そう話していると、眷属であるアンテナコウモリが気持ち悪そうに何かを吐き出した。
それは、イエロの体の上に落ちる。
「まさかこれがキャンディの使いか!?な、なんだこの穢らわ……いや、珍妙な菓子は……? マシュマロ?いや、餅なのか?」
有栖川の姿は、数字の8のような形になっている。信じられないほどの弾力と甘さを持っていて、特徴はテクスチャで貼られたのかと思うほど、平面な0のような目が2つ均等についていることだ。
だが今はイエロの炎によって体が溶けてしまい、小さな丸いマシュマロのようになっている。
「相変わらず、キャンディのお姫様はひねくれてるようだな。」
「いけ好かねぇ女だ」
アロハとキツネはぼうぜんとするクリムを慰めるように肩を叩く。
「とにかく時間が無い!!機能さえすれば問題ない!」
クリムは今にも溶けて消えそうな有栖川をつまみ上げ、ステータスを確認した。
【マシュマロん】
レベル⋮-111
属性⋮超柔属性、菓子属性、塵属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-96
魔法防御⋮-6
素早さ⋮0
魅力⋮-99999
運⋮-85
「レベルマイナス!?なんだそれは!ちゃんと機能するのか!?」
左手に持つマシュマロをクリムは睨みつけた。
今にも消えてしまいそうな体を見て、とりあえずグリンの緑の炎を与え、元の8の字型の姿に戻す。
(ん、ここは……!なんだこの美人騎士は!天国か!?)
プルルルン。頬を赤らめ、体を揺らすマシュマロん。
確かに物凄い弾力ではあるが、このちっぽけな体であの光線を跳ね返せるのか?
クリムは不安に駆られたが、頼りになるのはこれしかないと割り切ることにした。
「そうと決まればやることはひとつ!」
(ん、あれ、白龍……!?てかこの光景!?戦争か!?やっぱり地獄じゃねぇえええか!)
マシュマロんは、恐怖のあまり体を震わせれるがクリムにとっては弾力を強調しているようにしか見えない。
「なるほど、魔族ではないのか。それなら白龍に、ダメージを与えられるかもしれんな」
「ライリが来る。クリム、悪いがしばらく寝てもらうぞ」
「構わない。全回復してやってくれ」
眠った形のライリを影人形のアロハが投げ本体アロハが受け止める。その瞬間狐がライリの上に乗り、クリムが狐の頭の上に手を置く、一瞬でクリムの意識が飛びライリがゆっくりと目を覚ます。
その瞬間──
白の巨大な光線が放たれる。
(なんじゃありゃあああ!ぜったいやばい!国一つぶっ飛ぶぞ!早く逃げなきゃ)
ぷるぷるぷる。
「ライリ!このやる気のあるマシュマロと光線を結んでくれ!」
「は、はい!」
剣に魔力を貯め線を出すも、消えてしまう。
「うそっ!」「魔力が回復していないのか!?」
絶体絶命を覚悟したその時、巨大な白の塊の動きが止まった。
***
「あなたは確か……!フレイヤちゃん!!?」
クラリスは驚いた。目の前にある圧倒的質量を、たった1人のフランス人形のような小さな吸血鬼が受け止めていたのだ。
青い円形の結界を体の前に張り、まるで時を止めているかのように閃光の歩みが止まった。
「クラリスさん!お父さんに伝えて!マシュマロをこっちに打ち込んでって!」
「マ、マシュマロ!?」「いいから!!」「もうやけだわ!わかった!」
***
「ライリ!行けるのか!?」
「このマシュマロをまっすぐ光線に打ち込めばいいのですね、容易いことです」
(ん?マシュマロって俺のこと?ははは、まさかな)
ライリは、軌道をイメージし、マシュマロを宙に投げるとラインブレードに全神経を集中させマシュマロの芯を捉えるように振り抜いた。
「くっ…!」
その瞬間、何倍もの反動がライリに伝わり、ライリは地面に叩きつけられる。
(う、うわあああああ!あれ、でも全然痛くない……?)
「な、なんか来たわ!」「流石です……!ライリさん!!」
フレイヤはマシュマロを確認すると結界をといた。
その後起こったことを理解出来たものは少ない。
(ぶじゃびぎゃぐぎゃびしゃああああ!)
マシュマロが国を破壊するほどの大きさと質量を持つ、その巨大な一撃をその小さな体で受け止める。
その瞬間、閃光は消えた。変わりに、細い光の線が白龍の胸元にある、ひし形のエメラルドを打ち砕いた。
白龍は、目を閉じ小さな少女の姿になって落ちていく。
同時にマシュマロも黒焦げになって落ちていった。
(俺、ほんといいことないなぁ。転生したら終点で死んだら終わりなのにレベル-111で、しかも菓子に変えられて、憧れのメイドさんに会えたとおもったら切りつけられて、龍に殺されるなんて、まぁ総じてメイドさんに会えたから悔いなし!あれ!幸せじゃね!?ひゃっほおおおう!)
