現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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アリスファミリー始動

【妖精の城】門を潜るだけで斬りつけられる城なんてどう考えてもおかしい

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「……面倒だわ」

妖精の城の主は、ため息をついた。
城に攻めいろうとする、敵の気配を感じたからだ。

「数は7……? 白龍までいるじゃない。この城も終わりね。まぁ……」


嘘なんだけど。


                   ***

アリス達がバリースフルに着いた頃には、夜の1時を回っていたので、谷の底に流れる川沿いに焚き火をたいて、野宿することを決めた。

翌朝の5時から行動を開始する予定で、クリムとフレイヤに日光をなるべく当てないためだ。

「主様はここから離れないでね」

翡翠色の長髮を揺らしジェードはそう言って周辺に魔神の手で生み出した結界を張る。

「ここに来た時と同じやつか!便利だな~」

「とはいえ危険がないわけでもない。交代制で見張りをしましょう」

白の騎士風な鎧を身に纏ったクリムは立ち上がって、歩いて行く。

すると、ライリも立ち上がった。

「私1人でもいいぞ」

「クリム様、話し相手に私も行きますよ」

ライリは、膨よかな胸を揺らしながら、クリムを説得する。

「ライリも疲れただろう、休んでてもいいんだぞ」

ライリさん胸揺れてるなぁ。
こういう時、俺出番ないんだろうなぁ。

平凡な服装をして、月並みな感想を抱きながらアリスはぼんやりと思った。

「私とクラリアはとりあえず寝かしてもらうわ。」

「ちょっと今日は疲れた」

2人は崖を背もたれにしてあっという間に寝た。

「それなら、主様少々こちらに……」

「えっ、なに?」

ジェードに連れられ、細い道に連れていかれる。

「あれ、どこ行くんだろう。私もでも眠たいな……」

真っ黒なワンピースのままフレイヤはふらふらと膝をつくと、ライリはどこからともなくふかふかの枕を取り出し、ポケットからカプセルを取り出す。

それを地面に投げるともこもこと雲が現れ、その上にフレイヤを寝かしつけた。

「ハクもお母さんと……」

ハクは体と同じくらいの翼を二つを折りたたんだ。

ハクはそのままフレイヤの腕の中に潜り込む。フレイヤはそれを無意識のうちに抱きしめ返していた。

「それでは見張りに行きましょうクリム様」

「そうだな……おやすみ、フレイヤ」

                 ***

「主様、少し話を聞いてほしいんだけど……いいかしら」

「う、うん」

「主様は人間私達は一応悪魔という立場なの」

アリスはジェードの言葉に、改めて気付かされる。彼女達が異世界の悪魔達だと。
見た目は完全に人間で忘れそうになっていた。

「悪魔は人間の魂や肉体から、何かを預かる、奪う事で力を蓄え、欲を満たす。本来はね」

「本来は……?」

「そう、今人間はほとんどいない。この広い異世界にたったの1700人」

「1700人……」

言われてみれば、異世界ランキングの最下位だったな……俺。
ステータス画面を開き改めて確認する。


レベル-111
属性⋮柔属性、人属性
攻撃力⋮-3692
守備力⋮-5896
魔力⋮-9625
魔法防御⋮-15369
素早さ⋮1.3
魅力⋮0
運⋮-854421
異世界人間族ランキング⋮1/1782位


「えっ!!?1位!!?」

「そりゃそうよ。だって、私達をファミリーにしたのだから。」

俺、最下位から1晩で1位になりました。
最もステータスは全然変わってないんですけどね!?

「本題なんだけど、私はインキュバス。あなたの性に対する欲望を喰らい尽くす悪魔」

唇に手を置き近づく緑髪の淫魔の瞳は、怪しく紫色に光っている。

「な、何を……」

「つまり、あなたは私達にとって餌なのよ」

「クリムフレイヤは吸血鬼、クラリアクラリスはユニコーン、ライリはデーモン。それぞれ求める物は、血、音、魂。」

「そうなのか……」

確かに彼女達は魔族だし、人間である俺との関係は餌と捕食者であるべきだろう。

だけど、人間の少ないこの世界でどうやって生きてたんだ?

