現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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アリスファミリー始動

城の中が亜空間になってるなんてどう考えてもおかしい

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───朝6時、妖精の城にて

「正面突破ぁあああああああああ!」

クラリスは白黒の双翼を羽ばたかせ、全速力で噴水のある庭を超え、城の正面扉へと突っ込んでいく。

「クラリスの無鉄砲さが役に立つ日が来るとはな!ライリ!頼む!」

「はい!クリム様!」

ライリは腰に携えたラインブレードを抜くと、剣から細く光る線が現れる。それはファミリー全員とクラリスを細い線で結んだ。

空間結びペースタイ

クラリスの元へと瞬間移動し、庭を抜け、正面玄関までアリスファミリーは辿り着いた。

「あんまり、無茶するもんじゃないわよ。クラリスちゃん。白龍を傷付けられる相手なんだから」

「かと言って、時間かけるだけ無駄よ。死ぬ時は死ぬ!それだけ!」「後で説教しとく」

クラリアはクラリスの頬を引っ張り、ジェードに頭を下げる。

「はぁ……本当にわかってるのかしら」

「ジェードそこまで心配しなくてもいいんじゃないか?もしもという時はグリンが治す」

「あんまり頼り過ぎるなよ。俺だって生活があるんだ」

「それに、魔力の消費量半端ないんでしょう?グランドレッドであれだけ治療して、空鯨に炎の塊をぶつけた。一晩で回復出来てるはずないわよね?」

「さぁな。これでも魔力量には自信ある」

「中に……入る……」

ハクはまたスタスタと前に進み扉をデコピンする。
すると、扉がふっとび、広い大広間が現れた。

その瞬間、大広間がアリスファミリー達を吸い込んだ。

「うわぁあああああああああ!」

彼らが引き込まれた場所は、天使や妖精の絵が刻まれた西洋風の城の中だったはずが、真っ暗な闇だった。

「最優先事項は主人様の護衛!今誰が近くにいる!!?」

ジェードがめずらしく声を荒げる。

「わ、私です!」

フレイヤはアリスの手を握って答えた。

ちょっとぉおおおお!女の子と手繋いでるんですけどどどどどど!!、!

「フレイヤ!とりあえず任せたぞ!ここを照らす!グリン頼む!!」

「灯変わりかよ、まぁいいが……」

グリンは、狐火を吹き出し、それを四方八方に散らばらせる。

すると、辺りを見渡せるようになった。

上下左右も、わからない闇の上に彼らは立っているようだ。

「あ、あれは……」

ライリの声にフレイヤ以外の全員が振り返った。
ライリが指を指した手は震えている。

そこに丸まって寝ていたのは、鶏のような生物だ。頭には冠のようなふさふさとした紫色の毛があり、尾には蛇が生えていた。


「全員目をつぶって!!!」


叫んだのはフレイヤだった。

偶然手に持った青い結晶の反射で見た、その姿、その形。彼女には思い当たる節があったのだ。

あの生物の名はバジリスク。両目で見ただけで死に至る危険な生物だ。

「ぐっ……!」

はじめに倒れたのはライリだった。その後、次々とファミリーが倒れて行く。

「みんな、嘘だろ!?」

アリスは倒れたファミリーの安否を確認するため、倒れた皆の元へ向かう。

「うそっ……!」

フレイヤは恐怖のあまり、振り返ることなく膝を落とす。
その背中をトンと、何かが当たった。

フレイヤはガクガクと震え振り返ってはいけないと目をつぶって結界を張ろうとした。

「大丈夫……みんな寝てるだけ」

フレイヤの元に駆け寄ったのは、ハクだった。

「ハク……ちゃん!?バジリスクを見たんじゃ!!?」
「偽物……ハクには……効かない」
「偽物?あのバジリスクが??」

「大丈夫か!?ジェードさん!!」
「……」

くそっ!みんな寝ちまった!!!おっぱい揉み放題じゃねぇかぁあああ!!!!どうする?マジで揉んじまうか?モメば勝ち組だぁあああ!!!!……ん?いやまて、そうじゃない。

1位や2位が眠らされたんだ……浮かれてる場合じゃねぇ!!