それがマシュマロの最後の言葉だった。
***
白龍が沈むのを、空の上から見ていた者がいた。
黒を基調に赤のレースのフリフリとしたドレスとマジシャンハットを被った人間だ。
「あーあ。やられちゃったか。魔族の力も測れたし良しとしよう。そうしましょう」
【私は嘘をつく──翼竜達は全て本物だ】
彼女は、そう言うと空を歩いて自分の城に戻っていく。
***
白龍が沈むのを見るかのように、天を見上げた翼竜達はまるで全てが夢だったかのように、忽然と消えた。
「「わああああああ!」」
国中の歓喜の声がコロシアムに響き渡った。
クラリスは、フレイヤと無事を讃え合い、ジェードは地上に降りて、黒焦げのマシュマロを膝の上にのせていた。
「あなた何者なのかしら……魔族でもないようだし……」
ジェードは、座っているのがやっとだった。
黒焦げになり、何故か気持ち良さそうな顔を浮かべるマシュマロを、ぷにぷにと触る。
「フレイヤちゃん、なんなのこいつ。」
「キャンディさんの使い魔?だと思います」
フレイヤとクラリスも、マシュマロの正体が気になり、ジェードからマシュマロを受け取り色々触ってみる。恐ろしい弾力だ。
そこに、空からイエロに乗った、クリムとライリ、影人形のアロハがやってくる。
「フレイヤ!?お前こんなところにいたのか!?」
アロハは驚愕の声を上げる。
「お父様すいません、白が危ないとスライトクリスタルが教えてくれたもので」
「あれを一瞬止めたのはフレイヤ様だったのですね」
ふらふらとイエロから降りたライリは、肩にクリムを背負いフレイヤの方に歩いた。
「少しだけですけどね。本当に止めたのはこのマシュマロです。」
フレイヤはマシュマロをライリに渡す。
「キャンディ様の使い魔ですね。この弾力は素晴らしい」
ライリは、楽しそうにマシュマロを揉む。
マシュマロは夢が叶っているにも関わらず、一向に目覚める予兆はない。相変わらず気持ち良さそうな顔をして眠っている。
「ん……んん……。あれ、どうなった……」
クリムは、楽しそうなみんなの声に目が覚める。
「クリム様、グランドレッドは守れましたよ。このマシュマロが切り札になりました」
ライリは背中のクリムにマシュマロを手渡す。
「ははは、お前がやってくれたのか。……礼を言うぞマシュマロん殿。あなたは私の国の恩人だ、ありがとう。」
マシュマロんの頭を指先で撫で感謝の気持ちを告げる、クリム。マシュマロんの意識はない。
その瞬間、マシュマロんの黒いからだを青白い光が包み込む。
「こ、これは旅人の証!?……まさか人間なのか!?」
クリム、クラリス、フレイヤ、ライリ、ジェード、マシュマロに触れた者の目には、渦と剣をモチーフにした幾何学模様が映し出され、胸元からは紫色の鎖が現れる。
それは、青白い光に伸びていき消えた。
青白い光は、やがて有栖川の体を形取り、黒いTシャツにジーパンのキモオタ風な男が赤土の上に泡を吹いて転がっていた。
「今の鎖は、実物は初めて見たがおそらく間違いない……キャンディイ……貴様ぁあああああ!!!」
「嘘でしょ……私がこんなやつに!?」
「あら?新しいご主人様ね♡」
「……バタッ」
「……うみ?」
クリム、クラリス、ジェードはそれぞれに理解し戸惑い、ライリはショックのあまり気絶したが、フレイヤだけは状況を理解していなかった。
全員の体には、有栖川の左手にある。紋章と同じ紋章が刻まれている。
「これはまさか……契約か!?まずい!すぐにでも殺さねば!」
影人形のアロハは眷属を出し、キモオタを食い殺そうとする。
それをフレイヤが粉砕の迫撃を止めた結界で防いだ。
「か、体が勝手に!?ごめんなさいお父様!」
「うわああああん!もう終わりだあああ」「終わりなの?私達もう終わりなの?うわああああん!」
クリムとクラリスは子どものように泣き、ジェードは楽しそうに言う。
「良かったじゃない。これで私達ファミリーね」
人間と魔族には複数の契約がある。
今回、彼女達が有栖川と結んだのは主従契約、人間の下に魔族が立つ言わば最も屈辱的な契約なのだ。
もちろん有栖川にそんな力も知識もない。キャンディ・キャラメロンの仕掛けだ。
キャンディ・キャラメロンは、有栖川の旅人の証をいじり、条件付きで魔族と強制的に主従関係を結ぶ術式を加えたのだ。
その条件は、頭と尻を同時に触り、感謝の気持ちを抱くこと。
普通ならありえない状況だがマシュマロ状態だった有栖川にはそれをさせることが出来た。
「この、醜い生き物が私の主!?認めん!認めんぞ!」
クリムは、キモオタに近付き、ステータスを確認する。
【有栖川りょう】
レベル-111
属性⋮柔属性、塵属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-9625
魔法防御⋮-15369
素早さ⋮1.3
魅力⋮-9999999
運⋮-854421
異世界人間族ランキング⋮1782/1782位
「く、クズ属性!?なんだそれは!人間ですらないのか!?」