「私達は人の少ないこの世界でその欲望が薄れてきている。この先……特にあの城に入った時自らの意思でそれらを差し出して、そうすれば私達は本来の力を取り戻すはず」

「俺にも出来ることがあったんだな」

「えっ……?」

「いや、皆を巻き込んで縛り付けて何も出来ないの嫌でさ。何かできないかなって思ってたんだ。俺のやつで良ければ、魂だってなんだってどんどん持ってけ!」

ジェードは、笑った。面白い人間だと。そして、意地悪をしてやろうと思った。

「なら、もらうわあなたのエッチな気持ち♡」

「えっ!ちょなにを!?あっ、そこはああああああん♡」

静かな渓谷にアリスの声が響き渡った。

                    ***

朝。澄んだ空気に川のせせらぎが優しく響く。
川は登りたての日をキラキラと反射し、美しい。

アリスはフレイヤの隣で目を覚ます。

「うん……?あれ、俺ジェードさんと話してて?それで?」

アリスは、何か大事件があったような気がするが思い出せない。

「なんか、ジェードの魔力上がってない?」

クラリスは、じとーっとした目でジェードを見ている。

「え?そんなことないわよ♡」
「なんか、怪しい!!昨日の夜何があったのよ!!?」
「クラリスちゃんも大人になれば、わかるわ」

「ジェード、お前まさか……」

「そんなことより、今日はいよいよ、あの城に乗り込みます。皆様準備はいいですか?」

クリムが勘づいたことを悟り、ライリは大きめの声で言った。

ここで言い争いをして、連携が損なわれるのはいいことではない。

「よ、良くないですー!」

フレイヤは、雲型ベッドの上で叫んだ。ハクが抱きしめて離さないのだ。

「ハクには困ったものだな。龍族は朝に弱かったか?」

「そんなことは無いはずですが……」

「お母さん……」

ハクは、母親と認めたフレイヤを離さない。

「でも、ハクちゃん抜きであの城に行くのは難しいわよ」

「そうだよな……めっちゃ遠いもんな……おーい、ハクちゃん、起きろー」

アリスがハクの頬を軽く叩くと、ハクは「うーん」と唸ってからゆっくりと目を覚ます。

「んん……?お父さん……?」

身体を起こし目をこする。

「ハクおはよう、あの城に行きたいんだけど皆を連れていくこと出来る?」

「うん……でもちょっと待って」

ハクは翼を伸ばすと川の中へ入り、身体と顔を洗う。

翼を広げ空へ飛び、クルクルと回って空気を吸い込む。
すると、白龍の姿に変わった。

「それでは行きましょう!」

ライリは白龍とアリス達を結んだ。

「ハク、眠たいのにありがとうな!」

キィィィィィン。

嬉しそうな声をあげる白龍。アリス達は難なく、滝の上にある、妖精の城へと向かう。

                    ***

魔界四大魔国、妖精国。妖精国国王の住む妖精の城は、世界で最も美しい城として有名だった。

大きな鉄製の城門、その奥には噴水を中心にした円形の庭が広がり、そのまま直進すると白を基調にした西洋風の城がどっしりと構えている。

「シンデレラ城みたいだな……」

「シンデレラ?誰ですかそれ?」

フレイヤは不思議そうに首をかしげた。

「あー……元いた世界のお姫様かな?」

「へぇー、アリスさんのいた国にはお姫様がいたんですね」

「ちょっと違うんだけど……」

ドカン!!!