今の状況を理解したアリスは血相を変えて辺りを見回す。後ろの方にフレイヤとハクがいるのを見つけた。

「アリスさん!いますか!?」

「おう!!いるぞ!!」

「みんなを助けるにはそのバジリスクの羽が必要です!私達で倒して奪いましょう!!」

「ええええ!まじか!!俺はどうすれば!!?」

「とりあえず私の方に来てください!!」

「わかった!」

アリスはとりあえずフレイヤの言う通り、フレイヤの元へ向かう。背中を向けていたので、フレイヤの正面へ回り込むと、突然アリスに抱きついた。

「アリスさん……!」「うわっ!フ、フレイヤちゃん!?」

一瞬頭がピンク色になりかけたが、ドレスのレースが小刻みに震えているのを見て一気に浮き足立った気持ちは消えた。

「ハク、あいつ倒せるか?」

アリスはフレイヤを触らないようにしながら、ハクを見る。

するとハクは満面の笑みを浮かべていた。

「お父さん……お母さん……仲良し」

「いや、まぁそう見えるかもしれんが、今凄いピンチなんだ」

「ハクも……仲良し」

ハクは、フレイヤとアリスの間に潜り込み、満足気にフレイヤの胸に頬ずりする。

「ハクちゃん…もう……こんな時に」

いつの間にかフレイヤの震えは止まり、笑顔になっていた。

「ハクちゃん、バジリスクを倒したいの。手伝ってくれる?」

「うん……ハク、頑張る」

ハクはフレイヤの胸から離れると、双翼を広げ、真っ直ぐバジリスクを見た。

「私はバジリスクを見ることができません。でも、ハクちゃんとアリスさんには効かないみたいです。なので、基本的にはハクちゃんに戦ってもらうことになってしまいそうです」

フレイヤの声は暗い。

「気にしなくてもいいんじゃないか?」

「えっ……」

「誰だって怖いよ。まだ14歳で旅に出るだけでも凄いのに、今あんなやばい奴がいるんだから。」

「でも、クラリスさん、クラリアさんは私より年下で、ハクちゃんなんてまだ3歳なんですよ?私お姉さんなのに……」

「フレイヤちゃんに出来ることをすればいい。俺なんか、フレイヤちゃんより年上なのに何もできないし、その上足まで引っ張ってるんだぜ?ゴミだろ?」

アリスは、得意げに親指を立てウィンクする。
それを見たフレイヤの目は冷たい。

「……それもそうですね」「えっ、ゴミの部分で頷いたわけじゃないよね?」「えっ、そこですよ」「フレイヤちゃん、意外と言うね!?」

フレイヤは肩を震わせて笑うと、自分の足で立ち上がり、アリスの目を真っ直ぐ見た。

赤い瞳には、強い覚悟の色が浮かんでいる。

「じゃあ、あなたにも役に立ってもらいましょう」

「おお!俺何すれば!?」「盾になってもらいます」「うん?聞き間違い?盾??」「はい。盾です」「レベル-111の盾……いる?」

「あー……そう聞くとゴミですけど、大丈夫です。今回は役に立ちます」

そう言うと、フレイヤはアリスのズボンに手をかけて、バジリスクの方にアリスを向け、フレイヤの目線にバジリスクが当たらないようにする。

「これでバジリスクと目を合わせずに済みます!状況はスライトクリスタルの反射で何とか理解するので、アリスさんはバジリスクのいる方に突っ込んでください!」

「ほ、本気で言ってるの!?」「当たり前です!!」
「……初めての……共同作業」

ハクはやる気満々と言う感じに、翼をはためかせている。

「ふむ。残ったのは2人か」

大人びた男の声だった。バジリスクはすくっと起き上がり、邪悪な瞳でアリスの方を見る。

「フレイヤちゃん、あれはヤバイ。俺のことなんて眼中にねぇぞ!!」

人生で初めて向けられる殺意に、アリスの足は震える。

「わかってます!でも、私とハクちゃんがいます!!安心してください!!」

フレイヤはアリスの前に青い結界を張った。
アリスはその青い光を見ていると不思議と安心感が産まれ、震えが徐々に止まっていく。

「これはハクの攻撃を止めた……」

時間の檻タイムケージと呼んでいます。はっきり言って無敵の結界なので安心して突っ込んでください」

「ナメられたものだ。格の違いを見せてやる」
バジリスクは魔力を解放し、紫色の波動を部屋全体に行き渡らせる。

「や、やっぱ無理!!」

「バジリスク倒したら抱きしめてあげるので頑張ってください!!」
「よし、やるか」「えっ…?」

場の雰囲気がガラリと変わったのを、フレイヤ、ハク、バジリスクが感じた。

「お前、俺を本気にさせたみたいだな」

まるで歴戦の勇者のような事を言って、バジリスクを睨むアリス。
歴史に残る珍劇が今、始まろうとしていた。
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