現実世界でも異世界でも最弱の俺が最強として扱われているのはどう考えてもおかしい。

友樹 みこと

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雲のアトリエ

城の城主との交渉の末、ショタ整備士が仲間に加わるのはどう考えてもおかしい

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(流石にこれはないよな……)

冷たいコンクリートの床。ベッドにはハクを寝かせファミリーは地べたに座っている。
アリスファミリーは、牢獄に閉じ込められていた。
妖精の城を救ったはずが、襲った犯人だと誤解されてしまったのだ。

「おそらく、別の場所に移していたものを元に戻したのでしょう」

「なんせあの規模だ。1人の力ではなく、あの森の少女も絡んでるだろう」

ハンプティの窮地に現れた巨大な根を操る白髪白眼の少女。
彼女が現れたことで、ハンプティを取り逃してしまった。

「その……ごめんなさい。私が興味を示さなければ……」

ジェードは落ち込んでいた、責任を感じていた。
自分が妖精の城に行きたいと言わなければ、今このような仕打ちを受けることにならずに済んだ。

「いや気にしなくていい、相手が悪かった」

「なんなのよあいつ!嘘ついたら、本当になるなんてズルすぎるわよ!」「規格外」

「違うのよ。私知ってたの。ハンプティがあの城にいること。」

部屋に冷たい静けさが落とされる。

ジェードは予測していた。
翼竜の出現、白龍の襲来、妖精城の神隠し……
これほど大規模な事件が立て続けて起こることは滅多にない。
同一犯の可能性が高いだろうと。そして、グランドレッド上空で彼女はハンプティと一戦交えている。

「なんで言わなかったのよ!?」

「確証が持てなかったのよ。まさか、本当に嘘を現実に干渉させる能力だなんて思わなかった」

「違う!そうじゃなくて!………ああ!もういい!!」
「何を考えてる?クラリス」

クラリアはめずらしくクラリスの考えていることがわからなかった。

「……んん……ここどこ?……新しいおうち?」

ハクは目をこすって眠たそうにあくびをしながらそう言った。
フレイヤを見つけるとゆっくりと飛んでいき、背中から抱きしめまた眠る。

「……もしわかっていたとしても、対策の立てようがありませんでした。」

フレイヤはハクの頭を撫でながら、小さく呟いた。

「それにジェードの助言でハンプティを追い詰められた。過ぎた事を言っても仕方がない。ここを出よう」

「えっ!?出れるのか!?」

クリムがサラッと言うと、アリスは驚きの声を上げる。

「当たり前だ、ここの城主は私の知り合いだ」

駆け足で地下牢に向かう足音がいくつも響いた。

「く、クリムお姉様!!」

「おお、やっと来たか。マリ」

「申し訳ありません!1時間もこんな場所にクリムお姉様を閉じ込めてしまって」

「いや、6時間だ。相変わらず時間にルーズだなお前は」

「ええええ!ごめんなさい!お昼寝してて……」

魔界には四大魔国と呼ばれる大国が4つある。
悪魔国、幽霊国、魔獣国、そして、妖精国。

神秘的な情景と怪しく美しい植物や果実が特徴的なこの国は、妖精や精霊が住んでいる。
巨大な面積と権力を持つ、緑豊かなこの国の指揮を取るのは、魔界ランキング第9位、第7王女マリテニア・オベイロン。

金色のショートボブと大きな青い瞳のよく似合う、可愛らしい容姿。
エメラルドグリーンの森をイメージした西洋風なドレスに身を包み、黒縁の眼鏡をかけた彼女はインテリな雰囲気を出していたが、典型的なドジっ子なため威厳なんてものはない。

「と、とととりあえず、こんなとこから出てください!もてなしますので!」

「いや、閉じ込めたのマリなんだが……」

「ああああ!言わないでください!!クリムファンクラブ除名になっちゃいます!!!」

【クリムファンクラブ】
クリムお姉様を愛でる会です!
年会費30000G
会員特典、クリムブロマイド3枚(100種)、クリム剣術教室無料参加券×4、お姉様とのお茶会券×2