有栖川は体の機能や特徴は完全に人間だが、異世界に人間として認められてはいなかった。
よって、誰も彼を人間と認識できず、キャンディの罠にハマったのだ。
「しかもレベル-で、このステータス……一体どんな前世を……」
クリムは次第に不思議な感情にとらわれた。
あまりにも可哀想では……ないだろうか。このような醜い姿で産まれ、きっとあらゆる者に蔑まれたはず。
しかもこちらの世界に転生してもこの仕打ち……。
「……あんまりじゃないか、こんなのが私の主なんて!!!」
クリムは、両手を向け、自分のステータスを出す。
【クリム・フラム】
レベル:32455
攻撃力:532454
守備力:124578
魔力:432587
魔法防御:215476
素早さ:78652
魅力:53241
運:1500
そして、有栖川のステータスの改ざんを始めた。
「と、とにかく見た目だ!見た目をなんとかしたい!」
『魅力-9999999を0に戻すにはレベル30000が必要です。それでもよろしいですか』
「レベル300000!?ふざけている!どれだけの努力が必要だと思ってるんだ!」
絶望する、クリムの肩をジェードとクラリスが叩いた。
「私達も力貸すわ。こんなのが主だと格好つかないもの。」
「主様には素敵になってほしいじゃなぁい?♡」
「……すまない、出来れば力を貸してほしい」
そう言うと、ジェードとクラリスも手を出した。
数値は、クラリアの分も割られている。
『それでは有栖川りょうの魅力ステータスを1人あたり7500レベルで元に戻します。』
クリム、ジェード、クラリア、クラリスの4人のレベルが下がり、有栖川の魅力ステータスが0になる。
その瞬間、キモオタの姿から、平凡な男の姿に変化した。
『有栖川りょうの名前を変更しますか?』
続けてポップアップしたのは名前変更だ。
「有栖川は確かに呼びずらいな。」「そうね、何かいいのない?ジェード」「アリスなんてのはどうかしら?可愛いじゃない?」
「なら、そうするか。そちらの方が呼びやすい」
『有栖川りょうの名前をアリスに変更します。』
こうして、有栖川りょうのステータスはこう変更された。
【アリス】
レベル-111
属性⋮柔属性、人属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-9625
魔法防御⋮-15369
素早さ⋮1.3
魅力⋮-0
運⋮-854421
異世界人間族ランキング⋮1782/1782位
「それにしたって笑えるステータスだな」
「ほんとに!攻撃力マイナスとか意味わかんないわ」
「まぁ、これくらいはちゃめちゃな方が面白いものよ」
呆れ果てて話す3人を見て、アロハは途方に暮れとりあえず町の復興に向かった。
フレイヤは今もよくわかっていないようで、ライリの看病をしている。
そう、誰も気づかなかったのだ。白龍がアリスの横にしゃがみ。頬をつついていることに。
「お父さん……」
白龍は、8歳くらいの容姿を持つ色素の薄い青い目と青いショートヘアの少女に姿を変えていた。服は着ておらず、腕と胴体に僅かに白い逆鱗が服代わりの装備になっている。背中から自分の体と同じくらいの翼を二つ持っていた。
「「「白龍!?」」」
「いや、というよりお父さん……?」
「そういえば聞いたことがあるわ。龍族は自分を負かした者に付き従う……しかも人型で、しかもかなり若い、何この龍?本当にあの白龍なの?」
「ねぇ、あなた。可愛いわね。おいくつなの?」
指を1本ずつ立てていき、3本立てるとジェードの方に向けて答える。
「……3さい」
「「「3歳!?」」」
「3歳に国を滅ぼされかけたのか!?」
「私達3歳に負けかけたの!?」
「いや、それよりもこれを見て」
ジェードは、白龍の手の平にうっすらと見える紋章を指す。それはアリスの紋章だった。
「えーっとつまり?」「まさか」
「この子も私達のファミリーね」
「「えええ!」」
クリムとクラリスはあまりの出来事に倒れてしまいそうになる。ジェードは相変わらずニコニコとしていた。
「あの……どうかしましたかって、だれ!?」
「お母さん……!」
白龍は目を輝かせ、フレイヤに抱きついた。
「お、おおおおかあさん!?なんで!?」
フレイヤが慌てていると、ジェードが納得したように手を叩いた。
「ああ!なるほど!粉砕の迫撃を真っ向から止めたフレイヤちゃんをお母さん、跳ね返した御主人様をお父さんって認識したのね!」
「いや、それで納得出来るか!」
「そんなことどうでもいい、もっと大変な問題があるでしょう!」
「ええええ!私まだ恋もしたことないのに子どもが出来たんですよ!?」
「それよりもよやばいことがあるのよ!」
「がーん!」
クラリスは、翼をバタッとはためかせ、アリスを指差し、叫んだ。
ここに寝ているコイツが、異世界中の標的になったということよ!!!
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