クラリアとクラリスが容赦無く城門を破壊する。

「お、お前ら躊躇ねぇな!!」

「はっきり言うわ!私は金持ちが嫌い!!!」「こっちは苦労している」

「借りにも妖精国国王の住む城なのだぞ!傷付けたら大変なことに………」

一国の女王であったクリムがあまりの行動に取り乱すが、クラリスはそっぽを向いた。

「関係ないわ!どうせ私達はお尋ね者、好き勝手やらしてもらうわ!」

「さて、どう攻めるライリちゃん」

「そうですね……とりあえず、ジェードさんの魔神の手で中に何があるかを確認して……」

スタスタスタ……。

ハクが人型の姿で門に踏み込んだ。

「ハクちゃん……?」

「こっちは……危ない」

ハクは振り返り、薄い空色の瞳をアリス達に向ける。
その瞬間、ハクの背中を何かが切り裂き、大量の鮮血が噴き出す。

「ハクちゃん!!!?」

フレイヤがハクの名前を叫び、城門を潜ろうとしたが、ライリが肩を掴んで抑えた。

ハクは爬虫類を思わせる金色の目に変わり、切り裂いた何かを睨みつける。

「何を……したか……わかってる?」

しかし、そこには何もない。ただ、虚空を睨みつける。

                    ***

「あっちゃー。白龍が最初に踏み込むなんて予想外。私死んじゃうかもー。嘘だけど」

気の無い声で呟く彼女。

元城主である、彼女は玉座に座り外の景色を能力で見ていた。

「昨晩襲っても良かったんだけど、外に出るのめんどかったんだよねぇ。」

1人で喋る彼女の容姿は黒を基調に赤のレースのフリフリとしたドレスとマジシャンハットを被り、目を覆うように黒い帯が巻かれていた。

                    ***

「何かがいる……」

ハクは金色の目で辺りを見回すがそこには何もない。

「とりあえず治療する!」

クリムは眼前に、7色の火の玉を出し、緑の炎をデモンメアで切り裂く。

「白龍を治す日が来るとはな……」

「飲み込みが早くて助かる。頼むぞグリン」

緑色の炎を纏う緑色の狐が現れ、クリムの肩の上に乗る。
ハクの背中に、緑色の火の玉が現れ、みるみるうちに傷が癒えていった。

アリスは身体が震える。

(全く状況についていけてねぇえええ!城に入った瞬間にハクがやられた!?あそこに入ってくのか!?俺達が!?無理無理無理無理!死ぬって!)

「血を見たのは初めてか?」

「そ、そんなことはねぇけど」

「怖いのはわかる。恐らくこの場にいる誰もが恐怖している。なんせ、あの白龍を切ったのだから。相手は魔族ではない可能性が高い」

粉砕を持つ、ハクには硬属性の攻撃は当たらない。

魔族の場合硬属性は必ずと言っていいほど付き纏う属性であり、グランドレッドではクラリスとクラリアに頼りきりだった。

「今さら怖じ気づいても仕方ないわ。私達は行く」

白のワンピースをはためかせ、クラリスとクラリアが中に踏み込む。

「得体の知れないものがまだこの世にあるなんてね、楽しいじゃない」

ジェードも、姉妹に続いて門を潜る。

「行くぞ、ライリ、フレイヤ」

「はい、どこまでも」「ハクちゃんに酷い事した人許せない!!!」

ファミリーが門を潜り、アリスだけが門を潜れない。

(ここを潜れば死ぬかもしれない……!!)

アリスの脳裏によぎったのは、バリースフルに来る際、頭の横を通り過ぎた火の玉だった。

(どこに居たって一緒か……)

「あなたが来るだけで私達は戦えるわ」

ジェードは振り向かずに、声をかける。

アリスは顔を上げ、覚悟を決めた。

「足引っ張ったらごめんな!」

「あんたが役に立つなんて思ってないわよ」「期待してない」
「ファミリーのボスがそんなんでどうする」
「ハクちゃんを傷付けられたんです!やり返しますよ!アリスさん!!」
「ゴミはゴミらしく端っこで大人しくしててください」
「ライリさんだけ厳しくない!?」

アリスが震える足で門を潜り、ファミリー全員が前を向く。

妖精の城で何があり、誰がいるのか。
その謎の全てが今明らかになろうとしていた。

                    ***

「退屈しなくて済みそうかな。まぁ、どうせ嘘なんだろうけど……」
彼女の憂鬱なため息を聴く者は誰もいない。

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