ちなみに、会員は3万人を超えている。
運営しているのはライリだ。

「えっ、ライリさん?」

「グランドレッドの発展はクリム様あってこそでした」

「まぁ、私のする事なんてたかが知れてるしな。正直ファンクラブの皆んなには助けられていた。」

アリスはクリムがお茶会や剣術教室なんかをしていた事を知り、日常を垣間見た。当たり前だが彼女達にも生活があったのだと思う。

ガラガラガラ……

音を立てて、牢獄の扉は開き、アリス達は外に出た。
フレイヤはハクをおんぶしたまま、マリ達についていく。

「本当に出れるなんてすげぇな!」

「まぁ、私達顔は相当広いしね」「出れないと思ってたのはアリスだけ」

「げっ!まじかよ……」

マリと兵士達の行列に続きファミリー達は歩いていく。

「クリム様、まさかあなたが人間の元に落ちるとは……」

「私もそのつもりはなかった。全てはキャンディのせいだ」

「なるほど、あのお方ならそれくらいのことやってのけるでしょうね……今度戦争しときます」

「やめてくれ、そんな下らないことで戦争するな」

「いえでも!私の腹の虫が収まりません!ファンクラブ連合で叩き潰します!」

「いや、いい。出来れば私達のバックアップをして欲しいんだ。グランドレッドは今大変な事になっている。」

「えっ、そうなんですか?」

「ああ、白龍に襲われた」

「ええ!?白龍に!?」

「ちなみにあそこで寝てるのがそれだ」

「えええええ!」

「それで、白龍を従えたのがあの男だ」

「えええええ!」

「ちなみに私の主だ」

「殺します」

「いや、あいつが死ぬと私も死ぬ」

「まさか、旅人の証で!?」

「ああ。」

「……幸福なお菓子の国を落とす時は、全面協力致します」

「それは助かる」

マリとクリムは時折ファミリー達の方に振り返りながら楽しそうに(時にアリスに殺気を向けながら)話していた。

「なんか、殺されかけた気がしたんだが」

「当たり前です。クリムファンクラブはいつでもアリス様の敵ですよ」

「なんもしてねぇのにヤバそうな組織敵にしたんだけど!!!?」

アリスは寒気を覚えながら、ついていく。
ジェードはまだ俯いていた。

「あんたらしくないわ」

「クラリスちゃん……」

「反省してるならいいのよ。次はやるわ。魔界ランキング1位と2位がやられっぱなしなんて、格好つかないじゃない」

クラリスは、顔を背けてジェードを元気付ける。
その様子に体を震わせるジェード。

「もう、クラリスちゃんたら♡」

魔神の手で抱きしめるジェード。

「えっ!痛い痛い痛い!」

「私の愛の強さね」

「こんな歪んだ愛はいらない!」

「みんな……仲良し」

ハクはフレイヤの背中で笑っていた。

「ハクちゃん起きたの?」

「うん……みんな……楽しそう」

「そうだね」

「お母さんも……?」

「私は、みんな無事で良かったなって」

「うん……お父さんも……頑張った」

「ちょっとだけね」

フレイヤとハク、それをこっそりと聞いていたライリたクラリアは顔を合わせて笑った。


                    ***


白を基調にした客間には、豪華な料理が並びファミリー全員は立食で2日ぶりの食事にありついた。

「うわぁあああああ!メイドさんがいっぱいだ!!」

「こちらのお肉はフォレストウルフのもので特上品です食べてみてください」

耳の尖った金髪のメイドは、アリスの前に骨つきチキンのような形をした肉を差し出す。

「んんんんめぇええええ!なんだこの肉!超うまいぞ!」

「お父さん……負けない」

「おっ!ハク!お前も食うのか!?」

「うん……」

アリスとハクはマナーなどお構いなしに両手を使って、一心不乱に食べまくる。親子は似るとはよく言ったものだ。

「まぁ、私達は食べなくても死にはしないわよね」「低燃費」

「食べれたらラッキーくらいのものよね。まぁ、妖精の森産野菜は絶品だけど!お肌がツヤツヤになるわ♡」

「適度な食事は健康のためには必要です。ちゃんと食べてくださいね。フレイヤ様」

「はい!でもこんなに沢山あると迷っちゃいますね」

エルフの家政婦達がせわしなく料理を持ってくる中、楽しそうに食事をとるファミリーを後ろ目に、2つ並んだ玉座にマリとクリムが座っていた。

「まさか、ジェードさんやクラリスさん達までが仲間になるなんてびっくりですね。何者なんですかあのアリスという人間は」

「まぁ、なんて言うか……変なやつだ」

「変な人……ですか?」

「ああ。あの人間は私が血を求めても、クラリスが音を求めても、全て答えた。私達の力になるならと」

「人間特有の集団意識ですか」

「そうかもしれんが、悪い気はしなかった。もとより、人間には興味があったからかもしれんな」

「そうですか……」

楽しそうに話すクリムを尻目にマリは俯いた。
人間に興味を持った魔族が裏切られるのはよくある話であり、クリムやアリスもまた例外ではないと思ったからだ。

「それより、この度の無礼どうすれば……」

「ああ!気にしなくていい!(私達も住もうとしていたなんてとても言えない……!)」

「何かお役に立てれば……ああ!そう言えば!」

マリは閃いたように目を開き、家政婦を呼ぶ。

「そう言えばあの人間はどうしました?」

「ああ、あの雲の人間ですね。地下に閉じ込めています」

「ちょうど良かった。あの人間ならクリム様のお役にたつでしょう」

「人間がこの城にいるのか?」

「ええ、可愛らしくて面白い人間ですよ」

しばらくすると、銀の鎧に身を包んだ男のエルフ2人が、むすっとした少年を連れてきた。

雲のようなパーマのかかった頭、黒い目、茶色く大きめの作業服を着ている。
容姿は8歳と言った感じの中性的な少年だった。

「なんか用か」

「なんだこの愛くるしい生物は!!!」

「クリム様のお気に召したみたいで良かったです。」

「船を作らせろ!妹に会いたい!!」

「いいですよ。ただし、彼らと共に行くこと」

「彼ら……?」

少年はあたりを見回す。パッと目についたのは、アリスだった。
アリスは睨まれ、きょとんとしている。

「俺、負け犬は嫌いだ」

「なんだこのクソガキ?」

これがアリスと東雲シノの出会いだった。
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